002 作成
「潜行開始」
ヘッドセットを起動し、ISLAND ONLINEのサーバーに接続する。数分間の読み込みの後目を開けると、そこには上下左右がすべて純白に埋め尽くされた空間が広がっていた。
「遂にきた〜」
『こんにちわ。被験者様。何をなさいますか?』
「へぁっ!?」
何?何何?突然背後から声をかけられ振り向くと、なんだろう...白い球?の様な物体が宙に浮いていた。
『驚かせてしまい、申し訳ありません。ワタシは対話型サポートAI001。被験者の案内を任されています。アイ、とお呼び下さい。以後、お見知りおきを』
「あっ、ハイ。よろしく?お願いします?」
白い球――アイさんによると、今私が立っている空間はアバター作成及びスキル練習用の場所なんだそうだ。
『順番に関して特に要望が無いようですので、まずアバター作成に移らせていただきます』
「おねしゃーす!」
『ハイ。ではちょっとコチラに…』
アイさんに指示された場所に立つと、目の前に肌色のマネキンが現れた。
「えと……?」
『アバターの素体です。事前にスキャンして頂いた被験者様自身の肉体を元に作成も可能ですが、如何なさいますか?』
「私の体を使っちゃってください!」
イチから作るとかキツイもんね。たいして変える気も無いし。
『……了解しました。被験者様の肉体を反映します』
マネキンが蠢き、毎朝鏡で見る私の姿になる。
「おー」
『編集する場合は、お手元のディスプレイをお使い下さい。身長体重は、±10の間で変更可能です。また、この後選んでいただく種族によってはアバターの変更が一部無効となる場合がございます。お気をつけください。では、ごゆっくり』
空間を滑るようにして近づいてきたディスプレイに触れると、私の情報が表示された。
hei 154cm
wei 40kg
....
...
..
特に体重を軽くしたいとも思わないので、外見だけを弄ることにする。
『女性であれば胸部を大きくされる被験者も多いですが、いかがなさいますか?』
「煽っとんのか」
別に小さくて良いし。小さいのは希少価値だって部活の後輩が言ってたし。
ていうか、胸のサイズなんかも変えられるんだ。すごいなVR。ライトノベルみたい。
髪をショートから肩にかかるくらいまで伸ばし、赤のメッシュを差す。目の色も黒に少し赤を混ぜる。他は弄らないでおく。
『よろしいでしょうか。準備ができ次第、種族、スキルの選択に移らせていただきます』
念の為全身を確認してから、次の手順を始める。
『先に種族を選択していただきます。種族には基本の5種族とランダム枠が一つの計6つがあり、ランダム枠は3回まで変更できます』
「つまりガチャと」
『はい。稀に通常は選択できない種族g「ちょっと待ってシャワーしてくる」…かしこまりました』
やっぱガチャ前には体をきれいにしないとね!汚れをガチャに持ち込むと確率が下振れしそうだし。
「潜航終了」
一旦接続を切って、風呂場へ向かう。ほぼ外に出てないとはいえ、多少汚れてはいるはず。
「ただいま!」
『おかえりなさいませ。種族の選択を始められますか?』
準備は万全、念の為シャワー中お祈りもしておいた。これで良いのが出ないほうがおかしい。
私の前に表れたディスプレイには、6つの種族が表示されていた。
人族(初期ステータス無補正。戦闘系スキルに成長補正)
エルフ族(int、dexに+補正 strに−補正)
獣人族(str、agiに+補正 intに−補正)
鉱人族(str、dexに+補正 agiに−補正)
小人族(agi、dexに+補正 vitに−補正)
野蛮人(ランダム枠 strに+補正 intに−補正)
基本5種族を選んだ場合、さらに細かく種族を選べるらしいが、このランダム枠はまさか…?
「あの、まさかこのランダム枠って」
『はい、細分化された5種族の中から選出されます。先程お伝えした"通常選べない種族"とは、基本5種族を細分化した後の種族を指しています』
「つまり、基本5種族以外はランダム枠に選ばれないと。今出ている"野蛮人"は、人族のレア種族なんですか?」
『その通りです。人族には細分化が存在していないため、その分レア種族が多くあります』
とりあえず"野蛮人"から変更してもらう。
野蛮人→金の腕(特定の条件で黄金を生成可能 金属を触れない)
うっわピーキーだ。
『おめでとうございます。その種族は鉱人族でもかなり選出されにくく、通常では選べないはずでしたが』
いくらレアでもな…金属に触れないと困ることが多そうだし、足が遅いのは嫌なので、
「チェンジ」
金の腕→淫魔(特殊魔法【魅了】が使用可 女性のみ出現)
「うっわ字面だけでエッチじゃん」
『ところがどっこい、全年齢版です。エッチな方もゲーム内に実装予定だったらしいですが、レーティング的に…』
「あーね」
男ならインキュバスとかが出るのかな?ともかく、誰かを魅了したいわけではないので
「チェンジで」
『変更できるのは後1回ですが、よろしいですか?』
「あ"っ」
そういえばそうだった!今まで良さげなのがなかったからな…
後で一発芸するんで笑ってくれませんかね乱数の女神様!?
淫魔→砂漠狼(土属性魔法に+適正 水属性魔法に−補正)
わ、髪色と同色の犬っぽい耳としっぽが生えた。
かと思えば、マネキンの髪型が少し変わって私本来の耳が隠れて見えなくなる。
『おめでとうございます。通常なら選べないレア種族ですよ』
「具体的にはどれくらいの?」
『一般的なSRくらい。約8パーセントほどですね』
これはなかなか良いんじゃないかな?
「じゃあこの種族で」
『よろしいのでs「オッケーです次行きましょう!」…かしこまりました』
時間たつと悩みはじめちゃうからね、いいと思ったらすぐに決めよう。
『これでアバターの作成及び種族が選択されましたので』
アイさんがそう言うと、純白だった空間が発光しだした。その光が収まると、私の目の前には地平線まで続く草原が広がっていた。
『ステータス、スキルの選択と練習に移らせていただきます』