表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/20

女になった俺、一線を越える

「あ、あのー……子野さーん?」


「んー?」


「おろしてください……」


「だめー」


 俺の願いを楽し気に断り、子野さんは足取り軽く進む。


 俺は教室からそのままだ。後ろからお腹を抱えられ、持ち運ばれている。


「うぅぅ……」


 とても恥ずかしい……。


「♪」


 それにしても、顔は見えないけど子野さんは余裕そうだ。いくら俺こと美少女の体が軽くても、人一人。そんな簡単に運べるか?


「力、強いですね」


「鍛えてるからね」


 後ろに話しかけてみれば、得意げな言葉が返ってくる。


 ……そういえば初めて会った時も、吹っ飛ばされたのは俺だけだったな。


「インナーマッスルだよ」


「いんなーまっする」


 よく分からない俺には復唱する事しかできない。


 結局されるがままに俺は運ばれるのだった。


「あの時……なんで泣いてたの?」


 しかし、不意に子野さんから問われる。


「ごめんね、突然。でも、どうしても気になるの」


 事ここに至り、俺はようやく気付いた。ここは子野さんの教室じゃない。


 人気の少ない、特別教室の前の廊下に俺は降ろされた。










「あの時って……」


 この前の『友達になってください』の時だろうか。


 そりゃ気になるよな。だって顔見たら突然泣くんだから。なるほど、確かにナマハゲ扱いは失礼が過ぎる。


「初めて会った時」


 ちゃんと謝ろうと思った俺だったが、子野さんが言いたい事は違っていた。


 ……なんか俺、いつも宛を外してる気がするな。


「俺、泣いてた?」


 でもこの時ばかりは仕方なかったと思う。身に覚えがなかった。


「うん……その、ごめんね」


 なんか謝られちゃったよ。


「あのとき、すごい傷ついた顔してた。なのに、わたし自分のことばっかりで……誤解して勝手に怖がってた」


「……いや、あれは俺……あ、私が悪いです。怖がらせたのは本当だし」


「うん、でも、わたしが見たミカさんも本当だよ……」


「それは……」


「……ごめん、言いたくないなら無理しないで」


 向き合う子野さんは一歩下がり、また謝り始める。なんで、こんなに優しいんだろう。


 ……知りたい。この時、俺は確かにそう思った。けど、それだけじゃない。逆に……。


「好きな人に振られたんだよ」


 実は、この事は家族にも話せていない。知っているのは俺以外には一人だけだった。


 俺がこの前『友達になってください』しに行ったのは、俺が鈍感だったからなんかじゃない。あの時は確かに、そしてたったの今までも、俺自身が壁を感じていたんだ。


「そうだったの……嫌なこと、聞いたよね」


「ううん、私も、子野さんには話していいと思ったので」


 すると、子野さんは驚きの表情を浮かべた。けど、それはどこか嬉しそうにも見えた。


 そんな彼女を見る俺もなんだか嬉しい……ような、何だろうな……苦しいような。









「もーミカさんいい子ー!」


 なんだかやきもきとしていると、子野さんの長い腕が伸びてくる。両の手はそのまま、俺の金髪を撫で始めた。


なでなでなでなで


 すると俺の目の前には、制服を押し上げる膨らみ。


「……」


もみっ


「ひゃあああーーー!」


 セーフだよね?俺今女の子だもん。

読者「短っ」

すみません!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ