異世界これからどう頑張るか作戦会議
一日で3話…きついです
僕達が案内された王の間は国の頭が座る場所にしては想像していたものより質素なものだった。
想像していたのは金銀財宝に彩られた眩しい部屋だったのだが、周りにあるのはなんとも言い難い仮面や鎧、杖や剣、戦場で使われるような物騒なものばかりだ。
「バトルジャンキーなのかな…」
「なんだって?」
「あーいやなんでもないよ」
ついこぼしてしまった一人言をちゃっかり聞いていたらしい虎之助は壁に建てられている剣に興味深々のようだった。
「なんというか剣が好きだなんて…男の子だね虎之助も」
「え?なに?なんか言った?」
「………」
燕に話を振ったのだが燕も壁に掛けられている魔法の杖らしいものに興味を惹かれていた。よくみたら他のクラスメイト達もキョロキョロと周りを見回していた。なんかみんな楽しそうだなと思っていると玉座が突然光り始めた。
「え!何?」
「眩しい…」
「おぉっ!これは良き演出だ!」
その光に気づいたクラスメイトが玉座に目を向ける。虎之助も燕も玉座に目を向けた。
すると同時に先程まで灰色だった石壁が全て金色に変わっていく。どういう原理でそうなっているのかは全然わからない。恐らく魔法の一種なのだろう。
部屋の中の石が全て金色になると光も弱まりはじめ、その中に人影が見えた。
「よく来てくれた勇者達よ。儂はアルバード・カンドレア、このカンドレア国の49代目の国王だ」
国王を名乗る人物は見た感じ60〜70歳はいっているように見えるが、それよりも僕達はその人物の肉体に驚かされた。
とても年寄りだとは思えないほどにしっかりとしており恐らく僕や虎之助よりも大きい。
「…主達がここにいるということは…ライラは…もう」
「国王陛下、陛下の痛みは十分に分かりますが今はこの国の王としてどうかその名に恥じぬ態勢を…」
国王が何かブツブツと言って悲しそうに視線を下げると、それを心配してなのか先程、あの部屋にいた生理的に無理なおっさんが国王に駆け寄った。
「えーと…誰だっけあの汚…生理的に受け付け難いぽっちゃりな人」
「界斗….失礼の無いように精一杯努力してるんだろうが、直したやつのほうが傷つくと思うぞ?それ」
虎之助は苦笑いしながら僕にそう言った。僕なりにオブラートに包んでみたんだが、いくらオブラートにだろうがアルミホイルにだろうが包んだとしてもあの受け付け難い気持ち悪さはカバーしきれないだろう。
「はぁ…あの気持ち悪いのがハジート・カルルト、国王様がアルバード・カンドレアよ。人の名前ぐらい覚えなさいよあんた…」
燕が呆れた様子で僕に言ってくる。しかし日本で育って来た僕からしたらあんな外国でも少なそうな名前なんてそんなすぐには覚えられそうにも無い。
「あ、そうだ。ハジートの方を恥じブタでアルバード国王のことをアル王って呼べば…」
「前者ならまだしも国王はちゃんと呼びなさいよ…」
燕が再び呆れた様子で僕にそう言ったが、燕もハジート改め恥じブタにはかなり酷い事を言っていると思う。
そんなやりとりをしている間に国王は再び堂々とした態度に戻っていた。
「ではこれよりこの世界のことについて話そう。何か聞きたいことがあれば儂が話し終えた後にハジートに聞くが良い」
そう言って国王、改めアル王はこの世界について話してくれた。
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「それでは皆様、これより"第一回異世界これこらどう頑張っていこうか作戦会議"を始めたいと思いまーす」
『イェーイ!』
「うん、みんな思ったより元気良さそうで良かった。そんじゃ、今分かってる情報をまとめていこう。芽流お願い」
「はいはい」
僕達はアル王の話が終わり、この城に住まわせてもらうことになってから城の講堂を一つ借りて作戦会議を開いていた。
仕切っているのはこのクラスの中心でありリーダーシップがずば抜けてあるがゆえに"特クラス"になった敷居良太だ。彼のカリスマ性は誰もが認めるものであり、クラスだけでなく、去年の高校一年の頃から生徒会として学校に貢献して来た人物だ。
そしてその横で情報をまとめてくれているのが間藤芽流。彼女は現在高校生にしてもう一人のクラスメイトと共に会社を立ち上げている。
彼女の才能はプレゼン資料の作成、つまりは伝えたい重要な情報などをまとめ、わかりやすくするのが得意だということだ。
彼女は講堂の黒板に既に自らで分かっている情報を書き出していた。
「じゃあまずはこの世界のことからだね。この世界の名前は"デオン"、なんでもこの世界を作り出した神様の名前らしい。それでこの世界は三つの大陸があるわけだけど…はい!ここてちゃんと聞いていたかチェック!神楽丸、この大陸の名前、覚えてる?」
突然指名されたのは暖島神楽丸。彼は中学で空手の日本一をとった武闘派の天才である。
「ん?あぁ、覚えているとも。確か…ミデア大陸だったか?」
「正解!そう、ここはミデア大陸、その中央に位置する国なんだよね。それで他にもこの世界には大陸が二つ存在する。それがガイア大陸とイビア大陸。それじゃあ真円寺、ミデア大陸も含めたこれらの大陸のそれぞれの特徴について述べてみて」
となりにいた虎之助が当てられた。危なかった…僕はあまり人前で話すのは得意じゃないから当てられたくはないんだ。
「えーと…住んでる人種が違うんだっけか?」
「うん、あ、ちょうど芽流がまとめてくれてたみたいだね。それじゃあこれの通りなんだけど…ミデア大陸には僕達のような人族が住んでいる。それに対してガイア大陸には獣人族、イビア大陸には魔族が住んでいるらしい。それでいて三つの大陸は巨大な橋で繋がっているんだけど…これらの大陸名は全てそれぞれの種族の神の名前らしいんだ」
敷居は一息つくと再び説明に入った。
「それじゃあそれぞれの種族についてまとめよう。まず人族、武器や生活の技術が発展しているのが特徴。そして獣人族、肉弾戦において魔族すらも凌駕するらしくて魔法を使える種族もいれば全く使えない種族もいる能力にブレの大きいところがある。魔族は魔法に長けている上に人族よりもより強い肉体と寿命を持つらしい」
「そしてここからは私達がこの世界に呼ばれた理由です」
敷居が話していると情報を書き終えた間藤が話し始めた。
「まずはこの国でのお告げ…占いみたいなものですが、それによって2年後に魔族側から何かしら攻撃を受けると出たらしいです。対処する方法は勇者を召喚して戦わせること。2年の猶予をつけたのは私達の育成のためだと思われます」
間藤は淡々と説明を続け、それをみんなウンウンと頷きながら聞いていく。みんなの動きがシンクロしているのが少しおかしかったのか無表情キャラである間藤が口元を手で隠した。
「ふふ…んんっ!それで、私達勇者のことについてですが…それぞれに個別の能力…魔法と呼ばれるものが与えられているらしいです」
そう、この世界で僕達には個別魔法が与えられている。それも恐らくだが虎之助と燕から聞いた限り各々が持つ才能に沿った魔法だ。
「私の場合は伝達魔法、いわばテレパシーです」
『ほら、こんな風に』
間藤の声が直接頭の中に流れてきた。他のみんなもそのようでテンションが上がっているものがいる。しかし、どうも変な感じがしてゾワゾワする。
「ちなみに俺は閃光魔法だ。こんな風に触れたものや自分の体を光らせた上で強度を高めたりすることができる」
敷居も拳を光らせて手近にあった椅子を拳でたたき折った。
「とまあ…今はこれぐらいでしょうか。魔法を使う際には魔力と呼ばれるものを消費します。魔力の保有量は個人差があるらしく、使い切ると失神してしまうらしいです」
間藤がそういうと光を抑えた敷居がまとめてくれた。
「今日は色々あったけどこれから先もっと色々あると思う。けど俺たちなら大丈夫だ。なんたって俺たちは"特クラス"なんだから」
「せっかくだしこの世界を救おうか」
敷居はやたらドヤ顔でそういった。みんなこのドヤ顔には慣れたが、正直今でも突っ込もうか迷っている。
これにて"第一回異世界これからどう頑張るか作戦会議"は無事終わった。
最後まで読んでくださりありがとうございます。