世界を変える力と不思議な魔法使い 後編
俺は珍しく朝早くに目が覚めていた、ついに早起きできるようになったと言う訳ではなく、ただ昨日の篠根先輩似の女の子のことが気になってあまり眠れなかっただけである。
セナはまだ横で寝ていたため起こさぬように俺は宿屋を後にし彼女を捜しに向かった。
街の人たちの話では街はずれの森に住んでいるとのことなのでとりあえずそこに向かってみることにした。
「ここがあの子が住んでる森か、一度入ったら迷子になりそうないかにもファンタジーって感じの森だな」
生えている草木は俺のいた世界にはない不思議な形のものが多く道という道はなくかったが一度通った場所は記憶していたので、半日ほどかけて遂に森の中に家を発見した。
「あ、あそこだよな、違ったらもう時間的にあきらめて帰るか」
俺は家の前まで行き、ドアをノックするが反応がない。
「留守か、、、」
あきらめかけたその時俺はドアごと吹き飛ばされた。
「な、何が起こったんだ」
俺はとりあえず地面から顔を起こすとそこには昨日の銀髪の子ではなく顔は同じだが髪が金髪の子が立っていた
「え、えっと昨日の子ではないよね?」
その子は何も言わずに昨日銀髪の子がもっていたものにそっくりな本を開いて見せるが、そのページはやはり白紙である。
「す、すいません、怖い人かと思って」
本に文字が浮かび本から声が聞こえてきた。
「昨日は逃げてしまって申し訳ありません、よかったら中にどうぞ」
その子は俺を家の中に案内してくれた、そのままテーブルに座って待っているとクッキーと紅茶を出してくれた。
「どういった用件で来たんですか?」
また彼女は本で俺に語り掛けてくる。
「えっと、昨日君に似た銀髪の子がここに住んでるって聞いたんだけど」
「いや、いきなり似てる人がいるって言っても良くわからないよね」
俺はとりあえず笑ってごまかしてみることにした。
「ちょっと待ってくださいね」
彼女はそういって目を閉じる、次の瞬間、髪の色が銀色に変化した。
「何用だ若造」
「え、えっと昨日渡し忘れたお金です」
俺はとりあえず考えることをやめ昨日渡しそびれたお金を差し出した。
「わざわざこれを届けにこんな森の奥まで来るとはおぬしも馬鹿じゃの、そもそもわしが逃げたのだからなかったことにしてしまえばよいのに」
「えっとこれだけじゃなくてほかにも聞きたいことがあってきたんだけど」
俺はしばらくたったからか落ち着きまともに話すことができるようになっていた。
「わざわざここまで来た褒美に答えれるだけのことは答えてやろう」
「えっとじゃあ、君たちは何者?」
俺はあえてたちという表現をしてみた。
「そうじゃな、せっかくだから少しわしの昔話をしてやろう」
彼女はそういうと自分の昔話を話し始めた。
約5百年ほど前、わしは世界で2番目にすごいの魔法使いだった、ありとあらゆる魔法を使え、あらたな魔法もいくつも作り上げた、だがどれだけ努力してもわしは2番だった、どうしても一番になりたかったわしはある魔道具の製作を始めた、その魔道具は呪文を詠唱せずに魔法を使うことができるようになる魔道具、長い年月をかけ、本に呪文を記憶させ魔力を注ぐだけで魔法を使うことができる魔道具が完成したと思っていた、その時わしは気づかなかったのだ、まだその魔道具が完成していなかったことに、魔法をつかうには呪文を唱える必要がある、それは絶対必要なものだった、わしはそんな簡単なことにも気付かずにその魔道具を使ってしまったのだ、その魔道具は魔道具を使う者の代わりに呪文を読むものを欲した、そしてわしはその魔道具に魂を吸収され魔道具の一部となってしまったのじゃ、それから日は流れちょうど2年前、この森に一人の女の子が迷い込んだ、その子はわしが吸収された魔道具を見つけた、わしは契約しないかと申し出た、おぬしを魔法使いにしてやるからお前の体を一日30分程貸してほしいと、その子はポケットから紙とペンを取り出し、いいよ、この一言だけ書いて見せて来たのだ、こうしてわしとこの子はこのように体を共有していると言う訳だ。
「なるほどなでも今の話だとその子はしゃべれないんだよな、じゃあなんであんたの時は喋れるんだ?」
「そうじゃの、この子は別に病気とかでしゃべれないわけではなく声を封印されているのじゃ、その封印を解きたくておぬしの力を借りようとしたのじゃが、わしが対象になってしまったからの」
「えっとじゃあ、昨日逃げた理由は? あの様子だと多分あんたは母親の名前を知ってるんじゃないのか?」
「知っておるとも、だがその名は口にしたくないだけじゃ、それにその力を使いたかった対象はわしではないからな」
彼女はもしかしたらかなり優しいのではないか、なぜ魔女と呼ばれているのか気になることも多かったが余り聞いていると遅くなると思い、これ以上聞かないことにし帰ろうとした。
「待て、帰りは宿までテレポートで飛ばしてやる、だからこの子の話し相手になってはくれぬか」
やっぱり彼女は優しいのだろう。
「俺でよければ」
俺はそれから自分がいた世界の話をした、彼女はその話をとても楽しそうに聴いてくれた、だからこそ彼女には伝えねばならないと思った。
「あのさ、実は今夜、街の人がこの森を燃やそうとしているんだ、だから逃げたほうがいいと思う」
「知ってますよ、でもこれでいいんです、私は魔女なのだから」
「なんでそんなに割り切れるんだよ! テレポートできるんだろ! 今からでも全然逃げれるじゃないか!」
俺は珍しく感情的になってしまった、だが彼女本を開いたまま笑って俺の方を見ている。
「楽しい時間をありがとうございました」
その瞬間足元に魔法陣が展開され俺はそのまま宿の自室まで飛ばされた。
「冬夜! いきなり現れて何事!」
セナは驚いていた、俺もとても不思議な感覚で少し酔い気味だ。
「昨日の魔法使いにテレポートで飛ばされたんだよ」
「そうだったんだ、でも間に合ってよかった」
セナは俺が森に行ってる間に馬車を魔物から守る代わりに乗せてもらう約束を取り付けてくれたらしい。
「悪いなセナ、そんなことまでしてくれて」
「いいのいいの、それより一時間後だからね」
俺は街を出る準備をして少し彼女のことを考えていた、一時間はあっという間に過ぎおれたちは街の出口にいた。
「今日は何か魔女狩りとかいう物騒なことをやるみたいだから早めに行きましょうかね」
ほかの商人たちにも魔女狩りの話は伝わってるらしく厄介ごとに巻き込まれたくないのか皆早めに出発しているらしい、そこに俺たち馬車に乗せてくれるという商人のおじさんが話しかけてきた。
「私たちも早く行きましょうか」
「分かりました」
俺とセナは馬車に乗り込む、間もなくして馬車は走り出した、俺たちが走り出すと同時に村人たちが松明を持ち街の人たちが森の方に向かって行くのが見えた、俺は少し気なりながらもあまり考えないようにした。
馬車が走り出してしばらくしたころ俺は自分がやったことが正しかったのそんなどうしよもないことが気になりセナに聞いてみた。
「セナ、俺は間違っているのかな」
「そんなことわからないよ、でも冬夜らしくないかも、だって冬夜はお節介焼きだもん」
「きっぱりとお節介焼きって言われると傷つくな~、でもありがとうセナ」
「ごめんおじさんちょっと止めてくれない村に忘れ物しちゃって」
俺がそういうと商人のおじさんは馬車を止めてくれた。
俺はそのまま馬車を降り、森の方に走った。
「行ってらっしゃい冬夜」
森はかなり遠くに離れていて更にもうすでに火が付けられかなりの燃えている状態だった。
「頼むから俺が行くまで生きててくれよ」
その頃森の中にいる魔法使いは、燃え盛る家の中にいた
「本当に良かったのだな、今からでもあいつらのもとに行くのは簡単だぞ」
彼女は問いかけに対して必ず首を振って返していた。
「まったく、頑固な子だな、そこらへんはわしにそっくりだな」
彼女はにっこりと笑った、そして燃え盛る家は崩れた。
俺は森にたどり着いた、だがその時すでに森の火はかなり広がっていてもはや入るのは不可能になっていた。
「くそったれ! 俺のバカ野郎! 何であの時無理やりにでも連れ出さなかったんだ」
今の現状どう見たって生存は絶望的、俺の力で燃える前の森に戻っても、もし彼女が死んでいたら彼女の命は戻らない。
「(どうするどうする! 俺は馬鹿だけど馬鹿なりに頭を使え! 考えろ! おれには世界を変えられる力があるんだから!)」
「世界を変える力、、、そうか世界を変える力だ!」
俺は気付いたむしろ今までなぜ気づかなかった、今まで石を別の石に変えたり、紙を魔法の地図に変えたり、斧を直したり、名称や説明欄だけを変えていたことに。
「アクセス!」
「問題、パトカーのランプがブーメラン型なのはなぜ?」
「見やすいからだ」
「正解、変更できる箇所は一か所です」
名称、魔女が住む森
説明、魔女が住むと言われてる森
「そうだ誰も言ってなかったこの二点のどこかしか変えれないだなんて言ってなかったじゃないか」
「世界のすべてを変えれるなら歴史ぐらい変えてみやがれ! 魔女狩りが行われたのを二時間後にずらせ!」
「了承」
森は元通りになり、全く明かりがついていなかった街には明かりがともっていた。
「本当に出来た、、、のか」
俺はその後すぐに森の中に入り朝の記憶を頼りに彼女の家まで走った、朝とは違い全く迷うことなく家までたどり着くことができた。
俺は家の前に立ち、ドアを激しくノックした。
「いるんだろ! おい! 開けろよ!」
俺がノックを続けていると彼女がドアを開けてくれた。
「こんな夜に何ですか?」
「もうすぐ魔女狩りでこの森は焼かれる! 今から俺と逃げるぞ!」
「知ってるって言ったじゃないですか、朝も断ったのだから、もうほっといてください」
彼女はそういって俺に手をかざす、すぐさま足元に魔法陣が展開された、俺はとっさに彼女の手をつかみこちらに引き寄せと彼女は魔法を途中でやめた。
「どうした? また飛ばさないのか」
どうやらテレポートは魔法陣内のものをすべて転送させるらしい。
「どうして貴方は魔女なんかにやさしいんですか」
「そもそも前提が間違ってる、俺はお前を魔女だと思ってない」
彼女は少し驚いた様子をしている、その時奥の方から焦げ臭いにおいがしてくる。
「げ、もう始まったのかこっちに来てから時間の感覚がまじでわからなくなった」
「早く逃げないと貴方も燃えちゃいます」
「お前は自分の口で自分の言葉でしゃべりたくないのか」
彼女はその言葉を聞くと顔をこわばらせ本を思いっきり顔に近づけてきた。
「しゃべりたいに決まってるじゃないですか! 何で私はしゃべれないんですか! 何で口は動くのに声だけが出ないんですか! 何で魔法が使える人なんていっぱいいるのに私だけ魔女なんですか!」
本から聞こえる声は今までの彼女からは想像もできないくらい感情的だった。
「それは俺にはわからない、だって俺はお前とあってまだ日が浅いからな」
「じゃあもうかかわらないでください!」
「だけどそれだけ言えれば十分だろ、俺が変えてやるよ、お前のこれからの人生を」
「ここで死んで終わりじゃない、魔女ではなく人として生きてお前の声も俺が取り戻してやる、だって俺にはそれができるから」
彼女は少し沈黙し本を片手に俺に抱き着いてきた、その時少し見えた彼女の横顔からは涙がこぼれていた。
「約束してくださいよ」
「勿論だ! ついでにお前についてる魔法使いの願いもかなえてやるよ」
そう言うと足元に魔法陣が展開され、朝と同じように俺は馬車まで飛ばされた、だが今回はこの子も一緒だ
「冬夜! またいきなり現れて何事! それとこの子はあの魔法使い?」
セナは驚いているのか落ち着いているのか全く分からないしゃべり方である。
「ああ、えっと、そういえば名前聞いてなかったな」
彼女は笑いながら本をこちらに向ける。
「私は冬夜さんが大好きです!」
「え?、、、」
彼女は顔を赤くして本を何度もたたくき、もう一度見せてくる。
「私はミア=クロスフィードです、冬夜さん、セナさんよろしくお願いします」
こうして俺たちに新しい仲間が増えた、本でしゃべる不思議な魔法使いの子だ。