世界を変える力でお手軽最強スライム?
俺は鳥の鳴き声が聞こえて来たので朝かと思い体を起こすと、目の前にはセナが立っていた。
「おはよう冬夜、もうお昼だから起こそうと思ったんだけど」
「お昼、朝だと思ってた、、、」
「何言ってるの、早くご飯食べて今日は狩りに行くわよ」
余りにも目覚めがいいため朝かと思ってしまった、異世界に来ても朝がダメなのは変わらないらしい。
朝、いや昼飯を食べ、先に外でセナを待っていた。
「冬夜! 危ない!」
ライズの声が聞こえると上から何か降ってきた、あれは、、、斧か。
斧は冬夜の正面に落ちてきた。
「あぶな! なにしてるんですか!」
「すまんすまん、巻き割をしていたら斧が折れてしまってな」
若干寝ぼけていたが今の一件でおめめパッチリだよ、そして俺は地面に刺さっている斧に目が行く。
「(これ直せるのかな、試してみようかな)」
「ライズさん、この斧ちょっと借りますね」
俺は地面に刺さった斧を抜き家の裏側に行く。
「アクセス」
「(問題、トランプの6の別の名前は?)」
「(普通の雑学か)」
もちろん冬夜は迷わず答える。
「答えはサイスだ」
「(正解、変更できる箇所は一か所です)」
「(名称、折れた斧、説明、折れている斧)」
「名称をただの斧に」
俺がそういうと斧は元通りになる。
「修理も可能なのか」
「ライズさん直りましたよ」
「ホントに直しちまったのか、すごい速いな」
そんな話をしていると家からセナが出てくる。
「おまたせ冬夜、さぁ狩りに行くわよ!」
「今日は肉を期待してるからな」
ライズは手を振りながら俺たちを見送った。
俺たちは草原で魔物を探すがまったくと言うほど出くわさない。
「どうしたのかしら、魔物が全然見当たらないわね」
「何かあったんですかね? 今日は帰りますか?」
俺がそんなことを問いかけていると草原に咆哮が響く。
咆哮のしたほうに目をやるとそこにはファンタジーではお決まりのモンスターが立っていた。
「あれは、、、ミノタウロスか?」
「何でこんなところにミノタウロスが! ミノタウロスはこの辺にはいないはずなのに!」
「冬夜! ここは私に任せて冬夜はライズさんや村の人たちを呼んできて」
俺は悩んだ、ここで村に戻るべきなのか、ここでセナとともに戦うか。
「冬夜、大丈夫こう見えて私は強いから」
俺にはその言葉がフラグにしか聞こえなくて仕方なかった。
だが俺は背を向けて走った、村に向かって。
たいして走ってもいないのに足が重たい、前に進むごとにその重さはどんどん増していく、セナの頼みとはいえ自分だけ逃げている罪悪感が重くのしかかっているようなきがしてならない。
そして俺はついに足を止めてしまった。
「俺は何を悩んでいるんだ、あそこから逃げたのならもうやることは一つのはずなんだ、村に行きみんなを呼んでくる、自分で選んだ道なんだ、振り返ることも戻ることも許されないのだから」
俺は自己暗示のようにただただ足を前に出そうとする、だがその時ある出来事を思い出す。
それは砂月がなにげない日常の描写、でも今はそれがセナと被ってしょうがなかった。
その直後、俺はほぼ無意識にセナのいるほうに振り向き走り出す。
「俺は世界を変えられる力を持っているんだ、この程度の逆境軽く変えてやる」
俺が走り出した瞬間何かを踏む、下を向くとそこにはスライムがいた。
「スライム? ミノタウロスのせいでほとんど隠れていると思ったのに」
スライムは俺を見つめながら何かを訴えてる気がした。
そして俺はスライムを見てあることを閃いた。
「お前、ミノタウロスが倒せるくらい強くなりたいか」
その頃セナはミノタウロスと死闘を繰り広げていた。
「冬夜が戻ってくるまであとどれぐらいかかるかわからない、それに私一人で倒すのは厳しい、でも時間くらいなら」
セナはミノタウロスの斧をかわしながら少しずつ攻撃を加えるが皮膚が固いのか斬撃が一切通らない。
「(ここまで攻撃が通らないなんて)」
攻撃をかわされたばかりのミノタウロスがイラついたのか斧を置き咆哮をする、そのまま近接戦に切り変えて攻撃をしてくる。
今までよりも攻撃が小回りが利くためセナは避けるのでせえ精一杯になっていた。
だがそれも長く続かず腹部に一発もらってしまう。
「くっ、危なかった直接もらってたら終わってわね」
セナは剣で直撃を免れていた、だが剣にはひびが入っていてもうほとんど使い物にならない状態である。
「だがあそこまで言ってしまった以上、私は引けない!」
その時ミノタウロスの顔面で何かが爆発する。
「え? 驚かせるぐらいって書いてあったのに、これ地面に投げてたらシャレにならなかったな」
「(今の爆発はボムストーン? この辺にはないはずなのにどうして、でも今の声は冬夜!)」
セナは石が飛んできたほうを振り向く、確かにそこには冬夜はいたが冬夜以外はだれもいなかった、しいて言うならなぜか冬夜がスライムを抱えていた。
「冬夜! ライズさんたちは」
「呼びに行くのをやめた!」
セナ話それを聞き、呆れた顔をする。
「確かに俺はセナの期待を裏切った! でもそれは、この牛野郎を倒せるからだ」
「このスライムがな!」
セナはそれを聞ききょとんとした表情をする、それもそのはず普通何言ってるかわかるわけない、どんなゲームでもチュートリアルで狩られるようなスライムが、中盤や終盤に出てくるミノタウロスに勝つなど天地がひっくり返ってもありえない話。
だが俺には変えられる、ミノタウロスがスライムより強い、そんな当たり前すら変えられる。
「行ってこいスライム! お前の力を見せてやれ」
冬夜はスライムを地面に置き指示を出す、セナはもうすでにあきらめた目をしている。
ミノタウロスはこちらに向かって突進してくる、スライムは地面を蹴りたいあたりを仕掛ける、スライムが地面をけった瞬間物凄い土煙が上がり周囲の視界は一気に悪くなる。
土煙が晴れた時セナは目を疑った、スライムの姿はそこにはなく目の前には上半身が吹き飛んだミノタウロスが倒れていた。
「え? いったい何が、本当にスライムが」
セナは混乱していた、それもそのはずだ俺だって驚いているのだから。
時間戻り、俺がスライムで会った時。
「アクセス」
「(問題、ウサギの数え方は?)」
「羽だ」
人間はなぞなぞみたいな問題だったのに、スライムは普通の問題なのか。
「(正解、2か所変更することができます)」
「(名称、スライム、説明、一般的なスライム)」
「(ステータス、攻撃力D、敏捷性C、体力E、おいしさB)」
冬夜は少し驚く今までにはないステータスという項目が追加されているからである。
「(おいしさってステータスまであるのか、とりあえず攻撃と敏捷性を最大に)」
「(了承、攻撃力をSSに敏捷性をSSSに変更しました)」
「予想以上に上がったな」
それで実際に試してみたが想像以上の強さだったわけだ。しかもここまでお手軽に変えれるとなるとなお脅威だ。
もはやスライムが皇帝倒せるんじゃないかと思うぐらいの破壊力だ。
俺がそんなことを考えていると、セナが俺の方にやって来て抱き着く。
「ありがとう、、、」
一発もらうくらいの覚悟をしていたがこれは予想外である。
「え、えっと、ごめんなさい」
「ここはどういたしましてでいいのに」
セナは少し涙ながらに答える。
「どういたしまして」
俺たちはミノタウロスの残った下半身をを家に持ち帰ることにした。
「帰ったか! よかったよかった、この辺でミノタウロスが出たって噂があったから心配したぞ」
俺はそういうライズさんにミノタウロスの下半身を見せる。
ライズさんはそれからしばらく驚きでおろおろしていたが状況を飲み込んでから俺たちを叱ってくれた。
「疲れた」
俺は食事を終え自室のベットで横になる。
「今日は長い一日だった、、、変える力か」
自分の右手を見てこの力がいかにすごいものかを俺は再確認し眠りについた。
朝早くにテーブルに置手紙を残し、俺はライズさんの家を出た。
「なんだ、もう行っちゃうのか」
ライズさんは巻き割をしていた。
「挨拶なしに出てくとは最近の若者は礼儀知らずだな」
「すいません、お世話になりました」
「なあ冬夜、お前は何を目指してるんだ」
ライズさんは真剣なまなざしでこちらを見る。
「ザデス王国の皇帝を倒す!」
それを聞くとライズさんは腹を抱えて笑う。
「や、やっぱ笑い話ですかね」
「ああ、最高の笑い話だな」
俺は恥ずかしくなり顔をそらす。
「だがそれは今の話だ、成し遂げて見せな冬夜」
「絶対成し遂げて見せます!」
俺は力ずよく答える、その時家のドアの扉が開く。
「早起きとはめずらいわね冬夜」
「セナもこんな朝早くから狩りか?」
それを聞きセナは微笑む。
「いや、私も冬夜についていくことにしたの」
「え? でもそれじゃあライズさんが一人になっちゃうし」
俺はおどおどしながら答える
「行ってきなセナ、だが行くならこれを持っていきな」
ライズさんは家の中から一本の剣を持ってくる。
その剣は決して新品なわけではない、でもセナはとってもうれしそうな表情をしていた。
「ライズさん行ってきます!」
セナはそう言って村に背を向け俺と一緒に歩きだす。
ライズさんや村の人たちは手を振って見送ってくれている。
「いいのか? 手ぐらい振返してやればいいのに」
「今振り返ったら、前に進めない気がするから」
俺とセナは村を背に歩きだす、ザデス王国の皇帝打倒を目指して。