プロローグ
俺は石崎冬夜、多分ただの高校生だ。
多分と自分で言うのもなんだが、俺は誰にも負けない能力を持っている、それは、、、記憶力だ。
「冬夜、朝よ、早く起きなさい」
「わかった、多分今から起きるよ」
「早く起きなさい!」
そう言って母さんは布団を引っぺがす。
「早く来なさいよ〜」
俺は仕方なく重い体を起こし、1階のリビングに向かう。
リビングでは父さんと妹がテレビを見ながら食事をしていた。
「おはよう冬夜、たまには自分で起きてこいよ」
「それが出来たら苦労しないよ」
「それより父さん、今日からバスの時間が変わるけどいいのか?」
「なに! 行ってきます」
「相変わらずよく覚えてるわね」
母さんは感心して俺を見ている。
「ホント記憶力はあるのになんで頭は悪いのかしらね」
「ほっとけ」
そう、記憶力がいいだけで頭は悪いのが俺だ
「今日はテストが返ってくるんでしょ? 期待してるからね」
もはや毎回のことで嫌がらせじゃないかと思えてきた。
そんな朝のやり取りをして俺は学校に向かった。
俺は学校で返されるテストを見て絶望していた。
「何でだ、何でなんだ」
「国語30点、社会100点、数学32点、英語27点」
幼馴染の砂月は俺の点数を読み上げていた。
砂月は黒髪の短髪で胸はC、、、いやDかな?
「何で私の胸を見てるのよ」
砂月はこちらを睨んでいる。
「み、見てないからな」
「そんなことより何で読み上げんだよ」
「相変わらず暗記はできるのね、雑学王にまでなっておいてこれじゃあね」
砂月が言うように俺は去年のテレビの全国雑学王決定戦で優勝している、だが俺にとっては正直ヌルゲーだった、覚えたことを言うだけのドキドキもハラハラもしないものだった。
「何で暗記しかできないなんて俺が一番知りたいよ」
「今日の放課後は図書館に籠ろう」
「どうせ怒られんだからあきらめて帰ればいいのに」
砂月はため息をつきながら答える。
「いいんだよ、俺は嫌なことは先延ばしにしたいタイプなの」
そして放課後になり、俺が図書館で本を読んでいると一人の女性が近寄ってくる。
「またそんな雑学の本ばかり読んで、たまには小説とか読んだら」
彼女は図書委員の篠根先輩だ俺の一つ上の3年生。
髪は金髪で長め、少しふわふわしてる感じが個人的には好きだ、身長もあまり高くなく妹感があるのもまたいい、胸は、、、Bかな?
「私の胸を見てどうしたの?」
「み、見てないですよ」
何か少しデジャブを感じながら話を戻す。
「てか篠根先輩、僕が小説は苦手なの知ってるじゃないですか」
「知ってるけど、その本前も読んでたじゃない、冬夜君なら二度読みは必要ないでしょ」
「いいんですよ、暇潰しなんですから」
俺はきっぱりと断り本を読み進める。
「そうだ冬夜君! 実は面白い本が入ったんだけど」
そう言って篠根先輩は準備室の方から一冊の本を持ってくる。
「この本なんだけど、朝図書館に来たら置いてあったのよ」
そう言いながら篠根先輩は持ってきた本を広げて見せる。
「何ですかこの文字? 古代文字かなんかですか?」
そこには何語か全くわからない文字が書かれていた。
「冬夜君にも読めないんだ」
「逆に何で読めると思ったんですか」
「だって冬夜君いろんな国の言葉を無駄に覚えてるからさ」
「一言余計ってよく言われません?」
「でも冬夜君に話たのはこれがあったからなのよ」
篠根先輩は一枚の紙をひらひらさせている。
「何ですか? その紙」
俺がそう言うと篠根先輩は紙を広げて見せる。
「これは本の文字と一緒、もしかして翻訳?」
「その通り、じゃあよろしく」
「え? これやるの」
「暇なんでしょ、じゃあ翻訳出来たら教えてね」
そう言って手を振りながらカウンターに戻っていった。
「身勝手な人だな、まあ、やってみるか」
それから10分ほど経過した。
「よし、覚えた」
「とりあえず読んでから、紙に書けばいいか」
「えっと、なになに」
この物語は私が作りし世界のお話、この世界には二つの大きな国がある。
一つは人や獣人が住まう国、ラフィレスト王国、もう一つは魔物や悪魔などが住まう国、ザデス王国。
この二つの国は神である私が作り上げた国境にある結界によって干渉を制限していた、ザデス王国の魔物は繁殖力が高いため弱い魔物であれば結界を通り抜けることができた、だがある時ザデス王国の皇帝がある魔法の開発に成功した、その魔法は神を封印する魔法だった、皇帝はその魔法を使い私を封印した、私はかろうじて力の一部を逃すことができた、おかげで結界は完全に消滅しなかった、だがこれにより結界の力は弱まり魔物の移動がほぼ自由になったため強い魔物に侵略されたラフィレスト王国は2年足らずで国土の3分の1を失った。
魔物の進行はいまだ続いておりもはラフィレスト王国は壊滅するのも時間の問題かに思えた、だが私は最後に残され力を使いこの世の理を無視してありとあらゆる物を『変える力』をある者に与えた、その者はその力を駆使しザデス王国に立ち向かい、世界を救って見せた、その者の名前は、、、
「え? ここで途切れてるのだが」
「終るなら世界を救ったやつは結局誰だったのかぐらい書いてからにしてくれよ、ここまで読んだら少し気になるだろ」
少し残念そうな顔をして俺はペンを取る。
「さてそれじゃあ書き写すかな」
俺がが翻訳を書こうとするとページが勝手に一枚めくられる。
「なんだまだ先があったのか、てか白紙のページ?」
俺が白紙のページを見ると、、そこに文字が浮かび上がってくる。
「なんだこれ」
少し怪しみながらもその文字を読んでみる。
「ザデス王国に立ち向かった者の名は、、、石崎冬夜」
「え? 俺の名前、一体どういうことだ、そんなことより何で決めつけられてるんだよ」
一体何が起こってるんのか、白紙のページに浮かんだじぶんの名前を眺めながらぶつぶつ呟いていると更にページがめくれ、白紙のページが現れる。
そして左には新たに文字が浮かびあがる。
貴方には私の世界を救ってほしい、もしもこの頼みを聞いてくれるならば世界を変える力をあたえます。
俺はさらに読み進める。
この内容に了承するならば右のページに利き手をかざせ。
「なんだこれ? でどう考えても怪しいよな」
どう考えても怪しいが、今自分の目の前で起こっていることに不思議と惹かれるものがあった。
「物は試しって言うし、やってみるかな」
俺は右側の空白のページに右手をかざす。
「ありがとうございます」
女性の声で直接頭の中に語り掛けられたような気がした。
その直後本にかざした右手が光りを放った。
「え? なんだなんだ」
俺は何が起こってるのか理解が追い付かなかった。
そして目の前は一瞬で暗闇に包まれ女性の声でが聞こえてくる。
「貴方に与えたその力は世界を変える力、使い方さえ間違えなければ最強の力となるでしょう」
その声の後、目の前の暗闇は晴れた。
だがそこは図書館ではなく見渡す限りの草原が広がっていた。
「どうしよう」
俺は後悔した、こんなことになるなら母さんに怒られたほうが良かったと。