6話
予告しましたが、遅くなってしまい申し訳ありません。やはり時間が無くて…。
再び読んでいただきありがとうございます。
それではどうぞ。
教室に戻ると、そこにはおそらく今日提出の課題に、夢中になって取り組んでいるソウと、その隣に呆れた様子のリュウしかいなかった。
戻って来た俺にリュウが気づく。
「…思ったよりも早かったな」
「授業の事で話しただけだからな」
そのやり取りの中、ソウがいきなり立ち上がり、ガッツポーズを決める。
「よっしゃ!完成!」
その反応に対して、俺とリュウは冷めた対応をする。
「…やっとか」
「さっき先生から聞いたぞ、提出してない奴ソウだけだってよ」
「マジで!みんな真面目だな~」
……お前が不真面目なのだよ。そろそろ気づけ…。
「よし!じゃあこれ出して、帰るわ!」
筆記用具などを雑に鞄の中に突っ込み、ソウが帰る支度をする。
「何か用事でもあるのか?」
「これからバイト!んじゃまた明日!」
そう言い残して、教室の扉を乱暴に開け、瞬く間に去って行った。
俺は、廊下へと逃げる冷気を留めるために、開け放たれ扉を閉めに行く。廊下からは夏の空気が、流れ込んで、少しばかり生温くなった。
ガラガラと音を立て閉め、暑く湿った空気を断つ。
「…お前のアレ、整備終わったぞ」
俺達しかいない教室でリュウが話しを切り出す。話し出したリュウはいつもの呆けた表情ではなく、真面目な話をする時の表情になっている。
だいたい、リュウがこの表情をする時は仕事の話だ。
「アレって、HSM?」
「…あぁ、今日の朝の3時くらいに終わった」
「状態はどんな感じだった?」
「…酷過ぎだ……」
その言葉を言ったリュウの疲れ切った感じから、ホントに酷かったのだろう。おそらく今、リュウの頭の中には、まだボロボロの状態の俺のHSMがまだこびりついているのだろう。工業油みたいにベッタリと。
「…傷だらけの装甲を全部換装して、切れ掛かっているワイヤー張り替えて、そしてその後姉貴の試作したOS 組み込んで、その後バグばっかりだったから書き直して、んで……」
言葉は次第に小さくなっていき俺に伝わらなくなっても、何やらブツブツと呟いている。おそらく、今後どうしたら良いか、改善点や工夫を考えているのだろう。それが疲労で口から漏れている。
「ありがとう、これで安心して戦える」
「…そりゃよかった……頑張った甲斐がある」
リュウが大きなあくびをする。よほど疲れていたのだろう。それなのに俺と違って眠らずに、全部の授業を起きていたのは、こいつが真面目な奴だからだと思う。そしてふと思い出したかの用に呟いくのをやめ、話を再開する。
「…そう言えば、オヤジがお前のヤツ用に飛行ユニットを開発してた、姉貴と一緒に」
「万能機にでもする気かな……、開発者とはいえ少し自重してほしいな…」
フゥ……溜息をこぼし、眠気と戦いながらリュウは話し続ける。
「…人支援魔術装置、Human Support Magic device、略してHSM。オヤジが俺ぐらいの年には、既にコレを考えてたんだよなぁ。魔法と機械の親和性とその利用方法を……授業の合間に」
としみじみと噛み締めるように言うか。
「すげぇよなぁ お前のオヤジさん、授業の合間じゃなかったら、もっと尊敬してた」
「…ホントな……」
なんだか同じ所で共感できた事が、なんだかおかしくって、俺達二人は笑ってしまった。
***************************
ひとしきり、笑ったあと、リュウから俺の機体の状態の説明を受けた後、
「装甲の傷が他の隊よりも多い」とか
「なんでもっと早く不調のことを相談しない?」とか
思い付いたものを全て言っているのでは?と思えるほど小言を言われた。最後の方、同じ小言が二回くらい出たからネタギレなのだろう。
「…小言はこれぐらいにして行くか」
「行くって?」
「…昼、姉貴にクレハ先輩の妹さんの義手のメンテナンスをするって……、どうせお前も来るだろ?」
「あぁ、連絡行ってたのね、もちろん行くよ」
鞄を整理し、支度をする。教科書を机の中から取り出し、鞄に詰め、ファスナーに手を掛けた時に…。
悲鳴が聞こえた。声は同じ階の離れたクラスから聞こえた。
何を言っているかわからないが叫んでいる。
何かを訴えるかのように、助けを乞うかのように、自分を哀れむかのように、子供のように駄々をこねるかのように。
「まさか……!」
「…そのまさかだろ……コレは!」
俺は扉をさっきのソウよりも勢いよく、扉を開け放ち、声の聞こえた教室へと走る。
「コウ!」
後ろから聞こえたリュウの制止の声を振り切り、悲鳴の聞こえた教室の扉の前へと着く。
「うちの学校、外から中見えなくてよかった…」
扉へと手を掛ける。その手は少し震えてる。
「そうでなかったら、ビビってこの扉開けれないな」
開けようと指に力を込めたその時。
「ウアアァァァァァァァァァァァ‼︎」
ひときわ大きな悲鳴と、ドンと建物が揺れるくらいの振動が、この教室から出てきた。
「ッ‼︎クソ‼︎」
意を決して扉を開いたそこには、普段の面影を残さないほどに壊された教室だった。
黒板は縦に亀裂が入り、机はあちらこちらに残骸となって転がっている。
極め付けは床だ。床一面、人の腰くらいまである棘が教室を埋め尽くしている。棘がタイルを割り、机を壊し、教室という日常的な空間を非日常にしている。
その棘の草原の中一人の女子がいる。身体中を擦り傷だらけにして、叫んでいる。
そして俺はこのような光景を何度か見たことがある。そしてこの現象の名前を呟いやいた。
「<キズ>………‼︎」
再び読んでいただきありがとうございます。
次回!いよいよ と言うよりも、やっと と言った方が良いと思うのですが、バトル回です!
この作品の始めてのバトルです!
が‼︎、いかんせん始めての試みなので、たぶん、と言うか、おそらく時間が掛かります。
気長にお待ちください。
ではまた!