4話
投稿速度が遅いのにも関わらず、この作品を読んでいただきありがとうございます。
では続きをどうぞ
廊下に自分の足音が一定の間隔で響く。
結局あのあと「恥をかきたくない!」と言う会長の見栄のために、時間ギリギリまで打ち合わせをした。
おかげで本鈴間近の時間の今、本来なら必要の無い全力疾走をしているのだ。
廊下には誰もいない。おそらくこの暑さから逃れるために涼しいクラスの中に引っ込んだか、本鈴がもう少しで鳴るから各自、自分のクラスの中に入ったのだろう。
そんな邪推をしている間に自分のクラスの前に辿り着く。そして割と息が切れていること気づく。やはり睡眠時間が少ないとキツイな。
窓の無いタイプのドアでよかった。鼻から息を吸い口から吐く。そのサイクルを数回繰り返して息を整える。
……夏休み明け初っ端から遅刻してきたようには思われたくない。俺は時間はできる限り守る主義だ。人生の中で遅刻など片手で足るくらいしかしてない。
会長やクレハ先輩、や付き合いの長い人に「コウは羞恥心が少ない」とよく言われるのだが、流石にこれぐらいには気づく。
息を整え終え、改めてクラスの引き戸を開けクラスに入る。
クラスにはすでに9割くらいの生徒がいた。俺以外の人は担任くらいではなかろうか。
夏休み中に会えなかった友達の変化に驚く集団や、旅行に行ったなどの話から、夏休みなんて無かったかのように昨日のテレビやアイドルの話や、アニメの話をしている。
そんの喧騒の中から自分の友達を探す。
机が六列あるうちの廊下側ニ列目、一番後ろの俺の席にたむろっていた。そこには印象が、真逆な二人の友人がいた。
いつも思うのだが、集まるのは別に俺の机じゃなくてもいいだろうに……。
「よう!昨日ぶり」
片方が明るく元気にうるさく
「…おはよ……なんだかお疲れだね」
もう片方が、気だるそうにめんどくさそうに
「おはよう……やっぱり疲れてるように見えるか?」
ムードメイカーの千葉 ソウ、あの会長の弟の双葉 リュウそして弟こと夢永 コウのチグハグトリオ。
体格といった身体的特徴を始め、趣味といった好みなども、ほぼ全てが合わないのに、なぜか気が合い、ほとんどの時間を一緒にたむろっていることから、チグハグトリオと周りからは言われている。
「…今にも死にそうな顔をしているな」
「どうしたん?なんかあった」
「いや、いつも通り振り回されてただけ」
このトリオの中で、一番身長が小さいく、いつも明るく能天気なソウが口を開く。
「ホント生徒会大変そうだよな~」
いつも楽観的で明るいムードメイカーである彼ならではの、何も考えてなさそうな言葉が出てきた。
それを生徒会の内情を知るリュウが気だるそうに訂正する。
「…違うコウが、仕事押し付けられてるだけ」
鋭いのか眠いのかわからない目線で問いながらこちらを見つめてくる。
姉のアオイに似ているその顔は、性格さえ治せば、モテるであろうと男子の中でもっぱらの噂である。
そして端正な目元で、問われる。
「その通りだよリュウ。お前とこの姉貴の無茶振り、ホントどうにかしてくれない?」
「…親でもムリなのに俺にできるわけないよ」
「それもそうか……」
二人分のため息が重なる。
「よくわかんないけど、いいじゃん。美人の先輩に使えるって思われてるんだからさ~」
と楽観的な発言がソウの口から出てくる。その言葉が彼らの耳に届くと四つの瞳が、冷たい視線を送る。
「じゃあかわってくれる?」
俺は疲れ切った顔で、提案するとさすがに理解したのか、引き攣った表情で
「遠慮させていただきます……」
とソウは答えた。
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「席に付けぇ~ホームルーム始めるぞ~」
本鈴が鳴り始めたのと同時に教室のドアが開け放たれ、気の抜けた声が飛んでくる。
ソウもリュウもその怒鳴り声を聞いて、慌ただしく自分の席に向かう。そして、ソウが離れたのを見計らってリュウが声をかけてくる。
「…あとで話がある」
「なんの?」
主語のない会話は苦手だ。
「…鈍いなぁお前はホント…」
「?」
リュウからは呆れた感じの表情と声がかえってくる。
……?わからない。
そんなに洞察力が優れているわけではないから、全くもってなにを伝えたいかわからない。
「…例のアレ。鬼の……」
そこまで言われてやっと理解できた。
「ああアレね」
「…詳しいコトはあとでな」
その瞬間に担任の小石が
「そこの二人早くしろ~」
と声をかける。
夏休み明けのまだ暑い日、朝のホームルームが始まった。
今回でチュートリアル的な物が終わりになります。次回からはこの作品の世界観などに触れて行くつもりです。
文字で世界を表現するのはとても楽しく、筆(指?)が進みます。次回は今回よりもう少しだけ早く投稿出来そうです。