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特務部隊<キズ>  作者: 中尾リン
一章
3/7

2話

頑張って書きます



 玄関を出ると、あまりの暑さにそのまま戻りたくなった。


 陽はとっくに地平線だか水平線から顔を出し私達の頭を照らす。


 こんな日に限って風は吹かず、なおかつ昨日の雨のせいで湿度を持った空気が不快な思いをさせる。


「暑い・・・」

 ついついそんな言葉が、出てしまうほど暑い。


 時計を確認する。針はその二本の針で6.30ぐらいを指している。

 おそらくこの時間だと走れば電車に間に合うだろう。そう思いコンクリートを蹴り走り出した。



 そして駅に着くといた電車に飛び込んだ。


 予定していた電車にはどうにか乗る事が出来ていたが、・・・。

「走るんじゃなかった・・・」

 

 汗の匂いと疲労からくる倦怠感が体を満たしていた



 電車の中には、早い時間帯のためか通勤の人達や朝練の為に早い時間から登校している人しかいない。

 時間帯が早く、なおかつ下り電車なのに席は全て空いておらず、壁に寄りかかって固めのファイルを下敷きにして昨夜の続きを書く。


 走った火照りと汗はクーラーがついている車内程度ではどうにもならず、書いてる時も汗が垂れる。


 家から最寄り駅まで電車で40分ぐらい。



 その時間を利用して未完成な部分や昨日の自分が至らなかった部分や文脈などの整合性を確認して、言いにくい部分の言い回しを考えて、ルーズリーフに書き直す。


 手汗が滲み、額から垂れた汗がルーズリーフに丸いシミをつくる。


……これじゃダメだな。学校に着いたらパソコンを借りて本番ように作り直そう。



 そんなことを考えながらペンを走らせていると、最寄り駅に着く。


 最寄りから学校まで約10分。





 街路樹は青々と茂り、日陰を作る。その日陰を借り夏の太陽から隠れる。

 

 その日陰の道を抜けると校門が見えて来た。そこに一人分の人影がある。


「遅いよ~」


 ……回れ右して帰りたい。



 声の主は我が校の生徒会長、双葉アオイだ。



 整っているのだがどこか可憐と思わせる顔立ち、透き通った肌に流れるような黒髪、。おまけに、背が高く胸に二つの大きな丘を持つ一般的に美人と呼ばれる人だ。

 多分クラスの男子が何か頼み事をしたら10人中10人が、断らないだろうくらいの美人だ。


 他の人が面倒くさがってやらない事も積極的に引き受ける姿勢や、その都度発揮されるリーダーシップも兼ね備えるため生徒や先生からの好感度も高い。

だがその本性は……


「助かったわ~。ありがとうね」

「多少至らなかった部分があるので修正お願いしますね」

「しょうがない。生徒会長の私が書記の仕事を手伝っやろうじゃないか!」

「これ、本来なら会長の仕事なんですけどね……」

 自然と口からため息が溢れた。


 そう、かなりの面倒くさがりなのだ。


 ただ、自分のしたい事や、やりたい事目標などは別でその都度それを目指して全力を尽くす。


 だから彼女、双葉アオイは生徒会長として生徒会に在籍している。


 理由は簡単。


 成績のため、

 内申書のため、

 先生の印象のため。


 そのためだけに面倒ごとを引き受け、リーダーシップを発揮し、皆に好印象を与え続けた。


 明るく、打算的で、利己的で、狡猾で、面倒くさがり。

俺からしてみれば、かなり残念な美人なのだ。


 ………美人なのは認めよう。美人なのは……


「手伝ってくれてもいいんだよ~」

「自分でやってください」

 思わず素が出てしまう。


「アレェ~敬語忘れてないぃ~」

とにやにやとその端正な顔に邪悪な笑みを浮かべる。


「……チッ」

 またもや、口から本音が出てしまった。


 どうして、こんなクズみたいな人のコマになっているかと言うと……。


「もう手伝わないわよ、アレ」

 一瞬笑みを消し去り冷たい声で提案してくる。


 形勢は圧倒的に不利。こういう時は無理に抗わない方がいい。

「……すいませんでした」


 渋々とも拗ねたとも取れる、全くもって白々しい態度で謝る。



 少しは誠意を見してくれよ。と彼女はボヤくが、そんなのはお構いなしだ。



「 …OS の修正は終わったから、あとは機体本体の整備だけよ。本体の詳しいことはあとで弟に聞いてね~」

「いつもすいませんね」

「まぁ自分の夢の為だからね~。それに後輩が警察組織の人物なんて滅多にないしね。むしろありがたいよ~」


 コロコロと笑い出しながら、答える。


「さて、時間もない事だし、練習しますか!」


 そう言って体育館に向かう。


 この会長にはまだまだ振り回されるらしい。


時間が無いです

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