一話
慣れてないのでそれなりに拙いです
久しぶりに見た悪夢は、いつものように、まるで現実のようなものだった…。
そんならしくもない感傷をしていると、アラームと蝉の声が、耳を打つ。
鳴り続けるアラームを止めるために体を起こす。どうやら、原稿の作成途中に寝てしまったらしく手元にはプリントとシャーペン、消しゴムなど筆記用具が散乱している。
そんなプリントの中、存在感のある一枚目線があった気がした。
そのプリントにはこう書いてあった。
始業式[司会 :夢永コウ]と
「あっ……やべぇ…」
夢でのことなんか一瞬で頭の片隅に追いやり、机の上を見渡す。そこには書きかけのスピーチと、クシャクシャになった司会の原稿の残骸。
「…やらかした‼︎」
スピーチ自体は八割完成している。だが、司会の原稿が汗で濡れ、ところどころ破れている。
夢永コウ17歳 高校2年生 今月最大のピンチである‼︎
……ここ三日間いろいろあり、根を詰めていたのが間違いだったらしい。
睡眠欲と倦怠感、おまけに軽い頭痛が、さらに気分を悪くする。
原因は昨日の夜にある。
本来ならば、体調を考えて、早く寝る予定だったのが、そんな時に最悪のタイミングで会長である、双葉先輩から火急の用事と電話が来たのである。
内容は大方こんな感じだった。
「課題終わらなくてスピーチ考える暇ないから代わりに作っといて~。あっ、ついでに明日の始業式の司会よろしく‼︎」
とかふざけた内容の電話をしてきたのだ。、
そのため、急遽スピーチを考え始めるはめになったのだ。
自分でやれ‼︎ と訴えれば。
「じゃあいいもん!やってこないだけだもん」
とか言ってやらない宣言をしてくる。
そして尻拭いはだれがやるのかというと…
仲の比較的良い副会長の私がやる。という、理不尽極まりない暗黙の了解が生徒会内には漂っている。
そして実際にやらされている…。
まったくもって貧乏クジを引いた感じなのだ。
受験で忙しいとはいえ、放り投げてくる3年生にはこまったものである。
ちなみに同学年である2年生も手伝ってくれない。
そんなことを振り返り、延々と頭の中で愚痴をこぼしながら、制服を準備する。
課題と今日必要な教科書と出来損ないのスピーチ原稿をカバンに突っ込み 制服とともに、既に誰かがいるリビングに駆け下りていく。
「おはよう母さん!パン用意しといて!」
「おはよう、コウ。なに急いでるのさ?」
親の心配する声を背中で聞き流し、顔をあらいながら返事をする。今は1分1秒が惜しい。
「また会長の尻拭い!」
「またかい?…」
他愛もない会話を挟みながらも身体は動かす。
なかなか直らない寝癖と戦い。
少し伸びていた無精髭をそり。
歯を磨く。
昨日うちにアイロンをかけていたYシャツに腕を通し。
クリーニングに出していた制服を履く。
そして母親が準備してくれた。パンをカバンに入れ。
下駄箱に入れてある履き慣れたローファーを探しにいく。
玄関でローファーを履いてると後ろから母親の声が飛んでくる。
「そういえばコウ、あんた魔法課のどの部隊だっけ?」
「なんで急にそんなこと聞くのさ?」
「あんたの部隊のとこまで書類を出さなくちゃいけないからねぇ。この半年の間、あっちのことなにも話さないから忘れてしまったのだよ。」
「…傷部隊」
「…なにその名前?」
「俺らみたいな【キズアト】を集めた部隊だから傷部隊なんだよ。話はそれだけ?」
「それだけだよ。時間、大丈夫?」
そう言われてスマホで時間を確認する。
……駅まで走ればまだ学校での時間は作れる。
「いってきます!」
そういって家をでた。
がんばります