第二話 ソードクローベア
狼が現れたということはここはやつらの縄張りなのだろう。一匹でさえ不意打ちで何とか倒したのだ、二匹三匹と来られたらおしまいだ、ということで少し移動することにした。移動したさきで魔物に遭遇するかもしれないが、死体は処分したとはいえおそらくあの狼の匂いが残っているだろうここに残るよりはましだろう。
とはいえ半分しか残っていない腕では這うことすらできない、ということでスライムに腹の下に入ってもらい体を浮かせながら地面に腕を着けて体を前に運ぶのである。かなりゆっくりとした移動だがなに、疲れを知らないアンデッドの身体だ、時間をかければそれなりの距離を移動できるだろう。
えっちらおっちら茂みの中を進んでいると少し開けた場所にでた。人が使う道なのだろう、その証拠に剣を腰に下げた冒険者らしき男が歩いてきた。後ろに下がり体を完全に茂みに隠す。アンデッドは人は襲うは、疫病をばらまくはで嫌われているのだ。見つかったらすぐさま胸のコアを破壊されて死体に戻る羽目になるだろう。
息をひそめていると茂みの中から熊が現れた。こんな人の匂いが強い所に出てきたのを疑問に思っていると熊は立ち上がり、そしてその爪が急激に伸び始める。ショートソード並の長さになった爪を見て疑問が氷解する。魔獣は長く生きるかして魔力を蓄えると魔法が使えるようになるのだ。そうなると狂暴性が増して人を襲うようになる。あの熊もその類なのだろう、私が生前、森に入る前にはその手の噂は聞かなかったから、つい最近魔法を習得したのだろう。
熊が男に向かって切りかかる。男も剣を抜いて応戦しようとするも一撃目で剣を持った腕がちぎれて飛び、二撃目で胸に大きな傷を負い倒れた。
熊が男の死体を引きずって姿を消してから茂みから出る。血抜きが功をそうしたのか気づかずに済んだようだ。