エンセーラム壁新聞(11月23日)
『エンセーラム魔法大学、入学枠増大』
11月23日 著:シオン
昨日、エンセーラム魔法大学より入学希望者の増大により、入学者枠を増やすという発表があった。
昨年度の入試倍率は12.47倍。この数値を受けてレオンハルト・エンセーラム王は入学枠の増加をできないかと打診されていました。これを受け入れてコルトー学長が学舎の増築、魔法大学講師の増員を行って受け入れが可能となった。
エンセーラム魔法大学は受験希望締切の日まで国内外にて告知を行い、入試倍率8.0倍以下を目指す方針。
しかし近隣住民は学生の増加による治安悪化や、魔法事故を懸念して歓迎ムードとはなっていない。ユーリエ島にて牧畜を営むY氏は「元気があるのはいいが、度重なる不祥事への誠意ある対応を第一にしてもらいたい」と話す。
エンセーラム魔法大学と近隣住民の関係性についてコルトー学長は「相互理解に努めるとともに、安心で安全な大学運営を目指していきたい」と話している。
『ベニータの店、改装』
11月23日 著:テーム
トト島玄関港の名物店であるベニータの店が明後日、改装により、一時閉店をする。
ベニータの店は、店主であるベニータ氏が経営する酒場であり、エンセーラム王国において最も古い歴史を持つ店舗でもある。大衆向けの酒を扱いながら、メニュー単価が高いということから敬遠されている人も多いだろうが特筆すべきは値段不相応の満足度である。常連客は「ベニータの店はぼったくりだけど胸の中にあるものを全部吐き出してスッキリして、明日からの活力を得られる。それに何かと事情通もたくさん集まって面白い話がたくさん聞けるのも楽しい」と話す。
改装理由は先日の台風により受けた被害箇所の修復であるが、店主のベニータ氏は「折角、改修をするのであれば客席や厨房、倉庫の増築をしたい。改装後、またたくさんのお客を迎え入れ、変わらずにアットホームな雰囲気の酒場として必ず戻ってくる」と意気込みを語った。
改装は約20日かかる見通し。営業再開後に足を運んでみるのはいかがだろうか。
『ベリル島の原生林散策ツアー』
11月23日 著:テーム
12月より、政府の主催によってベリル島の原生林散策ツアーが行われる。通常、立入りが制限されているベリル島の原生林を散策するというイベントであり、ガイド2名の引率で原生林に入ることができる。政府担当者は「普段は立ち入ることのできない原生林を散策することで、非日常を体験して楽しんでもらえれば嬉しい。また、ユーリエ学校の卒業試験の他に立ち入りが許されていないため、移住者や、ユーリエ学校に入れなかった方にも体験の機会を、という国王陛下のはからいである。参加者に怪我がないよう安全に配慮をしたい」と話す。
ツアーは1日に2回行われる予定であり、氏名と年齢を自分で書くことができる15歳以上の男女のみが応募できる。15歳以下は必ず、前述の条件を満たすことができる大人の付き添いが必要だ。応募はエンセーラム王宮総合受付窓口まで。応募者が多い場合は抽選で決められる。
これを機に普段は立ち入ることのできないベリル島の原生林を散策してはいかがだろうか。
『トウキビ島に新たな学び舎』
11月23日 著:リリヤ
今度の春、トウキビ島に新たな学校ができる。エンセーラム王国の人口増加によってユーリエ学校だけでは子どもの数が多すぎるため、トウキビ島に学校を建てることが決まった。これにより政府はユーリエ学校とトウキビ島に新たに建てられる学校を初等教育機関と定めた。初等教育機関では6歳から9歳までの子どもに、初等教育要綱を基にして定めた学問を修めさせることを目的とすると発表された。
ユーリエ学校の入学者の数は年々、増加傾向にあり教育現場では人手不足が叫ばれ、そのため生徒の質の低下を問題視する声も上がっていた。初等教育機関に振り分けられる年間予算は金貨換算約26万枚。トウキビ島の初等教育学校を新設することでさらなる増大が予想されているが、政府担当者は「教育は我が国が注力すべき重要な問題である。国税を圧迫しても仕方がない」と発言をしている。
尚、トウキビ島に建設予定の初等教育学校の名称は公募によって決定される。公募期間や、方法は未定である。
『私的偉人伝』 第4回
11月23日 著:レオンハルト・エンセーラム
私的偉人伝と称した連続コラムだが、そろそろネタ切れの嫌いがある。できるだけマイノリティーで、みみっちいやつを挙げ連ねようというひねくれた魂胆で書いてきたが、4回目にしてもう思い浮かばなくなってしまっているので、真面目に今回は書こうと思う。
「俺の生き甲斐は殺し合いだけなんだ」と言った男に出遭ったことがある。
火天フェオドールという、かつてディオニスメリア王国で幅を利かせていた大悪党の言葉だ。この男は人殺しを遊びのように考える人格破綻者の盗賊だった。異名がつくほどに怖れられ、そして奴隷商だった。
俺の国では奴隷を一切、認めない。よその国から奴隷を引き連れてきた者は、船を降りた瞬間に拘束する。そして奴隷にされていた者を保護し、人としてこの国で暮らせるように支援する。どうしてこんなことをしているかと言えば、この火天フェオドールこそが元凶と言えよう。
若いころに火天フェオドールと出会い、揉めた。そして時を同じくして出会った少女が、火天フェオドールに殺害された経験がある。他人の人生を害し、縛りつけ、尊厳を踏みにじる、およそ道徳的価値観を唾棄すべき奴隷制度というものを憎悪する原点ともなった。
少女は普通の村娘だったが奴隷商によって村ごと焼かれ、値札をつけられた。生理的嫌悪から逃走したが、奴隷商に再び捕まってしまった。そして彼女は絶望の中で炎に焼かれてとうとう死んでしまった。
火天フェオドールは決して偉人などではない、極悪の大罪人であるが、この男がいなければここまで徹底的に奴隷や、奴隷制度というものを憎悪することもなかっただろう。よってこの連続コラムに挙げたものである。
奴隷商にはいかなる私刑を与えても許す。
また、奴隷にされて人生を失ってしまった者でもこの国は受け入れて必ず支援する。
これはエンセーラム国王としての厳命である。
以上。連続コラム『私的偉人伝』。
今日は少しシリアス過ぎたので、明日は幼少時に心の支えとなった少女との思い出を綴ろうと思う。彼女の名はクララ。とても素敵な尻尾の持ち主である。乞うご期待!
※連続コラム『私的偉人伝』の第5回は掲載中止となります。
国王陛下のしたためた原稿に修正をすることが憚られたため、この場をお借りして陳謝いたします。――編集長シオン
『国防軍入隊志願者募集のおしらせ』
11月23日 著:エンセーラム国防軍
エンセーラム国防軍では入隊志願者を募っています。
体を動かすことが好き、得意な者。
人の役に立ちたい者。
大切な人を守りたい者。
大いなる志を持つ若者を、門戸を広げて待っています。詳しくはトウキビ島のエンセーラム国防軍まで。
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「――って、明日の掲載分、なしかよっ!?」
「あたしがストップをかけた。あらかじめシオンが、内容に疑問を感じて持ってきてくれたから」
「何で!?」
「国民のほとんどが目にするものに、延々と過去の獣人族の、それも小さい女の子の尻尾について書きまくられてるのは狂気を通り越してる」
「いいや、絶対に隠れもふリストががっかりした!」
「例えば? うちの子の他に」
「え? ……えーと、み、ミシェーラ……とか」
「1人だけなら問題ない」
「大ありだ! シオン、シオンはどこだーっ!?」




