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ノーリグレット! 〜 after that 〜  作者: 田中一義
12 エンセーラム壁新聞より
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エンセーラム壁新聞(9月3日)

『百国会議、開催される』

9月3日 著:シオン

 レオンハルト・エンセーラム王がジョアバナーサにて開催される百国会議にご出席をなされた。王はレストに跨り、ジョアバナーサへ飛行移動の後に百国会議へ出席をされた。会議の席で王は「エンセーラムは小さな国土であるが、いかなる国よりも豊かで幸福な国となっていくことが約束をされている。マレドミナ商会を通じた貿易事業ではラサグード大陸との取引を開始し、いずれはアイフィゲーラ大陸の国々とも商売を通じた様々な形で交流を持っていくつもりである」と述べられました。また王は魔法造船においても「どこの海でも制覇する良質な船を世界中に供給し、魔法造船分野においても存在感を示していきたい」と意欲を語られました。

 百国会議理事国であり、同開催国でもあるジョアバナーサのヴァネッサ女王はレオンハルト王を晩餐会に招きました。晩餐会にはジョアバナーサとの交換留学生であるキャス・エンセーラムとメーシャ・コルトーも同席し、両国の交換留学制度における今後の構想について話し合われたということです。キャス・エンセーラムは交換留学を振り返り、「自分の知らない世界がたくさんあることを知りました。ジョアバナーサの文化や風土にも興味深い点は多々あり、今後の人生におけるかけがえのない糧を得ることができました」と語りました。

 またヴァネッサ女王は、近い内にエンセーラム王国を訪問したいとも語り、王は快く頷かれました。


『エンセーラム魔法大学、小火騒ぎが大火事に』

9月3日 著:リリヤ

 昨日、昼にエンセーラム魔法大学で火事が起きているとエンセーラム国防軍に通報がありました。第2研究棟2階より出火しており、国防軍の到着時にはすでに居合わせた学生達によって消火作業が行われていました。しかし魔法大学に籍を置くD氏が風魔法によって鎮火を試みようとした結果、さらに火は燃え広がり第3魔法棟に延焼しました。D氏は「わざとじゃないよ」と証言しましたが、居合わせた同魔法大学学生のC氏によると「あれはD氏が悪い。水をかけられたら困る私物を守ろうとしてわざと風魔法を使った結果、延焼が広がってしまった」とも証言をしています。エンセーラム国防軍はD氏に事情聴取をしましたが、私物を守ろうとしたという証拠はなく罪に問われなかったとのことです。

 火事は発生からおよそ2時間で消し止められました。死者はいませんでしたが、数名が軽い火傷を負ったとのことです。エンセーラム魔法大学学長のコルトー氏は「実習中の事故防止を徹底していきたい」と語っています。


『珍しい三つ子、出産』

9月3日 著:テーム

 トウキビ島に住むレンダーム夫妻が非常に珍しい三つ子の赤ちゃんを授かって出産をしました。父であるマルック・レンダーム氏は獣人です。母であるヘルヴィ・レンダーム氏は魔人族です。そして三つ子の赤ちゃんはそれぞれ獣人族、魔人族、そして人間族の子どもとして生まれました。通常、人種が違う者同士の子どもは父母のどちらかの種族で生まれることが定説とされていますが、三種族異なる赤ちゃんとして生まれてくることは考えられないこととされています。マルック氏は祖母が人間族であったため、その血で人間族の赤ちゃんが生まれたのかも知れないと語りました。


『風は吹いているか』 第11回

9月3日 著:マルタ・カハール

 これで11回目の連続コラムですね。最初は読者の皆様がどう受け取るか不安でしたが、好意的な感想を教えてくださる方が多いので嬉しくなっています。でも残すところあと4回ですね。

 今回はエンセーラム王国へ来る前にわたしが滞在をしていた、カスタルディ王国でのお話を綴ろうと思います。カスタルディ王国の聖竜祭という大きな催しを通じて、かの国の文化について紹介をしたいと思います。

 カスタルディ王国は聖竜信仰というクセリニア西部で見られる宗教を基盤とした国です。現国王のロベルタ・カスタルディ陛下はドラグナーと呼ばれる、ワイバーンに跨って空で戦う戦士でもあります。ドラグナーはワイバーンを幼体のころから調教し、家族同然か、それ以上に固い絆で結ばれます。ロベルタ陛下はワイバーン8頭を配下にしており、これは歴代でも最多であります。そもそもドラグナーは1人につき、1頭のワイバーンであるのですが、例外として50年に1度開催される聖竜祭という催しでドラグナー同士が研鑽した技術の全てを発揮した模擬戦をします。優勝者はその先50年に及ぶ名誉と栄光、そして新たなワイバーンとともにカスタルディ王国特有の特別な権利を有することができます。その権利とは、当代の王の治世が暗愚なものであると民が訴えた時に王を討ち、新たに玉座につくことができるというものです。

 元々、聖竜祭はカスタルディ王国の初代国王が聖竜クリスタロフのために空を踊り、舞い飛んだという伝説になぞらえて始まったと言われています。それが時を経るにつれ、ドラグナーの競い合いになり、国を守るための一種の防御機構を生み出すという儀式に発展したのです。ちなみに現カスタルディ国王のロベルタ陛下が玉座に就いたのは、前王の治世を悪と断じて倒したと言われています。現在この、王を討ち、新たな王となる権利を有しているのはロベルタ陛下の一人息子のユベール・カスタルディ王子です。よくエンセーラム王国にもふらりと遊びにいらっしゃっているので、知っている方は多いかも知れませんが、由緒正しきカスタルディ王国の王子様なのです。

 聖竜祭は50年に1度だけ行われるとても重要な儀式です。

 そしてカスタルディ王国を象徴する祭りであるのです。

 ドラグナーという誇り高き、人民の憧れでもある戦士の国。

 竜を祀り、竜に感謝し、誇り高く生きる国です。そしてこの国の主を人々は天空王と畏怖を込めて呼びます。

 連続コラム『風は吹いているか』、今日はここまでです。カスタルディ王国はとても良い国ですので、訪問の機会があれば満喫してみてくださいね。


『今日のレシピ:アオマグロの幽庵焼き』

9月3日 著:エノラ・エンセーラム

 アオマグロはエンセーラム近海で獲れる魚。幽庵焼きはこの切り身を使う。厚みがある場合、切れ目を入れておいた方が火の通りが良い。

 醤油、砂糖、みりんを同じ比率で合わせた調味液を用意し、魚の切り身にこれを浸す。その上へ輪切りにしたカボスを乗せておく。漬け時間は30分程度だが、魚の脂が多ければそれだけ多く漬けた方が良い。

 身の表面が焦げないように火を調整して焼く。この際、調味液が滴らないようによく水気を切っておくこと。ある程度、火が通ってきたら刷毛を使って切り身に何度か塗りつけて良い色に仕上げる。

 焼きあがったら盛りつけて完成。

 幽庵焼きに使う調味液は、幽庵地という。幽庵焼きはアオマグロだけではなく、ある程度どのような魚にも合う。また魚のみならず、肉などにも応用は利くので色々な食材で試して良い。

 柑橘のさっぱりとした味わいを楽しめれば、あなたも今日から幽庵マスター。

 目指せ、幽庵マスター。


 ——————————


「うぅぅ、字ぃ読むの疲れたあー……。でもマルタ、すごいね。俺なんてすぐに書くことなくなっちゃったのに、11回目でもまだこんな内容なんて」

「えへへ……。リュカさんに褒めてもらいたくって」

「うん、すごい。偉い。……今度また、シオンが俺のとこにお願いしにきたら、マルタに頼んでいい?」

「それは、ちょっと……」


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