3 攻略対象キャラとゆっくりティータイム
はぁ……。冒頭から溜息すみません。私のこの憂鬱は、生徒会室に行かなきゃ行けない所から来ています。
ピーンポーンパーンポーン
「1年B組の雪村桃さん。生徒会長がお待ちです。HRが終わりましたら生徒会室にお行き下さい。」
友達と帰りのHR前に楽しく、「今度どっか行こうよ。」「いいね!」とキャッキャッしてた時にそんな恐ろしい放送が流れた。
(立葵椿……。貴様、私の高校デビューを邪魔する気か!)
生徒会長こと立葵椿。今回私を呼び出したいけ好かない男であり、私の危険人物(ハーレム要員)が1人だ。
ちなみに実際の所、皆どうなんだろうと思って皆に聞いてみた。
「え、生徒会長?うん。凄くかっこいいよねー!憧れちゃう。素敵!」
という回答が全員一致で出た。
絶対お前ら、ゲーム会社かなんかに洗脳されてるだろ。恐ろしい…
のーんびり、ゆっーくーり時間をじっくりかけて、生徒会室に行った。嫌がらせである。
「すみません。1ーBの雪村ですけど…」
とノックするが誰も出ない。何回か、ノックする。むしろ、中に誰かいる様子もない。なんだ、嫌がらせ返しか?よし、開けたるわ!せーの…
「あぁ、すまない。
しばし、他の委員会の様子を見に行っていた。待たせた様だな。君は、雪村桃だろ?」
とても古風な人が出て来た。生徒会役員の1人だろう。なんか、「こやつ出来るな!」って感じのインテリオーラが漂っている。…眼鏡が凄まじく似合う。
先輩は私を部屋に案内し、尚且つ今、お茶を淹れてくれてる。
「俺の名前は、竜胆楓。生徒会で会計の仕事をしている。……うちの立葵が世話になる様だな、よろしく頼む。」
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします!」
竜胆楓、だと⁈
私の危険人物(ハーレム要員)の1人じゃないか…確かに乙女ゲームの攻略対象キャラらしいキラキラオーラが出ている。
確か、先輩のルートは……なんだっけ?確か…秘密。そうだ、竜胆楓には秘密があったはず!それをヒロインがうっかり知ったことによって秘密を共有。かつ、えーと、なんかするんだけどなー…
んーと、えーと、……ん?なんだこの匂いは?
「ごぼう…?」
「!……匂いでわかったか…君は、日本茶をよく飲むのか?」
どうやら、正解だったらしい。
私にごぼう茶を出して来た。良い匂いだなー…やっぱりいれたては良いねぇ。
「はい。日本茶は好きです。
よく飲むのは、緑茶や麦茶それにウーロン茶ですかね…」
…先輩の顔がだんだん綻んでいる。先程までのクールな顔から優しそうな顔に一変している。
「君も日本茶派か…。
久しぶりだ、日本茶派の人間を見るのは…この学校の生徒のほとんどが紅茶派なんだ…。」
先輩は悲しそうに語った。
なるほど。確かに、日本だと茶葉や野菜でお茶を作る。この学校では、野菜よりも花の栽培の方が活発だ。
この学校には、花が多く咲いているから紅茶に使う茶葉は選び放題だろう。……今度飲んでみたいな。おっと、いけね。今は、日本茶の話だ。
「……って、あ!しまった‼︎
つい本音が……」
先輩はいきなり大声を出した。
なんだろう、凄く焦ってる。…特に変な発言をしてた訳でも無いが…
「すまない、今のセリフは忘れてくれないか。」
えーと、どのセリフだ?
「日本茶派である、というセリフなんだ…。」
「え、何でですか?」
「花を大事にしているこの学園で、紅茶派を否定する様な発言…
生徒会役員失格だ…。」
…………。なんじゃそら。
「先輩、大丈夫ですよ。
私だって、日本茶好きなんですよ?それじゃあ、私も紅茶派否定したみたいじゃないですか。」
「いや、それは違う!…違うが、その、しかし…」
なんて、真面目な人だろう。いや、これはもう生真面目か…。
「先輩、ごぼうにも花が咲くでしょ?花言葉だってある…。
まぁ、意味は「私をいじめないで」っ微妙ですけど。
そう考えたらどうですか?
ごぼうを野菜、と考えるだけでなく花と考えるんです。ほら、先輩は生徒会役員失格なんかじゃない。」
先輩は悩んでいる様だ。
これなら後一押しだな…
「なんなら、私誰にも言いませんよ?秘密にしときます!」
自分で言ってから気がつく。
あ、これゲームと同じ展開だ…
なるほど。そういえば、先輩の秘密は日本茶派ってことだった。ゲームやってた時も「アホくさ!」って思ったなー…
先輩は納得したようで
「あぁ、秘密にしてくれ。」
と笑った。流石はイケメン、今の笑顔にはグッときました。まぁ、茂兄いるから恋には落ちないけど。
それから私は、楓先輩から色々な日本茶の話を聞いた。よく日本茶を飲む私には面白い話ばかりだ。
……っと、突然ドアがばんっと開き、「仕事しろや!」と生徒会長の声が響いた。あぁ、そういえば私
生徒会長に呼ばれてここに来たんだった。