ステータス カード
俺たちは城を出て街へ向かう大通りを歩いている。
なかなか疲れた・・・。説明が長いのと、国王たちの威厳というか、威圧というか、妙に強いカリスマ性に気疲れしてしまった。
あとは突拍子もない発言もだろう。
少し休みたいなと思っていたら丁度いい所にベンチがあった。
城は小高い丘の上にあり、丘を下った平地に街が造られている。
そのため、城へ向かう通りの途中に展望台のように広くなっている所があり、そこにベンチが置いてある。
「ちょっと休もうか?」
「そうね・・・ ちょっと疲れたわね」
「うん」
俺の提案に、サヤとルークも同意してくれた。
やっぱり同じように疲れたようだ。
フー・・ 三人並んでベンチに座り、一息つく。
「適正検査は大変だったな・・・」
「そうね・・・」
「うん・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
!? イカン イカン このままだと無駄に時間を使いそうだ。
「よし! 今のうちにステータスカードを見ておこう!」
「そうね!」
「そうだね!」
俺がちょっと気合を入れた声で提案をすると、二人にも伝わったのか、少し元気な返事が返ってきた。
『ステータス オープン』
スッ・・ 俺の手にカードが現れた。
やっぱりちょっと楽しい。
三人がカードを出し、確認している。
名前:ラルフ
性別:男
年齢:15
職業:勇者Lv1
総合能力:B
スキル:剣術Lv7(剣閃 重撃 破邪剣衝)
「おお! 勇者になってる!」
「ほんと! 見せて 見せて」
「兄ちゃん やったね!」
俺が驚いて声を上げると、二人がカードを覗き込んでくる。
「ちなみに『勇者Lv1』ってどれぐらいなんだろ?」
「兄ちゃん 説明書に書いてあったよ。えっとね・・・」
Lv1:兵士
Lv2:上級兵士
Lv3:兵士長
Lv4:騎士
Lv5:上級騎士
Lv6:騎士団長
Lv7:親衛隊
Lv8:親衛隊長
Lv9:将軍
Lv10:真勇者
「って 書いてあるよ」
「兵士がLv1って事は、受付の人たちや、城で部屋まで案内してくれた人たちも『勇者』か・・・。まるで、勇者のバーゲンセールだな・・・ なんてな」
ルークの説明に、俺は冗談を交えて、呆れた顔で言った。
「本当にそうね。勇者なのに世界でみたら価値は低そうね・・・」
サヤも同意見のようだ。
「それよりも、二人のカードも見せてくれよ」
「いいわよ」
「いいよ」
二人が返事をしてカードを差し出してきた。
名前:サヤ
性別:女
年齢:16
職業:治癒術士
総合能力:A-
スキル:回復魔法Lv7 解毒魔法Lv6 補助魔法Lv6 破邪魔法Lv5 蘇生魔法Lv3 火魔法Lv1 水魔法Lv1 風魔法Lv1
名前:ルーク
性別:男
年齢:13
職業:魔法使い
総合能力:A
スキル:火魔法Lv7 水魔法Lv7 風魔法Lv7 土魔法Lv7 阻害魔法Lv5 転移魔法 召喚
「ふ ふたり共、高スペックだな・・・。スキルもいっぱいあるし」
「そう? 私はお母さんに教えてもらってたから、自分がどれぐらのレベルか分かってなかったし。こうやって見ると結構レベル高かったのね」
「僕もおじいちゃんに教えてもらってたし、割と簡単にできたから、そんなにスゴイと思わなかったよ」
二人共、気にしてないようだ。
あれ? 俺って三人の中で一番弱くないか? 勇者なのに総合能力が一番低いってヤバイんじゃ?
「それよりも、ラルフはいつの間に『剣閃』が使えるようになったの? お父さんが言ってたけど、達人の剣士が長年修行して使えるような技って、昔に言ってたわよ? もう少しラルフが大きくなったら教えてあげよう。って」
「え!? 昔にヤシャさんが使ってたのを見て練習したんだけど・・・?」
俺に剣を教えてくれたのは、サヤの父ヤシャさんと近所に住むサウロさんだ。
たしか、7才ぐらいの時に森で遊んでいたら、モンスターが現れて危なかった事があった。ヤシャさんがすぐに来てくれて、モンスターから離れた所で剣を振ったら、モンスターが血を出して倒れていた。
その後に、俺は剣を習いに行ったのだ。
「え!? それって7才ぐらいでモンスターに襲われた時?」
「そう! それ!」
サヤも覚えていたようだ。
「あ-・・ その時の技は魔力を斬撃に変えたって言ってたわよ。『剣閃』とは方法が違うって・・・。人間には難しい技だから、ラルフには『剣閃』を教えるって言ってたの」
「え!? なんとなくこうかな?って、やってたらできたけど」
衝撃の事実が発覚した。俺の大きな勘違いだった。
「え!? そうなの?」
「そう・・・。」
「まあ、兄ちゃんは剣の才能だけはスゴイからね」
「ルーク・・・。『だけ』 は余計だ」
ルークが驚くサヤにフォローを入れるが、一言余分だった。