適正検査
城に入ると、大きな部屋に案内された。
部屋の中にはイスが並べられ何人かがすでに座っていた。
更に部屋の奥の一段高い所には、豪華な椅子が3つ置いてあった。
「勇者試験のパーティで纏まって座ってください」
部屋を見ていると兵士の一人が案内してくれた。
俺たちも三人並んでイスに座る。
一列前にさっきの仮面の人物が座っている。
仲間と何か話しているようだ。
後ろから見ると、長い金髪を束ねているのがわかる。
「あいつ、男?女?」
左に座っている小声でルークに聞いてみる。
「さあ? どうだろうね」
あまり関心がなさそうに答えた。
「わたしは、男だと思うよ」
右からサヤが小声で話しかけてきた。どうやら聞こえていたようだ。
「だって、どこかの国の王子様が身分を隠して試験に来ているのかも!?」
ニコニコしながらうれしそうに話している。
どこの本の物語だよ! なんて思っていると
「ただいまより、勇者試験を開始します」
前方の段の下でちょっと豪華な装備をした兵士が言った。
「国王様、天使長様、魔王様が来られます。全員! 礼!」
兵士が号令をかけると、全員が立ち上がり頭を下げた。
俺は一瞬戸惑って、周りを見たら自分だけ遅れていた。
ヤバッ! サヤの方を見て同じように、右手を胸に当ててお辞儀をする。
サヤの目が「なにしてるのよ!」って言っていた。
俺は「ゴメン」と目で返事をしておいた。
前の方に凄い存在感ある気配を持った人が入ってきた。
「皆の者、頭を上げ座ってくれ」
威厳のある声が響き全員が頭を上げ、中央の椅子に座る声の主を見てから座る。
王冠を被っているので国王なのだろう。
左側の椅子には、翼が生えた人が座っている。天使だ、初めて見た。
右側の椅子には、角が生えた人だ。魔王なのだろう。角が刺さると痛そうだ。
まあ、さすがに魔王は頭突きはしないだろうがな。
「では、試験の前に適正検査をさせてもらおう。これに合格できなければ今回は失格となる。次回に向けて鍛錬を行ってくれ」
国王が威厳のある声で言うと魔王が一歩前へ出る。
「私が適正を確認します。難しい事は無いのでリラックスしてもらいましょう」
そう言って丁寧な言葉で笑顔を浮かべ、俺の方を見た気がした。
こっちを見た瞬間に全身に鳥肌が立つような寒気を感じる。
強烈なプレッシャーが浴びせられ気を抜くと意識が飛びそうになる。
それは数分間行われたかと思ったが、実際には1秒程の一瞬の出来事だったようだ。
フー っと息を吐き周囲を見渡すと、意識が無くなり何人かが崩れ落ちていた。
耐えた人達も息を吐き、冷や汗をぬぐっていた。
やっぱり相当キツかったようだ。
隣にいたサヤとルークも一息ついているので大丈夫だろう。
前の仮面の人物もちゃんと座っているので耐えたようだ。
「これで、適正検査は終わりです。勇者を目指す人の意識が残っていれば合格です。意識の無い人はそのままでいいですよ、しばらくは起きれないですから」
そう言って魔王は全体を見渡し、満足した笑みを浮かべていた。
「それでは、勇者候補の皆さん、左手をお上げになってくださる?」
次は天使長が立ち上がりそう言った。
俺たちは言われた通りに左手を上げる。
天使長が左手を上げて光ったと思うと、俺の左手に腕輪があった。
「もう手を下しても結構ですわ。その腕輪はパーティ編成をする物なので、詳しい事は説明書を確認してくださいね」
ニコニコしながら話始める。
「そ れ と、本登録が終わったので後でステータスカードを見ておいてね。説明書も入っていますから」
と説明が続く。