受付
この世界は幾度となく魔族の侵略を受けてきた。
が、50年程前に変革の時が訪れた。
勇者と魔王が戦う事無く、話合いにより共存する事を約束し、国王により世界中に通達された。
これにより、はるか昔から続く人間と魔族による争いに終止符が打たれる事となった。
そして、勇者は役目は終えたと人知れず姿を消した・・・。
だが、人間と魔族の争いは無くなったが、完全に平和というわけではない。
人々は魔獣と呼ばれるモンスターや荒くれ者などの脅威にさらされている。
魔王は勇者という存在が希望となるため必要と国王に進言した。
国王と魔王は話合ったが、なかなか決まらなかった。
なぜなら勇者とは、天使が選定し導く者であるため、勝手に決めても勇者では無いのではないか? という議論になっていた。
ある日、話合いの最中に天使が現れ協力を約束してくれた。
そして、20年前から、天使 人間 魔族による勇者試験が始まった。
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[王都 アルデキア]
『第5回 勇者試験』と書かれた横断幕や旗がなびく街並み、活気に溢れ屋台や商店では人が行列を作っていた。
通りの真ん中に目を輝かせる少年が一人。
「すげ~! 人がいっぱいだ」
「俺の村の何倍だろ~」
周りをキョロキョロと眺めていた。
「おーい」
「・・・」
「おーい ラルフ!」
「・・・」
「おーい! ラルフ!!!」
「わっ! なんだよ! サヤ」
「なんだよ! じゃないわよ!」
「何回も呼んでるのに!」
「早く行かないと、受付が終わっちゃうわよ!」
と頬を膨らませながら怒っている少女がいた。
「わかったよ! ちょっと珍しいから見てただけだよ! なあ、ルークも面白そうだろ?」
「・・・兄ちゃん、キョロキョロしてると迷子になるよ」
と魔法使い風の少年がさらっとひどい事を言いながら、我関せずという顔をしていた。
「そ そうか、ごめん・・・」
とりあえず、謝っておいた。
「まぁいいわ、それより早く試験の受付をしましょ!」
と言ってサヤが先頭で城の方へ歩き出す、それに続く俺とルーク。
城に近づくにつれて、冒険者や戦士や盗賊?の格好をした人が増えてくる。
今回の試験を受ける人やそのパーティだろう。
俺たちみたいな、いかにも新米といった人も何人か見かけるが、さすがに緊張している人が多いようだ。
城の入口に来ると様々な職業の人が列を作って並んでいた。
後ろの方では、旗をもった兵士が叫んでいた。
「最後尾はこちらです! 受付の終了時間が迫ってます!」
「ヤバイ! 早くしないと!」
「だから言ったのに」
「まあ、兄ちゃんだからね」
俺が言うと、ヤレヤレって感じで二人が言ってきた。
「・・・。じゃあ並ぼうか」
聞こえなかった振りをしておいた。
-約30分後-
ついに順番がやってきた。
「誰が試験を受けますか?」
「あっ! 俺です!」
「では、こちらの箱に手を置いてください」
「はい」
箱に右手を乗せると、手の甲に魔法陣が浮き出る。
そして魔法陣が消えると、1枚のカードが浮かんでいた。
兵士の一人がカードを見て。
「はい、大丈夫ですね」
「カードを持って少し待っててください」
「次にパーティの登録をしますので、手を置いてください」
続いて二人共登録をすませる。
「以上ですか?」
「そうです」
「では、ステータスカードの説明をします」
「このカードは『ステータス クローズ』と念じれば消えて、『ステータス オープン』と念じれば現れます」
「まだ仮登録なので、詳細は記録されていませんが、この後の適正検査が終われば本登録になります」
「これで以上です。次は城の中へどうぞ」
簡単な説明だった。
しかも適正検査があったとは・・・。
まあ、大丈夫だろ!
まずは、カードを出し入れしてみるか。
カードが出た状態なので、
『ステータス クローズ』
フッ・・ 手に持っていたカードが消える。
『ステータス オープン』
スッ・・ 手の上に現れる。
ヤバイ! 面白い!
3回ほど出し入れしてちょっと満足した。
次はカードを見てみる。
名前:ラルフ
性別:男
年齢:15
職業:冒険者
簡単な内容だった。
他の二人のも気になったのでカードを見せてもらう。
名前:サヤ
性別:女
年齢:16
職業:治癒術士
名前:ルーク
性別:男
年齢:13
職業:魔法使い
そのままだった。
まあ、そうだよな、幼馴染だし知ってる内容だよな。
「よし! 城に入るか!」
そう言って歩き出した時に
「受付を終了します!」
「みなさん! 頑張ってください!」
と聞こえてきた。
危なかった、もう少し遅れていたらアウトだった。
安堵の表情を顔に出さないように歩く。
後ろの二人からは、ヤレヤレといった雰囲気が伝わってくる気がするが見ないでおく。