新入生の教室にて
Aクラスにいった時にちょうどHRが終わったらしく、このクラスの担任そして攻略対象者の井無田 玖音がドアを開け僕たちを招き入れてくれた。
「来たか、今ちょうど委員決めが終わったとこなんだ。」
そう僕らに言うと、
「生徒会の奴らが来てくれた。これから生徒会から諸注意や説明があるからキチンと聞くように。」
生徒に前置きをして先生は窓際の方へ移って行ったので入れ替わるように僕らが教壇へ立った。
教壇に立つと真ん前の席に香桃恵がいた。近いな。にしても全く変わらない。なんだか小学生の時の顔のまま背だけ伸びたみたいだ。要するに童顔だな。
そういや前世で親友が『童顔と150cmの小さい身長のせいで主人公ちゃんが中学生に間違われて、燈火くんがそのことをからかっててめっちゃ萌えた!!燈火くんも主人公ちゃんも可愛いいい!!』って言ってたな。
その香桃恵は僕のことは全く気づいていないみたいだ。
まあ、当たり前か。容姿も大分変わったし、何しろ僕は今男として通ってるから仕方ない。
逆に燈火の方にはすぐ気づいたみたいだ。驚きで大きい目がさらに大きくなってる。
さてその燈火は…気づいてるな。驚きで固まってるし。
だから名簿読んでおけって言ったのに。
まあいいや。こっちが喋っている間にもとに戻るだろう。
「ご紹介に預かりました、生徒会です。僕は副会長を務めさせてもらっている2年の三重埜想羅です。能力は重力を操るというものです。どういうものかと言うと…」
僕は実演するため、あと未だ固まっている燈火を起こすために丸めたプリントの重力を少しいじって燈火の頭の上にポンッと置いた。
「(バコッ!!)っっってええええええ!!想羅何するんだよ!いてえだろうが!思いっきり叩くんじゃねえ!」
燈火が頭を抑えてこっちを睨んで叫んだ。よほど痛かったのか少し涙目だ。だが知らん。スルーだスルー。固まっているお前が悪い。
「皆さん、今のが僕の能力です。少し分かり難かったですかね?
今のは重力をいじってプリントを実際の重さより重くしたんです。なのでその重みのせいで置いただけでも思いっきり叩かれたのと同じ感覚になったということです。他にも色々な使い方があるけれどそれはまた追い追い。…燈火。君痛がるのもいいけど、いい加減自己紹介でもしたら?」
ボソッとあまり皆に聞こえないようにいうと、未だこちらを睨んでた燈火がハッと気付き周りを見渡してあ、そういえばそうでした。というかのように体勢を整え直した。
…もしかして忘れてた?今新入生の教室にいるの忘れてた?
「……お見苦しい所を見せてしまってすまなかった。俺は生徒会で書記を務めている2年の淀鞍燈火だ。能力は炎を操るというものだ。よろしくな。
まあ自己紹介はこれくらいにしてまず最初に生徒会の説明に入らしてもらうぞ。」
そう言って燈火はハキハキと説明し始めた。
うん、さっきのアレさえ無ければ完璧に決まってたのにね。残念燈火。