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チュートリアル

先週に引き続き、櫻井の興味はまたしてもピンク色のリュックサックの彼女、伊藤愛いとうあいに注がれてしまう。そんな中、チュートリアルが開始される。まだ、教師はつく時間ではないのか今は両大学の生徒のみ。とりあえず、櫻井は小林から先週までの内容を教えてもらおうとすると詳しくまとめられた一枚のルーズリーフを手渡される。


「まだそれ一枚しかないから櫻井と伊藤さん、二人で見てくれ」


下書き段階の故らしく、一枚しか用意されていないためにとりあえずは机の上にルーズリーフを置き、隣の席に座る伊藤と二人で内容を把握することに。少し、櫻井が控えめに位置しておりなるべく伊藤が読みやすいようにしている。チュートリアルの議題に挙げられていたのは医療現場におけるそれぞれの活動というものにあった。この手の議題は医療系大学に入ったばかりの一回生には一番初めに挙げられるものだ。櫻井達にもちょうどいい議題であり、これならすぐに考えられそうだと思ったものの、あまり進んでいないような気がするのは気のせいかと感じ、櫻井は小林にどういうことなのかというような視線を向けるも笑ってごまかされてしまう。


「実は先週そんなに進まなくてさぁ」

「やっぱり僕が居ないとダメなんだなぁ」


普段からこの二人の会話などはこのような感じであり、大体周囲を和ませるような会話をする。この場合、他のメンバーにとっては先週休んでおきながらなんとエラそうな男なのだろうくらいにしか思われないかもしれないが隣の席に座る伊藤はクスッと笑っていたように見えたのは気のせいだろうか、それはわからなかったが櫻井はとりあえず伊藤も内容は把握したことを示すかのようにルーズリーフを小林に返す。


「とりあえず先週の続きから始めようか」


小林を中心にしてカンファレンス室に用意されているホワイトボードに必要事項を記して行く。小林の気軽な進行とちょくちょく入る櫻井のからかいながらも意見を出すという展開が多々見られて、カンファレンス室にはちょくちょくと笑いが響く。


「じゃあ、病院での看護師さんって結構大変なんじゃないのか?」

「うん。看護師さんって結構歩くのが速いんだよね。もしかして看護大の人も足速かったりするのかな?」

「いやいやそんなことないですよぉ」


櫻井と小林を中心に時々笑いのネタを含みながら意見を出し合うメンバー達。もし、これを進行しているのが小林を始めとする学生でなく笑いを含むようなことのない生真面目な教師だった場合、メンバー達は意見を積極的に出したりするだろうか。こんなに砕けて意見を出し合うこともなく、ただ真面目な意見だけを求めた話し合いになる展開もある。楽しく意見を出し合えるからこそ、もしかすると普段から意見を出すこともあまりない櫻井でさえ意見を出すのではないかと思われる。


「おっと、もうこんな時間か。じゃあ、一旦休憩挟んで20分後にまた開始ってことで」


ちらりと時計に視線を移してみるともう時計の針は15時過ぎを刺していることに気付いて、小林は席を立ってカンファレンス室を出ていく。櫻井はどうしようかと思ったものの、隣に座っている伊藤の方を見ても彼女が動く気配は感じられることはなかった。先週、彼女に対してあれだけの興味を引いてしまった故に一体どんな人物なのだろうかと気になり声をかけることにする。


「はじめまして、伊藤さん。もう知ってるかもしれませんが薬大の櫻井です」

「こちらこそはじめまして。看護大の伊藤です」


まずはお互いに丁寧に挨拶をかわし、会釈をしている。その会釈の時に浮かび上がった伊藤の笑顔が櫻井には少しだけ可愛らしく感じられた。どうやら伊藤という看護大生は櫻井が思っている以上に櫻井の中では実は凄く存在が大きい人物なのかもしれない。そのまま引き続き話をする。


「先週はどうして休んでたんですか?」


ゲームセンターに居たことは知っているものの、何故チュートリアルをサボってまで居たのかが櫻井は気になった。まさか、自分のようなゲームセンター好きというわけでもないだろうにと思っており、理由を聞いてみる。


「少し体調がよくなかったですから…」

「そうだったんですか…もう身体は大丈夫なんですか?」

「はい、もう大丈夫ですよ。ありがとうございます」


伊藤の返答に櫻井は内心、体調が悪いのにゲームセンターに行ってクレーンゲームのためにあれだけの金を投資するかと思いながらも表情はどうにかして心配するような表情を作り出しているも、伊藤は相変わらず笑顔を作り出している。それを見ているとやはりどこか興味を持ってしまう。しばらくしてから小林や他のメンバーも戻ってきて、新たに薬大の教師もカンファレンス室に入ってきて、出欠確認をする。もしも小林がメールで知らせてくれていなかったら間違いなく欠席扱いになっていた。この時は小林に感謝をする櫻井だった。隣に座る伊藤に視線を向ければ、彼女もこちらを見ており、お互いに今日は来ておいてよかったねと安心したかのように軽く表情に笑顔を浮かべていた。


どうも、櫻井です。

今回から櫻井が友人小林と看護大生伊藤と深く関わる内容でありますがいかがでしょうか?


時に皆様は議論には積極的に参加する方でしょうか?

私は興味のあるものには積極的でありますが、興味のないものには消極的です。

誰かが良案を提示してくれる。そのように甘んじることも多々あります。


けれど、それが誰もが面白いと感じることのできる内容だった時、きっと皆様は積極的になれると思います。

それが議論に限らず、学校の授業や成人式の市長の挨拶であったとしても。


面白いという項目があればこそ、感じることができればこそ、人々が積極的になれるチャンスにもなりえると思います。


では、次回もお楽しみください。

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