9/12
雨
ポツポツと雨が降る中、巨大な桜の木の下に佇む男が一人。
「戻った・・・・か・・・・・・・。」
額から頬にかけてはしる細長い傷、それを右手で撫でながらゆっくり右目を閉じていく。
「早く・・・・来い。」
愛おしむ様に傷を撫でながら、ふっと、微笑んだ。
黒い髪を雨にぬらし、およそ道とは呼べないそこを無言で歩く。
むき出しの肌を草が掠め小さな傷を作っていく。
「本当にこっちであってんのかぁ?」
「間違いない。こっちから気がする。」
「・・・・瀾。」
「なに?」
「無理、するなよ。」
カイトのその言葉に、私は答えられなかった。