夢
水が垂れる音がどこからかする。
重たい瞼を開く、今まで横たわっていたベッドはなく木造の屋根も見えなくて、ただ、そこにあるのは満点の星空と青々と茂る草原。零れ落ちそうなほど大きい満月。その下にあるのは、月から垂れる水を受け止める大きな大きな湖。
必然的にその光景に目がいく。なんだか、ひどく、
「喉が渇いた。」
水を求め湖に近づく、湖を覗き込めばそこにあるのは水ではなく
赤い
紅い
アカイミズ・・・・・
吃驚して動けないでいると、水に映し出されるさまざまな映像。
怒ってるアクロ
苦笑するカイト
それを見て笑う私
私
わたし
ワタシ・・・・・・・
血に染まり死にゆく・・・・
赤い
紅い
アカイワタシ
それを見た瞬間、心が悲鳴を上げたかのようにキリリと痛む。
ゴポリ
その音に顔を上げると月からコポコポと湧き出る赤い水。
「また泣いたの?」
後ろを振り向けばさっきまでは居なかった筈の、女の子。長い黒髪、少し吊り上った大きな目、赤い瞳。
どことなく、鈴に似ている彼女。ちがう。鈴じゃない、この子が似てるのは・・・
「私・・・・・?」
「・・・・・さあ?」
その問いに対して、女の子は軽く笑い首を傾げて見せた。
その笑いは誤魔化すと言うよりも、嘲りに近い気がした。
「死が怖いの?」
「怖くない。」
私は一度死んでいるのだ。怖いわけがない。
でも、彼女は笑った。私を嘲る様に。挑発するように・・・・・・。
「じゃあ、なんで泣いてるの?」
「泣いてない。」
「どうして、私とあなたが似てると思ったの?」
「・・・・・・」
どうして・・・?どうして似てると思った?
「・・・・・・・・こたえは・・ここ」
私の胸に指を突き付け彼女は言った。
「魂が一緒なのよ。」
ふいに彼女は離れた、今まで一度も見せなかった、微笑みをたたえて。
「またあえるわ。」
その言葉を最後に私の意識は暗転した。