10/12
さようなら、世界
交わる視線
降り続く雨
薄く弧を描く唇
私は・・・・
手の中にあるものを握りしめて、懐に飛び込んだ。
「本当に良いんだな?」
それは町を出る前の事、これからルディに会いに行く。二人には何もしないでほしい。そう、二人に言う
と、カイトが確認するように聞いてきた。
前世の記憶
このことは、宿を出る前に二人に話した。だからだろうか?
カイトの眼には、悲しい光が渦巻いていた。
愛した者を殺す
それは辛いことだから。
肉を貫く感触と、軽い衝撃。手を伝う生暖かい何か。
向こうの方でアクロが呼んでる気がするが、私は目の前にいる、愛しい男に口づけをした。
「――――」
ルディは耳元で呟くと体を離し、微笑んだ。
ルディの体が砂になっていくのと同時に、目の前がだんだん白で埋め尽くされていく。
「「瀾!!」」
「アクロ!!カイト!!」
二人に名前を呼ばれ体ごと振り向く。離れた所に居る二人の事はもう上手く見えない。
でも、もう時間がないことだけは漠然と解っていた。
「ありがとう!!!」
満面の笑顔でそう言い残し、彼女はこの世界から消えた。