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第142話 呼び文 あるいは 小屋の流れ


山裾。


小屋。


朝。


いつものように人が動いていた。


縄を編む者。


荷を分ける者。


書付をまとめる者。


皆。


それぞれの仕事をしている。


そんな中。


一通の文が届いた。


黒田万吉からだった。


与吉が読み上げる。


「高岡へ来てほしい」


「通いの女を集めてほしい」


「作業所を仕切れる者も欲しい」


それだけだった。


だが。


小屋の者達は意味が分かった。


高岡が動き始めたのだ。


女衆の一人が首を傾げる。


「高岡?」


別の女が答える。


「山へ入る手前の場所だろ」


「最近作ってる」


皆。


名前ぐらいは聞いていた。


だが。


何をしているのかまでは知らない。


そこで。


与吉が簡単に説明する。


荷が集まる。


山へ流す。


兵糧も通る。


人も通る。


つまり。


小屋より大きな流れだった。


女衆達は少し驚く。


「私らが?」


「戦場の手前へ?」


不安もある。


だが。


同時に分かっていた。


やる事は変わらない。


縄をまとめる。


荷を分ける。


置き場を整える。


流れを止めない。


それだけだ。


昼。


人選が始まる。


縄仕事に慣れた者。


荷札を扱える者。


置き場を仕切れる者。


少しずつ選ばれていく。


女衆達も準備を始めた。


その様子を見ながら。


与吉は少し笑う。


万吉はまた同じ事を始めたのだ。


場所が違うだけ。


小屋で作った流れを。


今度は高岡へ持って行く。


夕方。


荷車へ荷が積まれる。


縄。


札。


帳面。


必要な物。


全部。


高岡へ送るためだった。


そして翌朝。


人も荷も動き出す。


山裾の小屋から。


高岡へ。


新しい流れが伸び始めていた。


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