第125話「残す」
春。
かなり進む。
山裾。
暖かい。
風。
柔らかい。
土。
乾き始めていた。
そして。
半地下の食糧庫。
出来てから。
少し経っていた。
最初。
皆。
半信半疑だった。
「本当に保つのか」
「穴なんかで大丈夫か」
そんな声。
結構あった。
だが。
使い始めると。
かなり違った。
干し柿。
湿気にくい。
麦。
置いておける。
塩。
固まりにくい。
半地下。
開けると。
ひんやりしている。
空気。
少し違う。
村人達。
かなり感心していた。
「……本当に違うな」
「去年より、
保つぞこれ」
そこへ。
干し物。
少しずつ並ぶ。
縄で吊るす。
樽。
置く。
棚。
埋まり始める。
村の女。
ぽつり。
「去年なら、
もう食ってたな」
別の女。
笑う。
「今年は、
少し残せるかもな」
かなり静か。
だが。
それ。
かなり大きかった。
去年まで。
皆。
「今年食う」
それが中心だった。
冬越え。
精一杯。
残す余裕など。
ほとんど無かった。
だが。
今年。
違う。
「残す」
話が。
普通に出るようになっていた。
しかも。
半地下。
小屋だけではない。
近隣村にも。
少しずつ増えている。
村の男。
半地下見ながら。
「炭、
置いといたら」
「かなり違うな」
別の男。
頷く。
「板も良かった」
「下、
湿気にくい」
つまり。
「備えの知恵」
も。
少しずつ。
村を回り始めていた。
その頃。
黒田万吉。
半地下へ降りる。
中。
少し暗い。
棚。
見る。
麦。
干し物。
塩。
ちゃんと残っている。
万吉。
ぽつり。
「……ちゃんと残ってるな」
かなり静か。
去年。
冬。
「減っていく物」
ばかり見ていた。
薪。
減る。
麦。
減る。
干し物。
減る。
皆。
少しずつ痩せた。
だが。
今年。
違う。
「残っている物」
がある。
それだけで。
少し安心出来た。
井上之正。
その様子を見ながら。
少し笑う。
「若」
「村も、
少し変わりましたな」
万吉。
普通。
「冬嫌だからな」
かなり真顔。
周囲。
少し笑う。
だが。
去年。
冬を越した者達ほど。
分かっていた。
「備えが残る」
それが。
どれほど心強いかを。




