表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救済の闇  作者: ケイ
5/14

賑やかな街中。その中を、アレンは進む。

周囲の村々の特産品。加えて、王都から送られてきた品物の数々。いたるところに露店が開かれ、活気に満ちた人々の声が響くそこは、"闇"とは無縁の場所だった。


「ねぇ、聞いた?」


「ん?」


「どこかの村か街か知らないけど……勇者様が現れたって話」


「聞いた、聞いた」


「どう思う? ほんとに勇者様が現れたって思う?」


「うーん、どうかな。勇者様なんて伝説の存在でしょ? それに勇者様が現れるってことは、魔王も現れるってことでしょ? こわくない?」


「こわーい」


「だよね。まっ、そういうことは話半分で聞いておくのが一番だよ。わたしたちみたいな普通の人間には関係のないことだし」


「ははは。それ、言えてる」


「それにさ。もしほんとに勇者様が現れたんなら、もう既に。上の人が押さえてると思うんだ。身柄とかそういう意味じゃなく」


「"力をこっちのいいように使わせる"って意味?」


「そうそう」


「でもさ。この街にもいるかもよ?」


「勇者様が?」


「うん!」


楽しそうに声を弾ませ、アレンの側を通り過ぎていく軽装姿の二人組の女。


その声。

それにアレンは興味を示さない。

ただ静かに、表情を変えず、アレンは前へ前へと歩みを進める。

闇の跡。それを足元に残しながら。


そのアレンの姿を、路地裏から見つめる者が一人。

壁に背を預け、腕を組む黒髪のその男。

腰には剣を携え、その眼光は鋭くまるで獲物を見る狩人のよう。

漆黒のローブを纏い、その口元はなぜか固く結ばれている。


己の視線。

そこから外れ、人混みに紛れ視界から消えるアレン。

そして男は身を起こし、通りへと出る。


そして、呟いた。


「闇のニオいがする」


そう、忌々しく呟いたのであった。


〜〜〜


薄暗く、広い路地裏。

人々の喧騒から隔絶されたその場所を、アレンは進んでいた。


闇を纏い。表情を変えずに。


っと、そこに。


「おい、そこのお前。止まれ」


怒気のはらんだ声が響く。

足を止め、アレンは振り返る。


果たしてそのアレンの視線の先には、立っていた。


漆黒のローブを纏い。


「名は知らぬ。だが、その闇。見過ごすわけにはいかぬ」


そう声を発し、赤々としたオーラを纏う一人の男がそこに。


「名は?」


アレンは、しかし答えない。

答える義務などない。

そう言わんばかりに、その身に闇を纏わせて。


それを鼻で笑う、男。


「闇の分際で……死ぬ前に教えてやる」


「俺はジーク【勇者】を"やっている"」


刹那。闇が蠢く。

アレンの闇色の双眸。

そこに、明確な殺意が宿る。


剣を抜く、ジーク。

その剣は真紅に輝き、辺りを赤々と照らす。


「この剣はあらゆる闇を断つ」


「そして、お前もだ」


【神速の剣戟】


目覚めた力。

それをもって赤を纏い、ジークはアレンを剣の射程に納める。

一瞬にして。瞬きさえ許さぬ速さをもって。


「消えろ」


呟き。

ジークは、剣を一閃。

アレンを袈裟斬りにーー


刹那。


【救済】


【斬られる苦痛から】


闇を帯びた真の勇者アレンの力。

それが、偽勇者ジークを嘲笑うかのように発動されたのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ