②
「!?」
「てめぇ。なにしやがった」
「そ、そっちがその気なら」
焦燥し、各々の武器を構える面々。
女は杖。二人の男は、剣と斧。
黒のローブを揺らし。
「あんたもしかして……闇系の人? ならッ、人権なんて無し!」
と、女はアレンに杖の先端を向ける。その身から赤々とした魔力のオーラをたぎらながら。
「死ねッ!」
火球。それを躊躇いなくアレンに撃ち放つ、女。
その顔は勝ち誇り、勝利を確信していた。
だが。
「救済」
そのアレンの一言。
それをもって、火球は"燃える"ことを苦難と見做され、消滅してしまう。
「えっ? ど、どうして」
汗を滲ませ、女は後退る。
「わた。わたしの魔法。な、なんで?」
「くっ、や、野郎!」
「舐めるなよ!」
かけ出す、二人の男。
剣と斧を振りかぶり、二人はアレンとの距離を詰めようとする。
しかし。
【救済】
走ること。
それさえも、身体にとっては"苦痛"と見做される。
「「!?」」
二人は転び、恐怖によりその場から動けなくなってしまう。
その二人の元にアレンは歩み寄る。
そして。
「オレは救う。この世界を」
闇色の双眸。
それをもって二人を見下ろし、「救ってやる。お前らも」と呟く。
だが、そこに。
「がる…がるる」
弱々しい獣の唸り声が響く。
それにアレンの意識が逸らされる。
そのアレンの視線の先。
そこには、瀕死の幼いダークウルフの姿があった。
ぴくぴく痙攣するその姿。
それはひどく、弱々しい。
アレンが視線を逸らしたその隙。
そのわずかな時間に、彼らは逃走を図る。
男たちは立ち上がり、女は背を見せて。
そこにアレンの声が響く。
幼きダークウルフ。
弱く小さなダークウルフ。
手のひらをかざしーー
「救済する」
「"弱くなにもできなかった"という苦悩から」
瞬間。
幼く瀕死のダークウルフ。
その身が、漆黒の闇に包まれる。
そして、瞬く間に。
「ガルッ、ガルルル!!」
ダークウルフは成獣となり、その身も牙も弱く儚いモノから強く圧倒的なモノになる。
「ひっ、ひぃ」
「ば、化け物だ」
「し、死にたくねぇ!」
悲鳴或いは恐怖を漏らし、蜘蛛の子を散らすように忌避を図る彼等。
だが、ダークウルフは決して見逃さない。
跳躍しーー
「ぅぐ……っ」
爪を立てた前脚。
それをもって女を抑えつける、ダークウルフ。
その様をアレンを見つめる。
じっと。じっと。
「た、助けて! ねっ、お願い! なんでも。なんでもするから!」
響く女の悲鳴。
「グルルル」
「助けっ、助けて! お願い! ぉ、お願いします!」
だが、ダークウルフには届かない。
届くはずもなかった。
「ーーッ」
べきッ
容赦なく。
ダークウルフは、女の頭を噛み砕く。
殺意と共に。一才の躊躇いもなく。