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救済の闇  作者: ケイ
2/14

旅立ったアレンの姿。

それを見送り、村人たちの顔に浮かぶは嘲笑。

そして、マリアとアレンのゴウメイも蔑みの表情を浮かべていた。


だが、彼等まだ気づかなかった。


アレンの心に宿る闇。

それは既に、勇者のソレではなかったということを。


〜〜〜


村を捨てたアレン。

その足元に広がるは、影ではなく闇。

一歩。一歩。アレンが前に進む度、その闇は更にその濃さを増していく。


世界を救う。という使命。

勇者としての、使命ハカイ


風が吹く。

風はアレンの髪を撫で、アレンの心を見透かすように吹き抜ける。


その風に混じり、アレンは聞く。


「このダークウルフッ、まだ子どもだな!」


「成長して脅威になる前に討伐しておこう」


「へへへ。久しぶりにストレス解消できそうだな!」


「ふふふ。魔法の試し打ちしちゃおっかな?」


同時に響く、鈍い打撃音。

呼応し、悲痛なダークウルフの鳴き声が響く。


その音にアレンは足を止める。


「きゃはははッ、苦しんでる!! 苦しんでる!!」


「弱っちいな。もっと痛めつけてやろうぜ!」


「手足を切断してッ、全身骨折とかどう!?」


自然とアレンの足が、声の方へと向く。

そこにあるのは、理性ではない。


あるのはーー


「人と対を為す魔を守る」


という、歪んだ思いだった。


〜〜〜


舗装された砂利道。

そこから外れた森の中。

拓け、背の高い草に囲まれた場所。

そこに、光景はあった。


己の血溜まり。

その中に丸まり、息も絶え絶えになっている幼いダークウルフ。そしてそれを囲み、へらへらと嗤う4人の男女の姿。


「ねぇッ、そろそろトドメさそうよ! わたしもう飽きちゃった」


「あ? まだまだ弄ぼうぜ。まだ虐めたりねぇぜ、俺」


「はははッ、やっぱり弱い魔物を虐め倒すのは楽しいな!!」


「だな。こいつらをいくら狩ってもお咎めなし。ほんと、魔物共は俺たち人間様にとって、いい玩具ゴミだぜ」


響く、歪んだ声。

それに、アレンは呟く。


「ゴミはどっちだ」


よみがえる、昨夜の出来事。


勇者として、世界を救う。

既に闇に塗りつぶされたその思い。


気づけば、アレンは、彼等の元に歩みを進めていた。


アレンに気づく、面々。


「あ? なんだ、お前」


「なになに?」


「なにか文句でもあんのか?」


「てめぇもこの魔物と同じように」


刹那。


「救済」


アレンの口。

そこから無意識に漏れる言葉。


勇者の力。

それは、世界を"救済"する力。

あらゆる苦痛。あらゆる苦悩。それらを救済する力。


だが、闇に染まりしその勇者の救済チカラはーー


目から光をなくし、糸が切れた人形のように倒れ伏せるリーダー格の男。


生きることすらも"苦悩"とみなし、その対象とする。

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