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悪役魔王に娶られました

作者: 紫将


"何でなのよ!!"


 私は日本という小さな国でサブカルという大きなコンテンツを愛するしがない女。

 今日も今日とて仕事の休憩時間に漫画を読んでおります。


"なんで、悪役は負けるのよ!!"


 心の叫びを空へと放つ。

 もちろん、休憩室にいるので声には出さない。


 ってかこの漫画に出てくる周りの女たちも女たちだ。

 近くにこんなにもカリスマ的な男がいるというのに、なぜみんな避ける?


 ほんと、私だったら……


 まぁそんな事を考えても意味のないことだ。

 この世界にいる悪役と言えばもっぱら政治家ぐらい。

 犯罪者とかは美学もへったくれもない人間。

 こんな世界では本物のカリスマには出会えない。


 何でこんな世界に生まれたのかしら。

 この世界の男はみんなチキンを背負ってるし、キョドって情けない話だ。

 もっと堂々としろって話だよ。


 "はぁ、もう28歳か……何考えてんだか"


 こんな馬鹿な事を考えてばっかり居たらいつの間にかアラサー。

 男には恵まれず、仕事にも恵まれず何のために生きてるんだか。


 休憩室で読んでいた漫画も読み終わり、気づけば休憩時間も終わる頃。


 外回りでも行きますか……


 取引先に向かう最中、私の頭の中では先ほどの考えで一杯だった。


 なぜこんなつまらない人生を送っているのかを考えているのみ。


 劇的な事は起きないものか……


 そう考えているとどこからともなく脳内に声が響いてきた。


"魔王様!!この魔法陣で……"


 一体何だ?


"勇者たちにも……"


 ついにおかしくなってしまったのか。

 孤独とつまらない人生により狂う。

 なんとも笑えない話だ。


 そして、更には足元まで光りだした。

 今度は目までおかしく……


 "ピカッ!"


 私は強い光に包まれて意識を失った。



ーー


 

"ここは?"


 私が目を覚ますとそこには違う空気が流れていた。

 病院とも家とも違う。

 怪しく恐ろしい雰囲気。


"ここがあの世なのか?"


 私は周りを見渡す。

 すると目の前にツノを生やしたイケメンが立っていた。

 しかも、私に何かを話しかけている様子。

 見た目的にも日本人じゃないし、言葉なんて……


""スキルーー魔族言語ーーを獲得しました""


 "ん?今なんて?"


 なんか脳内でまた声が聞こえたような。

 スキルって異世界でもあるまいし。


「おい!!」


「おい!!!」


「お前、言葉がわからないのか??」


 先ほどのイケメンが私にまた話しかけている。

 しかし、今度は言葉が分かるようだ。


「えぇ、どうやら言葉はわかるようです。」


「そうか、ったく今から俺様の嫁となるのに言葉も分からなかったら面倒だからな。」


 このイケメンは何を言ってるのでしょうか。

 全くわかりません。


「何を変な顔をしている。せっかくの顔が台無しだぞ。」


 私はこのイケメンに口説かれているのでしょうか?


「あのぉ、一体……」


「まぁ、無理もないかお前はこの世界に来たばかりで頭の整理がついていないのだろう。」


"この世界???"


「この世界ってどういうことですか?」


「お前はどこの国からかはわからんが、とにかくこの世界に転移したのだ。俺様の嫁になるためにな。」


 やばい、ちょっとこの人言葉通じないかも。

 転移とか嫁とか……何を言ってるんだか。


「何を言ってるという顔だな。お前、外をみてみろ。」


 私はそのイケメンの言葉に従い、外を眺める。


 そこには見たことのない世界が広がっていた。

 ゲームや漫画でしか見ないようなモンスターの群れ。

 吸ったら即死だと思われる紫色の霧。

 高熱を帯びているであろうどす黒いマグマ。


 こんなのは私の知っている世界ではない。


「理解できたか?」


"えぇ、理解できました。"


"私が異世界転移したということを"



ーー



「落ち着いたか?」


「何とか……」


 私は異世界転移をしたと知りさっきまでかなり取り乱していた。

 前の世界をあんなに嫌がってたくせに情けない話だ。

 しかし、そんな私をこのイケメンは優しくしてくた。


「それで?お前、名前を何という?」


 すっかり、このイケメンに懐いてしまっていたがお互い名前を知らないのだった。


「私は、神崎まりあといいます。あの、あなたは……」


「まりあ…か、いい名前だな。俺様は第十三代目死の魔王、ザドマリスだ。」


"魔王!!!"


 確かに周りが想像上の魔界見たいな感じだったけど。

 本物の魔王だなんて。


「その魔王様が私に一体何のようですか?」


「俺様のことはザドマリスでいい。」


「わ、わかりました。ザドマリス様。私をなぜ異世界転移させたのでしょうか?」


「それはさっきも言ったであろう。俺の嫁にするためだと。」


 いや、それの意味がわかってないのです。


「嫁ってどういうことですか?」


「突然言われても分からんのは仕方あるまい。しかしな、俺様は魔族一の預言者に召喚した娘を嫁にしろ、さすれば勇者を倒せる。と言われたわけだ。」


「つまり??」


「ありあ、お前は俺の嫁になるしか無いのだ!!」


「!!!!」


「まぁ、今日は疲れているだろう。この部屋で休むと良い。」


 そう言ってザドマリス様は嵐のように去っていった。



ーー



 異世界転移……


 いざ起きてみれば、意外と慣れるものだ。

 もしかしたら、驚きすぎて逆に冷静なのかもしれないが。


 それにしてもさっきから頭の片隅にあるスキルと言う言葉、もしかしたら異世界だし、私にもスキルが使えるのかもしれない。


""スキルを確認するにはスキル一覧と言葉を発してください""


 またも、どこからか声が聞こえてきた。

 こいつ、意志が通じるのか……。

 まぁどうでもいいか。

 とりあえずは、


「スキル一覧!!」


 私が言葉を発すると同時に目の前にはステータスウインドーのようなものが現れた。

 そこにはいくつかのスキルが書かれている。


 スキル一覧


 ・魔族言語

 ・千里眼

 ・悪のカリスマ


 魔族言語は先ほど言葉がわかるようになったあれだろう。

 しかし、ほか2つは何なのか……


 私は目の前に浮かぶ千里眼の文字をクリックしてみた。

 すると、

 

 ""このスキルは想像する相手の意味がわかる能力です""


 と文字が現れた。

 なんかヤバそうな能力だ。

 とりあえずは使ってみるか……


「千里眼!!」


 言葉を発すると同時に私の意識が何処かに飛んでいく。

 気がつくと、目の前にはザドマリス様が居た。

 部屋に来たのかとも思ったがそうではないらしい。

 遠くから俯瞰している感覚だ。


 "これが千里眼野能力か……"


 しかし、ザドマリス様は何をしているのだろう?


 私はザドマリス様の周りを見渡す。

 そこにはウエディングドレスのようなものとご馳走、派手な装飾された部屋があった。


 これって……

 どう考えても……


 "結婚式の準備じゃん"


 気が早すぎませんか、ザドマリス様。

 なんか結構ノリノリだし。


 私が呆れていると突然スキルが切れ意識が元の場所に戻った。

 どうやら、一定時間が立つともとに戻るようだ。


 さっきのは見なかったことにしよう。

 そう思い次のスキル、悪のカリスマを押してみる。


 ""このスキルは魔族および、悪の心を持つ者の信頼を勝ち取りやすくなると同時に好かれやすくもなるものです(パッシブスキル)""


 と書かれていた。

 よくわからないけど、やばい能力には違いない。


 周りの景色、魔族、ソレからこのスキル。

 これらを確信してようやく異世界に来たという実感が湧いてきた。

 

 そして、それと同時に疲れが押し寄せてきてベッドの上で深い眠りについた。



ーー



 朝起きると、目の前にはザドマリス様が居た。


「まりあ。心の整理はついたか?」


 優しい声でそう聞いてくる。

 ザドマリス様は見た目は怖めのイケメンだが、声は比較的甘い。

 寝起きには最高のエキスだ。


「ええ、何とか。」


「そうか、じゃぁ結婚式を挙げるぞ。」


 "すみません。結婚の方はまだ整理がついていないのですが……"


 そうは思ったものの、良い出せそうな雰囲気ではない。


 なんせ、ザドマリス様はノリノリのようだし。

 きっとこれが悪のカリスマのスキル効果なのだろう。


 そして昨日、千里眼で見たのは夢ではなかったらしい。

 なんせ、結婚式を挙げるのだから。

 

 "ってか魔族も結婚式挙げるのね。" 


「では、会場に行くぞ!!」


 私はザドマリス様に連れられて昨日見た部屋へと向かう。


「まりあ、お前はこれを着ろ。」


 そう言って、ウエディングドレスを渡してきた。


「ここで着るんですか?」


 それはちょっと、いやかなり恥ずかしい。


「いや、それまだ早い。隣の部屋を使え。」


 一体何が早いのやら。

 私は隣の部屋に行ってウエディングドレスに着替えようとする。

 一人で着替えれる自信はなかったのだが、幸いにも召使いのような人達が居て着せてくれた。


 もちろん、ウエディングドレスを着るのは初めてだが、意外と様になっている。

 軽く化粧もしてもらい、元の部屋に戻った。


 すると、そこにはタキシード姿のザドマリス様が居た。


 "イケメンのタキシードとか初めて見たけど最高以外の言葉が見つからない…"


「着替えられたようだな。まりあ、とても似合っているぞ。」


 その言葉に私はかなり心を動かされた。

 相手が魔王だとか、ここが異世界だとかを忘れて一人の女として心を動かされた。


 どうやらザドマリス様はストレートに言葉を伝えてくれるらしい。

 残念ながら前の世界でそんな事を言ってくれる人は居なかった。


 そこで私は初めて異世界に来てよかったと感じられたのだ。


 私とザドマリス様が少し喋っていると、部屋には続々と魔族が入って来る。

 魔族が入ってくるたびにザドマリス様が私に紹介してくれた。


 特に凄かったのが、ザドマリス様直近の"死の魔王三大幹部"と呼ばれる人達た。

 ザドマリス様も威圧感は凄いのだが何処か優しげな感じがあったのだが……

 三大幹部達は恐ろしい威圧感を放っていた。


 それでも三大幹部の内、アラムとカンジュと言う二人は私に対してかなり礼儀正しく話してくれた。


 そして、話してくうちに最初の威圧感も薄れていった。


 しかし、三大幹部の残りの一人、アリスと言う女性の魔族はそうはいかない。

 今にも私を殺しそうな勢いで見つめてきていた。

 なんなら現在進行系で殺気を飛ばしてきている。


 まぁ、アリスのザドマリス様への視線をみれば想像はつく。

 きっと、私がお邪魔虫なのだろう。

 ぽっと出のしかも、人間の女なんかにと思っているに違いない。


 私だってこの状況に戸惑っているのだ。

 許してほしいものだが……


 もちろん、ザドマリス様が嫌いというわけではない。

 それ以上に理由は今まで出会ってきた男の中で一番と言ってもいいくらいに。



 周りを見渡せば恐ろしい顔の数々。

 不安は募るばかりだがここは流れに身を任せて結婚式を行うことにする。


 結婚式は預言者と呼ばれる魔族のもと開かれた。

 最初に予言の説明。

 事の経緯。

 そして、二人の結婚の誓い。


 それらが順番に行われる。

 予言の説明や事の経緯はザドマリス様に聞いた通りのことだった。


 ついに結婚の誓いの番になった。

 しかし、結婚の誓いって何をするのだろうか。


 私とザドマリス様は祭壇に呼ばれ、預言者が誓いの言葉を述べた。

 最後にこう一言添えて、


「では、誓いの接吻を!!」


 "はっ????"


 そんなの聞いてないんだけど。

 私の気持ちと裏腹に周りからはドキドキの視線が伝わる。

 ザドマリス様も真剣な表情でこちらを見つめてきていた。


 "私ファーストキスなんだけど……"


 もういっか……

 せっかくの異世界でせっかくのイケメン相手だ。

 どうにでもなれ!!


 私とザドマリス様は誓いのキスを交わした。 

 魔族の唇といっても柔らかく、見た目に反して優しいキスだった。


 そっからはドキドキであまり覚えてないのだが、ご馳走をたらふく食べお酒を少し飲んだのだけは覚えている。


 "あかん意識が朦朧としている、ここはどこなんだ?"


 きっと、お酒のせいだろう。

 私は自分の両頬を叩き意識をしっかりとさせる。


 すると意識が覚醒し、色々と周りが見えてきた。

 どうやらどこかの部屋のベッドで寝ていたみたいだ。


 "バスローブ姿で!!"


 何で??

 バスローブになんか着替えてるのだろう。


 奥からはシャワーの音が聞こえてくる。

 これってもしかしなくてアレの前じゃないか。


 異世界にしかも魔族の城にこんなとこあるのかよとか考えてみる。

 ってかそんな事はどうでもいいのだ。

 

 私が動揺してオドオドしていると、同じくバスローブ姿のザドマリス様がシャワールームから出てきた。

 少し濡れた髪と少しワイルド目のイケメンフェイス。

 それを見た時、私は再び考えるのを放棄した。


「これって……」


「結婚して俺様たちは夫婦になったのだぞ。それ以外に言葉は要るまい。」


 "やっぱりそうですよね。"


「あの……私、初めてなので優しくしてくれると……」


「すまんが、俺様も初めてだから優しくできるかは分からん。それにまりあ、今のお前を見ているとどうにかなってしまいそうなのでな。」


 ザドマリス様の甘い言葉が耳に刺さる。

 その瞬間、私はザドマリス様に身体を任せて、温かい温もりだけを感じることにした。


ーー


 目が覚めると、隣ではザドマリス様が私の顔を見つめていた。


「起きたのか。」


 そう優しく言葉をかけて。


「お前には突然のことで色々申し訳ないと思っている。」


 更に、甘い声で言葉を続ける。


「だが、俺様にすべても預けてくれた以上、必ず守ってやる。相手が勇者だろうと世界だろうと。」


 ザドマリス様は自信ありげにそう言った。

 悪役の魔王らしい笑みを浮かべて。


 そして、私の頬にザドマリス様はキスをした。

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