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夜踊-3

「さて、正体を探らないとな。」

リュカは冷静に剣を構えながら、チェルシーに問いかける。

「チェルシー、わかってることは?」

戦いの最中、リュカとチェルシーは互いに情報を共有しながら対策を練る。

「魔力の鎖と風の魔法を使います。それから恐慌の魔眼も!」

チェルシーが答える。彼女の鋭い観察力は、オオカミの使う力を正確に捉えていた。

「そこまでは見てた!」

リュカが軽く笑いながら応じる。既に感じ取っていたことを確認しつつ、戦闘のリズムを崩さない。


「あとは……おそらくこの魔物、獣型というわけではなさそうです。」

チェルシーが確信に満ちた声で続ける。

「なるほど。見た目に騙されるなってことか。」

リュカは一瞬の隙を突いて剣を振るいながら、さらにオオカミを観察する。獣の姿は幻影か、あるいはその背後に何か別の存在が隠れている可能性を感じ取った。

「その割には硬いんだよな……魔力の密度が高いってことか?」

リュカは剣を握り締め、再びオオカミに攻撃を仕掛けながら、疑問を口にする。

「おそらくどこかにコアがあるタイプだと思います。」

チェルシーは冷静に返答し、戦況を分析する。

「なるほどな、それを守ってるってことか……!」

リュカはチェルシーの言葉を理解し、オオカミの動きと防御の硬さが、コアを守るための防衛だと見抜く。再び剣を振り、オオカミに一撃を加える。


一方、戦場から少し離れた場所で、傷を癒した少女は息を整えながら、二人をじっと見つめていた。彼女の胸には疑問が広がる。

「お二人……実はものすごく強かったりしませんか?」

少女は思わず口に出してしまう。その戦いぶりは、彼女が今まで見てきたハンターとは明らかに違っていた。

「今は黙って見ててください。」

チェルシーは目を少女に向けず、冷静にそう言い放つ。今は余計な言葉を交わす時ではない。二人はオオカミの正体を見極め、戦いの決着をつけようとしている。

「きれいな目……。」

少女はふと、戦いの合間に見えたチェルシーの瞳に見惚れていた。彼女の冷静さと優雅さが、そのまま瞳に宿っているように思えた。


しかし、その一瞬の静寂はすぐに破られる。

「なにかきます! 今までにないパターンです!」

チェルシーの声が鋭く響いた。

「何かってなんだよ。」

リュカは苦笑いを浮かべながら問い返す。

「わかりません!」

チェルシーも緊張感を隠せず即答する。

「簡単にわかったら苦労しないってな。」

リュカはその状況に苦笑しつつも、すぐに剣を構え直す。二人は攻撃のタイミングを見計らっていた。


そして――弱点らしき部分がついに見えてきた。二人は同時に気づく。

「「頭の付け根!」」

二人はほぼ同時に叫んだ。瞬間、リュカはその言葉に従って、力を込めて剣を振り下ろす。

ザシュッ――その剣はオオカミの首に狙いを定め、深々と突き刺さる。そして次の瞬間、リュカの剣はオオカミの首を跳ね飛ばした。巨体がゆっくりと崩れ落ちる。

「やったか……?」

リュカは息を整えながら、まだ完全には油断せず、オオカミの動きを見つめる。


「わかりました、この魔物、群体(レギオン)型です!」

チェルシーが、魔物の正体を見抜いて声を上げた。

「なんだって? 数は!?」

リュカは驚愕しながらも、すぐに警戒を強める。

「ネタがわかってれば大したことはないとは思うけどな……。」

リュカは剣を握りしめ、周囲の気配を探る。群体(レギオン)型、つまり一体の魔物が群体を形成しているという事実は、これからの戦いがさらに厳しくなることを示していた。


「どこからくる?」

リュカは周りを見渡す。

「もう、います! こっちを見ずに、周りを見てください!」

チェルシーが焦る声で警告を発した。その言葉に従い、リュカは即座に周囲を確認し始める。視線を向けずに他の気配を探り、敵の位置を把握しようとする。


チェルシーは幻書(アルカナ・)の記(コーデックス)から閃光弾を取り出し、一瞬のタイミングで発射する。閃光が辺り一面を照らし出し、周囲の敵の影を浮かび上がらせた。

リュカは閃光の中、相手の位置を確認すると同時に、少女に声をかける。

「君! そっちの一体だけ、まかせていいか!?」

彼の声は、周囲の状況を考慮した上で、少女に試練を与えるものだった。

「わかりました!」

まだ目が眩んでいる少女は、その声に従って返事をする。彼女の勇敢な心が燃え上がる。

リュカとチェルシーは、それぞれに敵の動きを把握し、戦いの準備を整えた。これからは、ただ一体の魔物との戦いではない――群れを相手にしなければならないのだ。


「どこまでできるか、試してみるか。」

リュカは不敵な笑みを浮かべ、剣を生成しながら高く跳躍した。空中で1匹目の首を一撃で落とし、瞬く間に次の標的へと向かう。すかさず2匹目に向かって剣を生成し、それを射出。剣は確実に命中し、オオカミにダメージを与えた。


3匹目にも切りかかり、瞬く間にコアを露出させる。だが、間髪入れずにさらに2匹のオオカミが追加で襲いかかってきた。リュカは素早く牽制攻撃を放ち、その動きを止める。

そのままの勢いで2匹目に飛び込み、トドメを刺す。続けて、露出したコアを狙い3匹目にも射出攻撃を放ち、一撃で仕留めた。

「よし、慣れてきた。」


リュカは冷静に正面の4匹目と5匹目を捉える。まっすぐに飛び込み、流れるような太刀筋で順番に2匹を撃破。次にすばやく方向転換し、6匹目に奇襲を仕掛ける。剣はオオカミの顎の下から頭の上に抜け、一撃で致命傷を与える。


その間、遠くでチェルシーの方へ向かおうとするオオカミを見つけたリュカは、大型の剣を空中から射出。オオカミは地面に縫い付けられ、その状態ではしばらく動けない。

近くにいた他の3匹のオオカミが連携を試みる。2匹が地面から鎖と風の刃を放ち、リュカを追い詰めようとするが、それを軽やかにかわす。しかし、残りの1匹がその隙を狙って飛び込んできた。

「オオカミのくせに賢いじゃねえか。」


リュカは魔法を回避し、そのまま空中で反撃に出る。オオカミはリュカの刃をかわしきれず、7匹目が消滅する。

風の刃がリュカの軌道に合わせて放たれるが、それも当たらない。リュカは空中に生成した剣を足場にして瞬時に軌道を変え、そのまま8匹目に突撃。さらに高速で駆け抜け、9匹目の首を一瞬で割った。

そして、残り1匹。


自由を取り戻した最後のオオカミが動き出すが、時すでに遅し。リュカは最大出力の剣を生成し、一歩も動かずにその剣を振りぬいた。10匹目のオオカミは、音も立てずにその場に崩れ落ちた。

「ふぅ、こんなもんか……。」

リュカは冷ややかな口調で言いながら、剣を消し去り、立ち上がった。


一方、チェルシーたちは。

虹の加護(アーク・サンク)!」

7色の光が少女の体に宿る。今までの7つの加護を掛け合わせた魔法。武器の強化もされていて、折れた部分には魔力で作られた刃が輝いていた。

「首、ですよね?」

少女はチェルシーの指示を思い出しながら、迫りくるオオカミの鋭い牙を剣で受け止め、すぐに弾き返して隙を作り出した。


「いけますよ!」

少女は意を決して、オオカミの喉元に全力で剣を突き付けた。

「やあああああああ!」

彼女の叫びと共に剣が深く突き刺さろうとするが、オオカミの力は依然として強く、あと少しのところで押し返されそうになる。

「ぐっ……届け!」

少女は全力で剣を押し込もうとするが、力が足りない。すると、チェルシーが加護の力をさらに高め、少女を支える。


その瞬間、10匹を倒し終えたリュカが、最後のオオカミに向かって剣を放った。光の刃が閃く。

「んんんっ!」

少女はその一瞬に全てをかけ、リュカの攻撃に合わせるようにして叫んだ。

「いけるぜ!」

リュカの声が響く中、少女も最後の力を振り絞る。

「とどけえええ!」

ズバッ――!


剣がコアに深く突き刺さり、オオカミの動きが止まった。その瞬間、オオカミはまるで霧のように消え去り、そこにあった巨体が一瞬で消滅した。

「やりました……。」

少女は肩で息をしながら、剣を地面につき、ようやく勝利を実感した。

「やったじゃねえか!」

リュカは満足そうに笑いながら、彼女に向かって声をかけた。その声には労いの気持ちが込められていた。


一方、チェルシーは周囲に目を向け、慎重にあたりを見渡す。

「もういない……ですね……。」

深呼吸しながら、チェルシーはようやく緊張を解いた。残りの敵の気配が消えたことを確認し、戦闘が完全に終わったことを感じ取った。


「やりましたよ、わたしぃ……!」

少女は言葉を絞り出すと、次の瞬間、抑えきれない感情が溢れ出し、泣き出してしまった。

「無事でよかったです。」

チェルシーは優しく微笑みながら、そっと少女の肩に手を置いた。

「悪かったな、一人で任せちゃって。」

リュカは少し申し訳なさそうに頭をかきながら言った。

「なんで、おじえでぐでながっだんでずがぁ……!」

涙でぐしゃぐしゃになった顔で、少女は泣きながら問いかける。言葉が詰まりながらも、心の中に残っていた不安と恐怖が一気に表に出てきた。


「でも、素直に聞いてくれそうになかったので……。」

チェルシーは落ち着いた口調で少女をなだめながら、優しく答える。

「俺がハンターのライセンス持ってないのも本当のことだしな。」

リュカも冗談混じりに言ったが、少女の涙は止まらない。

「ごわがっだよぉぉ……!」

少女は泣きじゃくりながら、ようやく無事だったことに安堵し、感情を吐き出していた。


突然用語説明コーナー


虹の加護(アーク・サンク)

7属性の加護を一気に与える加護魔法。

かけられたものはまさに翼を授かる気分になるという。

7属性ともの魔法のセンスが必要になるため使い手は少ない。

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