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消失

この世界には、魔女がいる。

ただ、君たちが思っているそれとは、少しイメージが異なるかもしれない。


魔女は厄災を起こす。渦巻く魔力に人類は抗う。

男は今、嵐の魔女と呼ばれるものに立ち向かっていた。

嵐を巻き起こし、すべてのものを取り込み自分のものにする。

彼女の姿を見たものはいない、声を聞いたものもいない。ただ、魔女と呼ばれている。そしてそれは厄災として眼の前に立ちはだかる。

時折、目に見えるものが現れる。だが、それは決して彼女ではない。その魔力の残滓のようなものは使い魔(ファミリア)と呼ばれ、時折実体を持つ。更には意思を持つように周囲に襲いかかる。




空は重く、風が荒れ狂う中、リューガは剣を握りしめていた。嵐の魔女はこのあたりにいるはず。だが、目の前に立っているのは、ひとりの少女。ーーどこか不自然で、得体の知れない存在。少女の姿をしていながら、まるでそこに意思はないかのようだった。リューガの意識の底からじわじわと湧き上がってくる恐怖と、理解不能な威圧感が、彼の全身を圧倒していた。


「……お前は、一体……」


リューガが問いかけても、目の前の少女は応えない。彼女の表情は無表情のままだが、その静かな顔は、まるで優しく微笑んでいるようにも見える。その不気味な静寂の中で、確かなことがひとつだけあった。それは、この存在がとてつもない力を持ち、確実に彼を滅ぼそうとしているということだ。


「くそっ……負けるわけにはいかないんだ!」


リューガは渾身の力を込めて剣を振りかざす。しかし、その剣は突如現れた別の剣に防がれる。少女の手には、まるで彼と同じような剣が握られていた。これで何度目の剣戟か。目の前にいるはずのない「少女」と、無数の剣を交えるたびに、リューガの焦りは増していく。


「意味、わかんねえんだよ! 何考えてやがる!」


彼は必死に問い続けるが、少女から返ってくるのは静寂のみ。代わりに彼女の剣が再び振り下ろされ、彼を攻撃してくる。その剣は、彼のものと何ら変わりなく、正確に彼の動きを読み取っているかのようだった。


「俺は、こんなところで……!」


リューガは叫び声を上げ、全力で剣を振り払おうとするが、その瞬間、少女から放たれた強烈な力が彼の全身を包み込んだ。身体が強大な力に押し潰されるような感覚に襲われ、リューガの視界は次第に暗転していく。


「……くそ……っ!」


リューガはもがこうとしたが、体の感覚が次第に消えていった。まるで自分が、影のように薄れていくようだった。彼の剣も、意識も、すべてが闇に飲まれ、消えていく。


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