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その方は高貴なお嬢様

「アンもひと口どう?」


「遠慮しておきます」


 街にもどり、酒場でデラウマタイガーのステーキを頬張る勇者様。


 ナツメ様、わかっていますか?

 そのステーキは私の命と引き換えになりそうだったお肉なのですよ?

 命の危機を感じた直後に食欲なんてわきません。


「もったいないなぁ。こんなに美味しいのに……」


 いつものこととはいえ、破天荒なナツメ様にはため息しか出てきません。


 私が肩を落としていると甲高い高貴な声が近づいてきた。


「あらあらあら、野蛮にも猛獣のお肉を食べているニオイがしますわね〜」


 わざとらしい挑発の言葉とともに現れたのは美しいブロンドの髪をかきあげる女性。

 このショコラータの街を統治する領主様のご息女、アイリス・ショコラータ様だ。


 貴族のご令嬢ということもあって、私はとっさに頭を下げました。


「ん、なんだ、アイリスじゃない。ニオイに釣られて来たの? 食べる?」


「釣られてませんし食べませんわ!」


 扇子をピシャリと手に打ちつけて否定した。

 アイリス様は私に顔を向けて、


「アン、あなたもこんな勇者のお世話なんて大変ね。わたくしのお付きにしてあげるから、気が変わったらいつでもおっしゃいなさいね」


「きょ、恐縮です……」


 アイリス様はなぜか私のことを気にかけてくださる。

 ありがたいことだけど特別、秀でた才能もない私には過ぎたお言葉です。


「アイリスが酒場に来るなんてめずらしいね」


 お肉でほっぺたを膨らませながらナツメ様が不思議がった。

 言われてみれば確かに……。


 ショコラータの街は寛大な領主様の政策のおかげで領民の暮らしは豊かで治安も良好。

 アイリス様が街に遊びに来られることもめずらしくない。

 でも、さすがに酒場に来ることはめったにない。


 何か特別な事情でもあるのかと思ったとき、酒場の扉が開いた。

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