とあるお世話係の日常
私、しがない側仕えのアンはここに告白します。
勇者であるナツメ様は……お世話がとっても大変です!!!
○
「アン! そっちに行ったよ!」
「言われなくてもわかってますぅぅぅ!!」
クマよりも大きなデラウマタイガーに追いかけられて必死に逃げまわる私。
走って逃げて木の根につまづきそうになってジャンプして……!
なんで私がこんな目にあわないといけないんですか!?
元はと言えば「東の森のデラウマタイガーの肉がすごく美味しいらしいんだよね!」と言い出した勇者ナツメ様に強引に連れて来られたのが原因。
つまりナツメ様が悪いんです!
食べるなら私じゃなくてナツメ様を食べてください!
勢いよく飛びついてきたデラウマタイガーに背中から押し倒された。
あぁ、私の命運もここまで……。
故郷のパパ、ママ、弟に妹。そしてペットのフランソワーズ。
先立つ不幸をお許しください。
「アン、そのままじっとしててね!」
気付けば近くから聞こえたナツメ様の声。
「うなれ! 勇者斬!」
ふり降ろされたナツメ様の剣から衝撃波が生まれ、私の背中を押さえ付けていたデラウマタイガーは吹き飛ばされた。
「ギャウゥゥ……!」
「……よし!」
ガッツポーズをとるナツメ様に私は涙目になった。
「何がよし!ですか!」
抗議を受けたナツメ様は悪びれることもなく、
「ヘーキヘーキ! だって勇者のわたしが付いてるんだから!」
どこからそんな自信がわいてくるのか。
ナツメ様はニッコリ笑って自分の胸を叩いた。
「私、あとちょっとで食べられるところだったんですよ!? 食べられてたらどうするつもりだったんですか!?」
ナツメ様はちょっと考えるそぶりを見せて、
「儚く散るのもまた人生、ってね!」
私は精一杯のちからを込めてナツメ様をポカポカ殴って抗議した。