第一話 今年も夏祭り
ミーンミーンミーンミンミンミン
蝉の声で目が覚めた。リモコンで電気をつけスマホを開く。*sirogane817*暗証番号入力。『10:36 快晴』
少し遅めの時間に起床したようだ。雨戸を開けようかと思ったが、寝起きの気怠さとめんどくささが自分の中で勝利しやめた。理由はないが2階の自分の部屋から1階のリビングに移動する。目をこすりながら階段を降り始める。朝の階段を降りる時間は通常の階段を降りる時よりも感じる時間が短いと思うのは自分だけなのだろうか。気づいたら1階に着いているのだ。と、そんなどうでもよいことを考えていると
「おはよう、真」 テレビに視線を向けながらも俺に気づいた母が言ってきた。
「おはよう」 ほぼ条件反射で答える。日ごろから思うが、なぜ母親という生き物は足音もそれほど大きくない家族の気配に気づくのか。ひょっとしたら母親には全世界共通でちょっとした超能力が付与されているんだろうか。
「そうだ真。今日は毎年恒例の夏祭りの日だけど今年も行くよね?お父さんとお母さんは家でゆっくりするつもりだけど」
びっくりした。というのも毎年行われる夏祭りは8月7日と8日、二日間開催されるのだが、もうそんなに高校の夏休みが進んでいたのか。気分的にはまだ夏休み1週目である。
まあそんなことはさておき、夏祭りには行くつもりだ。特に理由はないが毎年どうせ家にいても暇だからという理由でなんだかんだ参加しているからだ。なんなら年一の夏祭り参加は俺の中で一種のルーティン化されている。ただ毎年行っているにも関わらず、全ての年でボッチである。そう、この俺 白銀真には友達がいないのである。誇らしげに言うことでもないが、その状況で夏祭りにボッチ参加できる度胸と精神力を褒めてほしい。
「行く」 とだけ返事し、ソファに座って母と一緒にテレビをぼーっと見る。何気に俺はこういうぼーっとする時間は好きである。そうでなければ万年ボッチなどやっておらん。自分で言ってて少し悲しくなってきたな。今日の夏祭りは何喰おっかなーと幸せな悩みを考え始める。
そして夏祭り開始時刻間際となった。