南方戦争11
遅れましたぁぁぁ!!!!
「あの樹皇人は私の物です。分かりましたか?邪魔は致さないで下さいね?」
頬を三日月型に吊り上げ、デザイアが雷神へと詰め寄る。
「お、おう、でもオレだってたたか
「分 か り ま し た か ?」
「はぃ、、、」
すっと表情を消し、光彩がない瞳孔を開いたデザイアに見詰められた雷神は、元のシズクの気質が出たのか押し負けた。
「わかってくれたのなら良かったです」
再び表情を笑顔に戻したデザイア。彼女の内一人が雷神とOHANASIしていた間に、他の1499体のデザイアは、全てキリシマへと襲い掛かっていた。
「この虫ケラどもは何がしたかったんだ?」
所変わってヒュジャル砂漠側から少々離れた防壁外。キリシマは多少混乱していた。
早々にヒュジャル砂漠側の【水】の痕跡採集を終わらせたキリシマは、戦争の邪魔にならないように少し離れた場所に退いていた積もりだった。
だが、いざ時間が来てみればどうだろう。いきなり人型の不味い虫が襲いかかってきたではないか。
不可解以外の何でもない。そんな表情を浮かべつつも1499体のデザイアを吸収した彼の下に、最後のデザイアが翔んできた。
「初めまして、ですね。私、デザイアと申します。以後よろしくお願いいたします」
「虫ケラ風情が俺に話しかけて良いとでも思っているのか?」
深々とした礼を取ったデザイアを、キリシマは不機嫌そうにあしらった。
樹皇人としての自分を心の片隅で客観視できているキリシマ。普段であれば自身のあまりにも傲慢な態度に自分からブレーキをかけることができる彼は、デザイアが多少人間から離れた姿をしていた為に矯正する機会を見失っていた。
そのせいで他の樹皇人と変わらない対応を取り、樹皇人との再戦を望むデザイアを喜ばせることとなった。
「あはっ、そうです。そうですよ。それでこそ樹皇人です」
嗜虐的に嗤うデザイア。彼女は右手首に付けた腕輪をキリシマに見せた。
「コレ何だか分かります?まあ分かりますよね、貴方の手首にもついているんですから。
抑制の腕輪。レベルを現在値より上がらなくする効果を持っています。
私はとある上位者にレベルを1500以上にするなと言われましたのでつけておりますが、貴方はそうですね、、、大方これ以上レベルを上げてより心が樹皇人へと近づいていくことを嫌って、というところでしょうか?」
ニコニコと笑いながらデザイアは話続ける。
「ちなみにこの左手のは蓄積の腕輪と言いまして───
「もういい。まともに会話もできない虫ケラ風情に付き合っていた俺が馬鹿だった。」
ドンッと、デザイアの体を、地面から突き出す根が貫いた。
キリシマは不味い虫ケラを吸収しつつ、作業に戻ろうとし、
「あらあら。嫌ですねぇ。単なる世間話だと言うのに。私としては、嗚呼樹皇人だなぁと益々の期待をいだけたので悪いことではありませんでしたが」
吸収が終わらないことに気がついた。
キリシマが胡乱気に振り返ると、根に突き刺されつつも相も変わらずニコニコと嗤う体色の違うデザイアがいた。同じ色をしたデザイアが、ずらりと、その後ろにも大量に。
「そろそろ吸収を停めて貰いましょうか。いい加減にしないと新川に怒られるので」
デザイアは怠慢な動きでブスリと尾の針を自身を貫く根に突き刺した。
「ガッ!?」
瞬間、キリシマは血を吐いて倒れ込み、自然とデザイアからは根が抜け落ちる。
体色。全身黒一色から、紫の下地に黄色と青の斑模様という明らかに毒々しい色へと変わったデザイアの毒が、おおよそ普通のモノである筈がなかった。
『混沌の存在
デザイア レベル1500
職ジョブ 英霊祈祷師(8次職) レベル10
種族 ヒュジャル砂漠大蠍 レベル290
支配者階級の蜘蛛 レベル600
大衆蟻 レベル700
HP 715000
MP 349950
攻撃力 252450
防御力 525450
俊敏性 208950
知力値 305450
器用値 493950
精神力 508450
称号 虐殺者 サイコパス 混沌たる存在 その他』
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『混沌の存在
デザイア レベル1500
職 英霊祈祷師(8次職) レベル10
種族 斑点毒軍曹 レベル200
ヒュジャル神話級大蠍 レベル200
大衆蟻 レベル90
究極不完成体混合獣 レベル1000
HP 593000
MP 149450
攻撃力 428450
防御力 264450
俊敏性 187450
知力値 598450
器用値 372450
精神力 294450
称号 虐殺者 サイコパス 混沌たる存在 その他』
「あらあらあら。毒が効きやすいというのは知っていましたが、これ程ですか」
デザイアは嬉しそうにころころと嗤う。
「どうですか?全く回復できない気分は」
斑点毒軍曹。
対植物に特化した毒を持ち、その毒は成長阻害、栄養摂取阻害の効果を持つ。また、毒を受けた植物は周囲に斑点毒軍曹以外の虫を近づけない効果も持つ。
更には斑点毒軍曹は一度狩った植物で十年近く生存し、その間近づかなければ被害はないことから、作物の害虫駆除を行う"益虫"とされている。
無論、毒に当たれば人間でもほぼ確実に死ぬが。
「ふざ、けるな、劣等種、が」
回復阻害がなんだ?体にめぐる毒がなんだ?そんなことでこんな虫ケラに負けて良い筈がない。なぜなら樹皇人はこの世界を統べる支配者なのだから。
キリシマは起き上がると、憎悪の籠った眼でデザイアを睨み付ける。
「死ね。虫ケラ」
「あはっ」
壮絶な戦いが幕を開ける。
横から、上から、正面から、地面から。ありとあらゆる場所から蔦や枝、根がデザイアに襲いかかる。
樹皇人は俊敏性が低い。何故か。元来植物は動かないから?それもある。だが一番の理由は、
「嗚呼、これですこれ!この絶望的なまでの物量!!」
動く必要がないから。
成長を阻害されてなお圧倒的なまでの包囲攻撃。全身が眼であり、全身が成長点というふざけた樹皇人の特性が、数多のデザイアを蹴散らしていく。
避ける。避ける。避ける。ぶつかる。立ち止まったら即座に串刺し。そして成長し全身を破壊される。
そして、徐々に、徐々に、キリシマの動きが良くなっていく。
「あら?もう解毒され始めたのですか?」
疑問に数瞬立ち止まったデザイアの顔を貫き、ポリゴンとして消える少しの間に多少なりとも強引に吸収。
「これだから樹皇人は」
『話す』という無駄な行為に力を割いたデザイアの胸を貫き成長。全身に根を行き渡らせこれまたポリゴンとして消える少しの間に強引に吸収。
吸収。吸収。吸収。吸収。吸収。吸収。吸収。吸収。吸収。吸収。吸収。吸収。吸収。吸収。吸収。吸収。吸収。
「完治。どうした?虫ケラ。この程度で俺を殺そうとしたのか?」
たった10分。たったそれだけの時間で、キリシマは致死と言われる猛毒を完治してみせた。そしてもちろん、回数を重ねる度に完治は早まる。
「あら?もうですか?」
そしてデザイアは、
「嗚呼さすがです。そうです。これこそ樹皇人。理不尽の象徴です」
ゾクゾクと背筋を震わせ、恍惚的な笑みを浮かべていた。
種族【究極不完成体混合獣】
上限値レベル1000
レベル毎HP+0、MP+0、攻撃力+0、防御力+0、俊敏性+0、知力値+0、器用値+0、精神力+0
あらゆるものを取り込み、己に合成する。引き出せる性能はレベル毎0.1%ずつ上昇する。最大値100%
今回デザイアは、あらかじめむしり取っておいたろくみ達がつけている受信装置を取り込み、宇宙空間にある新川の発信装置からのエネルギー供給を受けられる様にしていた。
これにより、半永久的に吸収されても死なない体となる。ただし、機械ではないため、体に修復不可能な損傷が出た場合は普通に死ぬ。
種族【ヒュジャル神話級大蠍】
レベル毎HP+2000、MP+500、攻撃力+2000、防御力+1000、俊敏性+500、知力値+2500、器用値+500、精神力+1000
神話に出てきそうな蠍。とっても強い。
キリシマに最初に特攻することで自身の個体数を減らし、減った個体数だけ分裂。それと同時に蓄積の腕輪から溜め込んだ経験値を放出。いくつかの種族を進化させ抑制の腕輪で1500でストップさせる。
という行為をデザイアは吸収され切る前に行っていました。
次回は他のメンバーメインか引き続きデザイアメインかで迷ってます。