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神造人間2

 

「それでそれで?外で何があった?」


「貴様に応える義理などない」


「連れないなー。俺のこと嫌いすぎでしょ」


 このダンジョンのラスボスだと呼ばれた男、黛。アルマジには、彼がそう呼ばれるような大層な人物であるようには見えなかった。

 先ほどまでと同じ冒険者然とした格好をしているのも要因の一つだが、何より体に一切の異形的要素がないことが原因だ。

 初のプレイヤーイベントで乙姫を引きずった氷室 氷華然り、アストラル大陸のノーリを襲った白虎 羊牙然り、南陽王国の将軍であるアイス31号然り、人化スキルを使っている魔物系統の種族というのは、人化スキルを使っても完全な人には成らず、どこかしらに元の種族の特徴が残っているものである。

 だが、黛にはそれがない。アルマジの目には、黛も、彼の後ろにいるおそらくこのダンジョンの魔物であろう面々も、人間にしか見えなかった。


「そうだな。教えてくれればこのレベリングを手伝ってあげよう。俺なら経験値効率の良い魔物をここに集めることだってできる」


「貴様に応える義理などない」


「かなり魅力的な提案だとは思うんだけどな。それともこれじゃ対価として足りないと感じるほどのナニカである、とか?」


「貴様に応える義理などない」


「ん?」


「貴様に応える義理などない」


「昨日の夕食はクリケン鳥のシチューではない。そうだろ?」


「貴様に応える義理などない」


「会話もする気がないと。うーん困ったな」


「貴様に応える義理などない」


 黛に対し、騎士団の隊長がとった行動はBot化。つまりは何を言われても単一の言葉を返すことだった。


 ソラスティー大陸に広く知れ渡っている事実だが、黛は理論上()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それを可能としているのが黛の種族、『神造人間』である。

 種族特性としてありとあらゆる(ジョブ)スキルと(ジョブ)特性を扱うことを可能としている黛は、自身の目で直に一度見たスキルを50%の威力で扱うことができ、その割合は二度目で70%、三度目で100%となる。

 見るだけでスキルを習得でき、さらにダンジョン内であれば死んでもDPを対価に蘇生する。

 初めて黛の情報を入手した検証班の者は、彼のことをまるで『プレイヤーの上位互換』だと評した。


 そんな黛である。当然、詐欺師や尋問官など、情報を引き出すことに長けた(ジョブ)のスキルも体得している。

 よって、会話はしてはならない。いつ内容を誘導されるかわからないからだ。

 次いで無視もしてはいけない。複数の(ジョブ)特性によって強化された黛ならば、いくら無視を続けようと表情や視線、瞳孔のわずかな変化から情報を引き出してくる。

 だから、隊長がとった行動は正解であった。何か黛が音を立てたならば、『貴様に応える義理などない』と返す。これだけに集中すれば、言葉を言葉として認識する必要もなくなり、結果的に黛に与える情報を減らすことができるからだ。

だが、それと同時に失敗でもあった。


「埒が明かないな。シューレカ、外を見てきてくれ」


「よろしいのですか?創造主様への断わりもなく」


「責任は俺が持つさ」


「御意に」


 騎士団の面々はなるべく黛に情報を与えないように、黛の言葉を聞かないようにしていた。だから、黛の蛮行を許してしまう。


 黛の後ろに控えていたヒーラーの格好をした少女。彼女の両足がパカッと三股に割れ、ジェット噴射の要領でダンジョンの入り口へと向かって爆速で進みだした。


「ッッッ!!!!」


 反応は数秒遅れた騎士たちはシューレカを追おうとしつつも立ち止まる。動き始める直前なら未だしも、常に加速し続けている今のシューレカに追い付くことはどう足掻こうと不可能だからだ。


「・・・処罰ものの失態だな。これは」


 ぼそりと呟き、顔をしかめる騎士たちをよそに、アルマジは気付く。黛の種族は消して魔物系統ではなかったわけではなかったのだ。

「人形の領域」及びシューレカと呼ばれた魔物からして予想がつく。黛もまた、人形系統の種族であるのだと。


 一人納得するアルマジを他所に、場は騒然としている。

未解の究明活動録(アカシックレコード)】の新人、今回の戦争の相手と黛という男を知らない者たちは、漠然と状況の不味さを感じとりざわめいている。

 そして事情と黛の特性を知る中堅以上のメンバーは、頭を抱える。

 ダンジョン外で死ねばもう蘇ることができない故に滅多にはあり得ないが、黛は外にどうしても欲しいと思える(ジョブ)があると知れば、後でロロに怒られることも気にせず、危険を承知でダンジョン外に出てくることがある。

 ましてや西覇ソラスティーを半壊させた魔女のスキルを見れるチャンスだとすれば、黛は100%出てくる。

 それは、西覇ソラスティーにとっての最悪の状況、事情を知らない第三勢力の参戦に他ならない。



 暫くして、どうしようもない絶望的な状況に陥った騎士団と【未解の究明活動録(アカシックレコード)】の面々を愉快げに見つめていた黛の首に、高速でチップのようなものが突き刺さる。


 そこから情報を読み取った黛は、笑顔を浮かべる。

 400年前の黛ではダンジョンの奥深くに匿われていることしかできなかった存在。

 創造主(ロロ)のダンジョンの最深部まで独力でたどり着いた規格外。

 そんな存在のスキルを手に入れられるチャンスが来たと知って。


「気が向いたから、約束はしていないけどレベリングの手伝いはしてあげよう。俺でこれだけ楽しみなんだ。あんたらはもっと楽しみだろ?」


 アルマジの意識は、押し寄せ続ける大量の人形に呑まれるようにして、いつの間にか消えていた。












──────────────────

数日後ーーー


「何ですか?巴姐さん」


「ーーーーーー」


「え?マジですか?創造主(ロロ)に?」


「ーーー」


「あーどうしよう」


 黛は天秤に掛ける。明らかに面白そうな自身の創造主(ロロ)の修羅場を見に行くか、魔女のスキルを手に入れるか。


「うん。決めた」


 そして、黛は通話相手に自身の意思を伝える。


「姐さん、特等席用意しておいてください」







ということで黛くんは参戦しません。彼が出てくると大陸が危ないですしおすし。


『有象之チャシチルラスボス 西

 黛 天晴 まゆずみ てんせい レベル250000

 種族 神造人間

 HP 250000000

 MP 75000000

 攻撃力 200000000

 防御力 75000000

 俊敏性 100000000

 知力値 200000000

 器用値 200000000

 精神力 100000000

 呪力 2500000

 魔力 2500000

 称号 万芸達者 両刀無敗 ドールマスター その他』

種族【神造人間】

レベル毎HP+1000、MP+500、攻撃力+800、防御力+500、俊敏性+400、知力値+800、器用値+800、精神力+400、呪力+10、魔力+10

レベルアップに必要な経験値量0.1倍。獲得経験値量10倍。経験値獲得範囲広域化。

全ての(ジョブ)のスキルを習得可能(一見で50%二度見で70%三度見で100%。別に見なくても自力で習得可能)

この種族は神造人間以外の何者にも成れない。

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