配信者メルメル7
散々遅れた上に今回は短めです。すいません
「どっもー。メルメルです。今、緊急で動画を回してます」
私の今日二度目の配信は、小声で始まった。
今現在、私の心の中は殆どが緊張で、残りの少しが興奮で埋まっていた。
『今、緊急で動画を回してます』
黒サムネに白文字での重大発表と同じく、配信者になったら一度は言ってみたいセリフの一つ。それを今言えた。そのことで何ていうのかな、達成感っていうのか、高揚感っていうのかが、溢れ出てる。
───現状が本当に緊急事態じゃなければそれだけで胸を埋め着くしそうなくらいに。
「わ、私見覚えないんですけど、あの人たち誰なんでしょう?ウーノの衛兵さんたちや騎士の人たちと違う鎧ですよね。誰か、知ってる人居ませんか?」
今、私たちのギルドハウスの玄関の外に、知らない鎧をきた十数人の騎士が立ってる。
もちろん見覚えはないし、騎士にしょっぴかれるような悪いことをした覚えはない。最初はこのギルドハウスを建てたことかなって思ったりもしたけど、それだって領主様にきちんと許可証は貰ってる。
もう、何がなんだかわからなかった。だから、視聴者さんたちに聞くことにしたのだ。
>>ソラスティーの騎士だな
>>ソラスティーとこの騎士団
>>知らね
>>第七騎士団の副団長やんけ
>>知らない
>>騎士に偽装した盗賊とか?
>>ソラスティー所属の騎士
>>紋章からしてやっぱソラスティー?
>>大国のお騎士様やんけ
>>みんな詳しいなw
「えええええ!!!???そ、ソラスティーって、大陸の名前の方じゃなくて、国の、大国の方だよね?そこの、騎士様!?」
>>めっちゃ驚いてるwwww
>>そりゃいきなりギルドハウスに来られたらびびるよなwwww
>>可愛い
>>wwwwww
「ど、どうしよう。お通しした方がいいよね。どうしたらいいとおもう?」
>>そうしなよ
>>今のご時世ソラスティーに横暴な騎士はいないだろうし
>>招き入れるかどうかはおいといて、まずは用件だけでも聞いといたら
>>ソラスティーの騎士だからって信じるのもどうかと
>>大国に目つけられないよう上げるべき
まずは用件を聞く。うかつに信じない方がいい。その通りだ。
焦ってるのかな。そもそもいきなり家に上げよう!ってなるのがおかしいよね。うんそうだ。一旦落ち着こう。
「すー。はー。すー。はー」
深呼吸。1分ほどかけて、ゆっくり丁寧にやっておく。
よし、これで落ち着いた、、、とまではいかないけど、さっきよりは冷静な判断ができるはず。
まずは話を聞く。その後のことはその後考える。よし!
扉のポストになっているところから、目だけを外に向ける。そして目の前で話している一等豪華な鎧を来ている騎士に話かける。
あれ?私かなりおかしなことしてない?まあいっか。
「あの、私たちの家になんの用ですか?」
私の呼びかけが聞こえたのか、豪華な鎧を来た騎士が、表情に安堵を浮かべながらこちらをむく。
「ああ良かった。こちらはマスター様のお宅で間違いありませんか?」
「えっと、はいそうですけど、、、今マスターちゃんは留守で居ませんよ?」
「そうですか。ではこちらを渡して置いておいてください」
「・・・え?」
ぺらりと差し出された封筒の色は赤く、でかでかと召集状と書かれていて。
まるで、日本が戦争の時に出されていた赤紙を連想させるようなもので、、、
「強制ではないということを念頭においた上で、我が国の戦争へのお誘いです」
えっ?
「ご協力願えると返事を貰えましたら、あなたがたプレイヤーが第二陣と呼ぶプレイヤーたちが現れる日から7日後。その日までに我が国西覇ソラスティーとザイバル防王国との国境の街、ハルストまでお越し下さい。では、我々は他の方も回らねばなりませんので」
えっ?
「えっ?」
西覇ソラスティー。ソラスティー大陸の西半分を領土に持つ超大国。内海や山脈によってちょうどソラスティー大陸を縦に分断するラインの西半分のほぼ全てが国土。一応西岸部には公国や中小規模の国家は存在するものの、公国は実質の属国、中小国家は軽く踏み潰せる程度のものなので国土みたいなもん。
600年前、四方家の初代が潰えた後、一番最後まで大陸全土という国土を維持し続けた凄い国。