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閑話 ???

迷宮都市国家ルェーテ・???


「ふんふふんふふーん♪」


 青空を投射する液晶の下。数少ない実体を持った芝生の上で少女は鼻歌を歌っていた。

 少女の側には大きめで背負うことのできる鞄が置かれており、少女はその中に衣服や食料を詰めている最中(さいちゅう)であった。


 そんな最中(さなか)、ふと少女の手が止まる。彼女の表情は先ほどまでとは打って変わって不安気だ。


「お母さん、心配するよね」


 今している準備がなんのためなのかを思えば、そう思うのも当然であった。

 何せ今、彼女は家出の準備をしているのだから。

 少女には母親に愛されている自覚がある。

 彼女の母親はいつも家に帰るなり少女に抱きつき、そのまま数分間少女を撫で続ける。少女は鬱陶しいとは思うものの、それが愛情の表れであることは分かっているつもりでいる。

 幼い頃から少女が何かをする度に嬉しがり、悪いことをすればきちんと叱り、悲しいときには一緒に泣いてくれる。そんな母親が、少女は大好きなのだ。

 最も、お年頃な少女にはそんなことは気恥ずかしくて母親には伝えられていないのだが。


 少女はそんな母親を裏切って家から出て行こうとしている。心配されるだろうし、悲しまれもするだろう。

 それは少女にとっても辛い。けれど、少女には夢があった。母親への悲しみよりも重要なものが。


「お父さんは、、、心配するかな?」


 少女の母親も、少女の初恋の人も、少女の知る全ての人が偉大な人だと、立派な人物だと言ってきかない父親。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。彼は、少女のことを心配してくれるだろうか?


「お母さんも氷華さんもごめんなさい。私やっぱり、お外が見てみたい」


 けれど、少女は突き進む。夢を叶える為に。


 外にはどんな光景が広がっているんだろうか?火を吹く山なんて本当にあるのか?見渡す限り全て水で覆われた"海"なんて本当にあるのか?本物の夜空はどれ程綺麗なものなのか?少女のような人がたくさんいる"街"というのはどういうものなのだろうか?

 幼い頃から恋い焦がれ続けた、本当の世界。画面越しじゃないそれを、少女は見てみたい。例え、もうこの家に戻ることができなくても。


「それじゃあ、今まで育ててくれてありがとうございました!」


 今まで住んでいた家に向かってペコリと勢い良くお辞儀をした後、少女はパンパンになったリュックサックを背負う。

 そして、ぴょいと液晶だらけの空間、偽りの世界から抜け出して行った。外の世界を目指して。















──────────────────

数刻後、同地点・???


「───理解不能。理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能」


 数時間前ののどかな風景など見る影もない、荒れ果てた空間の中心で、だばだばと液体金属の体を垂らしつつ、ぶつぶつと呟く女性が1人。


「・・・これはどういうことだ?械理、説明しろ」


 その女性に対し、槍の矛先を向け、怒りを抑えつつも全身から漏れ出ている整った顔立ちの魚人らしき男が1人。


 二人を除いてその場には誰も居ないし、何もなかった。



「─ぁ、氷華。秀理が、秀理が居ないんです。私の娘の生体反応が何処にも、ないん、です」


 後ろに立つ氷室氷華の存在を思い出したのか、工藤械理は彼にすがり付く。振り返った拍子に槍が械理の喉を貫いているが、彼女が気にする様子はない。


「見ればわかる。俺も探したんだ。んなこととっくに理解している。それよりも───」


 氷華の姿がぶれ、まるで人魚姫のような麗しい女性の姿に変わった。


「ロロ様の娘を見失うとか、どうゆう了見だァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!」


 槍から水流が渦巻き、械理の体をミキサーのごとく切り刻む。だが、もとより械理の体は液体金属でできている。飛び散った先でも欠片どうしが結合し、形を取り戻していく。

 それを、氷華は無造作に槍で叩き潰していく。


「あんたの!お前の娘だってのは気に食わないけどさぁ!!!あの娘は!ロロ様の娘なの!!()()ロロ様の娘なの!!!!これでもし!もし死んじゃったらどうするの!!責任取れ!!死ね!!大体なんで私の娘じゃないの?!なんでお前なの!!なんで!!なんで!!なんで!!」


「どうしましょう氷華。秀理が居ません。イレギュラー発生。対処方法を検討。0件。ああどうしましょう氷華。どうすれば良いのか分かりません。現状が理解できません。どうしましょうどうすれば良いですか何を為せば秀理は戻って来るのですか」


 涙を流し、声を荒らげ、械理をぶち殺さんとする氷華。対して械理は混乱の境地。氷華の攻撃でHPは削れ続け、殺されかけているのにも関わらず嘆きどうすれば良いのかと氷華に問い続けることしかできない。


 ロロの持つダンジョンでも、ダンジョンマスターにすら隠され、隔離されたこの場所。他のラスボスが二人に気付き、全力で取り押さえ、その後の一大事に繋がるまであと数日間。






初恋が自分の父親に恋する両性変化の魚男(うおとこ)とかいうちょっと歪んだ経験をしている御影 秀理ちゃん16歳。お父さんに存在を認知して貰えるまであと数日。


閑話は終わったのですが、初心にかえってしばらく(20話くらい)掲示板回やって行きます。メルメルとかも書きたいですし。時系列はギルド勧誘の少し後あたりからです。その後第2陣編に入ります。

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