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英雄王5

 

「そんなもので何をするつもり?」


 アーニスは訝しんだ。

 ライメトゥスの取り出した指輪。あれが『至局の指輪』だというのは見れば理解できる。そして当然、その危険性もわかっているつもりである。

 だが、『至局の指輪』が危険なのは、使用者の最上位種が解釈次第でどんなことでも実行できるスペックを持っている上で、使用者が十全に種族特性を扱い切れる天性の才覚を持っている場合のみである。


 アーニスは断言できる。ライメトゥスにはどちらもないと。

 ライメトゥスが深淵種であることは存じているし、その最上位種との交戦経験もある。

 終焉峡淵へある鉱石の調達へ赴いた際、アーニスは一撃で木っ端微塵に葬り去っている。


 ライメトゥスには感覚的に種族特性を生かしきれる才能がないこともこの戦いでわかっている。

 幾度となく液状化すれば攻撃から逃れられたであろう場面があったのに、ライメトゥスは必死に人形で対処しようとしていたのがその証拠だ。


「貴女に勝って、結婚を認めて貰うつもりです」


「じゃあ、やってみせてよ」


『大破海』


 アーニスの疑問に対し、堂々と言い切ったライメトゥス。一()の迷いもなく返答したライメトゥスに苛立ったのか、アーニスは至局の指輪ごと破壊せんとばかりに攻撃を放った。


「『種族昇華』【深淵大明神】」


 種族【深淵大明神】

 深淵(アビス)種の最上位種。この種族最大の特性は、対戦相手の種族特性のうち一つを自身に発現させること。


 ライメトゥスは乞う。アーニスの種族【貧民街の越等種】、事前に検証班から知らされた特性の中から、()()を寄越せと。


 そして、


「『|衣装変更(ドレスチェンジ)』」


 幸運の女神は自分に微笑んだとばかりに笑って、引き抜いた大剣で破壊の波を切り裂いた。


 ───


 アーニスの表情を彩ったのは、驚愕だった。


(()()()()()()()()()()()())


 ライメトゥスの瞳に浮かんでいるのは、下60°の欠けた青紫色の二重円。間違いなく【貧民街の越等種】の種族特性を発現しているのであろう。

 だが、わからない。ライメトゥスの纏う碧の光が何なのか、何故二重円は蒼ではないのか。


 アーニスはライメトゥスが眼前に迫って来ているというのに、動けなかった。驚愕で「何故」という思考が止まらなかった。


 本能的に片腕で自身の心臓を貫きつつも考え続ける。あれは単一生命に発揮できて良いものなのかと。

 ライメトゥスの踏み込みからアーニスの元へ至るまで、アーニスには姿が一切見えなかった。一瞬にして移動したとしか思えない。

 アーニスの現在のステータスは五億。胴体視力もそれに順ずるものである。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『韋駄天』も、『縮地』も『臨界速(タキオン)』も、ライメトゥスは一切使っていない。単純にステータスのみで成している。

 たった一つで、アーニスのステータスを超過する。そんな、そんな理不尽なバフが合って堪るものか。

 いきおどりさえ感じさせられる。



 斬。



 ライメトゥスの大剣によって、細切れにされながらもアーニスの思考は止まらない。喩えHPが0を下回っても、意識の続く限り。

 自身の種族特性。アーニスは、昔友人に鑑定して貰ったそれを、記憶の中から今一度呼び起こした。


「──────ッッッッ!!!!!!!!」


(そっかぁ、そりゃあわかんないわけだよ。だって使えたことないし)


 人智を越える極大の強化。アーニスの思い出したその特性ならば、確かに可能だった。


(でもこれ、喧嘩売られてるよね)


「『大神の威』」


『大神の威』

 範囲の対象に、自身の攻撃力の1000倍の防御無視耐性貫通の多段ヒットダメージ。


 アーニスが斬られてから一秒後、何故か既に防御体制をとっていたライメトゥスに、玉光が放たれた。


 ───


 何かがおかしい。ライメトゥスの直感に警鐘が鳴り響いたのは、驚愕したままのアーニスを斬り刻んだ直後だった。


 全身の悲鳴を感じつつ、斬った勢いそのままにアーニスの後方へ走り抜けた際、ライメトゥスの脳裏に、身を守れという警報が鳴り出した。


『愛する異性がいる場合のみ、自身を超絶強化する』


【貧民街の越等種】のわかっている特性の中でも、明らかに特殊な効果。この効果こそが、ライメトゥスが引き当てた効果だった。

 これにより、ライメトゥスのステータスは全て1000万倍にまで引き上げられたが、ここで一つ問題が発生していた。

 あまりの過剰強化に、体側がもたなかったのだ。

 基本的に【深淵大明神】という種族は低スペックである。高いのはHPとMPの二つのみ。

 普段は、他種族の種族特性を自身に発現させれば発現させる程ステータスが上昇するという特性を持っているため、幾多もの特性を発現させることで逆に安定する。

 だが、今発現できている特性は【貧民街の越等種】一つのみ。強化が足りていなかった。


 持って三秒。それ以上は食い縛りなど無意味とばかりに体は崩壊する。そんな確信がライメトゥスにはあった。


 アーニスを斬るまでに0.6秒。アーニスが復活するでに合計1.6秒。

 残り一秒弱という極限状態で発せられた警告に、ライメトゥスは従った。


「あああああ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!!!」


 叫び、必死に耐え忍ぶライメトゥス。玉光が消え去った後、膝から崩れ落ちて地面へと倒れこんだ。


 そこへ、アーニスがやってくる。


「『大戦魏気』」


『大戦魏気』

 自身のステータスを1000倍。この効果はいかなる手段でも無効化されない。


「っは!ごほっ!っっぁ、は!」


 口から血反吐を吐きつつライメトゥスはふらつく腕で自身を持ち上げ、アーニスを見上げる。

 明らかに満身創痍。だが、ライメトゥスの目には諦めのかけらも映って居なかった。


「何故、そうまでなって私に立ち向かうの?」


 アーニスがライメトゥスに疑問をぶつける。その手のひらには、『大神の威』と同じ光の珠を浮かんでいた。


「愛している、から、です」


「他に三人も女を囲っているのに」


「それでも、私は、ミクロネシアさんを、愛しています」


 そこまで、言ってから、ライメトゥスは足をがたつかせながらも立ち上がった。

 そして、カタカタと音を鳴らしながらも、再び剣を構える。


「こんな状況でも、諦め切れない位には」







「・・・」










 すぅぅぅ─────


 アーニスの、大きく息を吸い込む音が聞こえた。そして、


「レディィーーーーースアンドゥジェントルメェェェェン!!!!!!!!!!!!!!」


 アーニスの口上が辺り一帯に響き渡った。


「いざお見せするのは世にも珍しき大移動!東から西へ、西から東の『大転移』さぁとくとご覧じろ!!」


 ドンッ!


 ライメトゥスの目の前からアーニスが消え、次の瞬間、ミクロネシアの眼前で跪いていた。


「ミクロネシア・バン・バルバドレイグ覇王陛下。御結婚、誠におめでとうございます」


 地面に左手の拳を起き、右手を心臓に当てて跪く、覇王国流の最上位の敬礼を行うアーニス。その口から発せられた挨拶に、ミクロネシアは思わず涙を浮かべつつ笑みを浮かべる。


「うむ。ありがとう。アーニスよ、今まで大義であった」


 数秒後、ノスタード王国内から覇王国四天王アーニスの姿は消え失せていた。






次閑話に行こうかなと思います。

深淵大明神の種族特性ちょっと強化しました。


アーニスのHP0以下からの復活の原理

ステータスマイナス値の解放によってステータスが一時的に0を下回ることが可能。

また、VTOはHPが0になると死亡判定となることを利用し、0を下回るだけでは死亡しなくなる。

アーニスよりライメトゥスの方が諸々のステータスが高い状態で滅多斬りにされたのと、自身で心臓を貫いていたのとで必然的にHPが0を下回る。

その状態で1秒後にHPが完全回復され元通り。

よってアーニスはHPをジャスト0にしない限りしなない。またその上で数段階の回復、復活能力を持っている。


【深淵大明神】

深淵種の最上位種。神は各種一柱しかつくことができないため、終焉狭淵内の深淵大明神を殺すことでしか正式に成ることは出来ない。

相対する相手の種族特性のうち1つをランダムで発現し、その発現数だけ自身を強化する。また、重複した特性は効果が強化される。

特性が発現する度に自身のHPMP以外のステータスを20%上昇(複利式)。この効果は他のバフ4つまでと併用できる。これらのバフはより上位の種族にしか無効化できず、自身のステータスはより上位の種族によってでしか減少しない。

毎秒2n%(nはレベル数)分HPMPを回復する。

ステータス値の上限を解放。

レベル毎HP+100000、MP+50000、攻撃力+100、防御力+100、俊敏性+100、知力値+100、器用値+100、精神力+100

相対する相手を倒すと効果が切れるので注意。





貧民街の越等種の倒し方。

無理(ヾノ・∀・`)。封印しましょう。


アーニス個人に関しての倒し方は、より上位の存在に協力を仰ぐか、覇王さまに説得させましょう。

アーニスは血が薄いので本来のものと比べると比較的楽に倒せます。


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