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送る道化のお迎え道中3

こっちが新しい方です。すいませんでした。

 

「よしっと。これで準備も万端。あとは待つだけか」


 箱に詰められた荷物を地面に置いたそのプレイヤーは、腕を伸ばして背伸びをする。ゴキゴキと凝り固まった背骨が音を出す。

 そんなプレイヤーに、他のプレイヤーが声をかける。


「おーい。こっちは終わったぞ。そっちはどうだー?」


「おう、こっちも大丈夫だ」


 処はノスタード王国東方、ヴィッシュナー辺境伯領領都、ハルゲン。ノスタード王国東方の要とも呼ばれるこの要塞都市の門前には今、多くのプレイヤーが集まっていた。


「しっかしほんとに来んのかね?噂のアーニス様とやらは」


「来るんじゃないか?検証班曰くアーニスは可能な限りまちを通って来てるらしいし、ハルゲンはノスタードの国境と王都の一直線上にある訳だし」


「つか、なんで町なんか通るんだろうなー。障害物も増えるし、時間の無駄じゃね?」


 話込んでいた二人のプレイヤーの会話に、またも他のプレイヤーが混ざる。彼も荷運びが終わったのだろう。


「目線があるとボーナスが入る類いの(ジョブ)なんだとよ。それで町出たら一気に加速するわけ。さらに、障害物があればある程速くなるとか言うゲテモノ仕様。これで町の中も一瞬で通り抜けられる」


「なーほーね。つか、お前それどうせ検証班の記録の受け譲りだろ」


「へいへい。さーせん」


「ま、それはいいとしてだよ。アーニスへの捕縛実験なんてする必要あんのか?こんな大量の機材だのなんだよ用意してまで。十中八九すり抜けられるってわかってるんだろ?」


 そのプレイヤーの目線の先には、先ほど自分たちが運んでいた荷物があった。


「アイテムなら駄目なのか、スキルなら良いのか、どのくらいの高位魔法までならすり抜けられるのか。そういうの正確に記録しとかないといざというときに実は効きましたなんてことがあったら困るんだってよ」


「まぁ、そう言われりゃそりゃそうなんだけどよぉ」


「おい。そっちの作業は終わったか?終わったんなら街の中に戻って装備の確認でもしてろ。そろそろアーニスが来るぞ!」


「あ、すんませーん」


「んじゃま、そろそろ戻るか」


「だな」


 いつしか防壁の外に立っているのが自分たちだけになっていることに気がついた三人のプレイヤーは、駆け足で門へと向かって行った。













 ──────────────────────


「シマロン、来たみたいだヨ」


 ハルゲンの防壁の上にある見張り台、そこには透明なカプセルに包まれた中東あたりの民族衣裳を着た女性と、液晶画面を覗き込むシロクマの毛皮を着た七三分けのメガネが立っていた。


「想定時刻より3分25秒速いってことは、、、予定と同じ時間に到着しそうだね」


「ゾネ」


「ゾネは良良いんだけど、、、なんで例アはガチャガチャのカプセルみたいなのに包まれてるの?」


「ハロゲンの奴に貰ったヨ。アーニスの火が密閉すれば届かないのかどうかを調べるのに使うゾネ」


「ハロゲンって、、、ああ、クラルハイムの。確かに、機神(アトラク・ナクア)の戦車もある程度の機密性はあったはずだし、どの程度の密閉空間なら届かないのかは調べる価値はあるね」


「そうネ。でもそれより、今はここからの出かたを教えて欲しいアル」


「出かたわからないのに入ったの!?」


 例アの入っているカプセル。どこにも繋ぎ目も穴もないそれは、確かに言われてみればどう出れば良いのか全くわからない代物だった。


「全く。後で一緒にリモコンか操作盤か探してあげるから今は────


「シマロン、後ろヨ」


 例アの唐突な呼び掛け。咄嗟に振り向いたシマロンが目にしたのは、自分に向けて炎の灯った掌を向けるアーニスだった。


「『弔いの浄焔』」


 ゴゥッ!!!!!!!!!!!


 弾けるようにして解放された浄化の炎が、勢い良く都市内を駆け巡った。

 そんな中、炎に直に炙られていながらも無事であったプレイヤーが一人。


「やっぱり隙間さえなければ大丈夫ゾネ。なら王都も巨大な結界で囲みさえすれば意外と行けちゃう可能性アル?」


 例アである。が、当の彼女は、逃げもせず敵であるアーニスの前で堂々と思考の海に潜っていた。

 最も、逃げようにもカプセルから抜け出せないという諦めもあったのかも知れないが。



「ヨ?」


 ふと顔を上げた例アは、自身の真正面に立つアーニスと目が合った。合ってしまった。


「さてここに取り出したるは1枚の布切れ。種も仕掛けも何の変哲もないはずのこの布切れが1、2、3と振るとあら不思議、あなたの手の中に!」


「おお!」


 アーニスが取り出した黄色い縁取りのされた白い布。例アに表側、裏側共に見せた後、軽く半分に折られたそれは、3度振られると、いつの間にか例アの手のひらの中に握られていた。

 ・・・カプセルの防壁を軽々と超えて。


「まだまだこれでは終わらない。この布切れ、私が1、2、3度手を叩くと鳥に変わるんです。さあ、では御一緒に」


「「1、2、3」」


 アーニスの堂に入った満面の笑顔と語り口調に釣られた例アがアーニスと共に手をたたく。すると、一枚の小さな布だったはずのものは、白い三羽の鳩へと変化していた。


「凄いヨ!上手ゾネ!!」


 キャッキャと喜んだ例ア。ここで、雰囲気の変化に気がつく。


「『鳥葬』」


「ヨ?」


 スッと真顔に戻ったアーニスが唱えると、一斉に鳩が例アを啄み始めた。


「痛い!痛いアル!ポは食べても美味しくないヨ!ペッするゾネ!ペッ!」


 一生懸命反撃する例ア。検証班でも武闘派として知られる彼女の一撃は、かなりの威力を誇っている。それこそ、外で様子を見ているアーニスに直で当たればただでは済まないなと冷や汗をかかせられる程度の威力はある。

 が、鳥には一切の傷がつかない。


「っ!これ、一度でも啄まれると無効化判定入る仕様ネ!?卑怯ゾネ!痛いアル!やめるヨ!!」


 それでも尚抵抗を続ける例アの喉を、一羽の鳩が食いちぎった。


「さて、取り出したるは1()0()()の布切れ。これを───


 数分後、街内に飛び降りたアーニスの背後には、大量のポリゴンが舞っていた。






鳥葬、出す予定はありましたがここまで惨くする筈では、、、


リベロ様は多分今後出てこれません。機会がないので

出るとしても掲示板でチラッと名前が載る程度かと

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