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送る道化のお迎え道中2

もう数時間早くが難しい

 

(まだ入国したばかり。手の内を見せるのは得策じゃない。こいつらは多少硬くて戦えば多少手の内を見せざるを得ない)


「じゃ、素通りすれば良いよね。『躱しの達人』」


 トッ


 アーニスは再び飛び回り、跳ねてノスタード王国の王都へと歩を進める。ただ、先ほどとの違いを挙げるならば、魔法や弓矢を一切警戒していないことか。


「兄ちゃん、当たらなくなった!」


「Shit!インダス、こりゃ投擲系無効スキルだ!更に無効化するスキルかアイテムかレベル差がないと効かない!」


「兄ちゃんどうにかできる?」


「俺習得してねぇ!」


「兄ちゃん駄目じゃん!!」


 撃ち続けるも当てられず、ユーフラテスとインダスがあーだこうだと言い争うのを他所に、一人立ち上がったチグリスがアーニスへと戦斧を振るう。


「『曲芸・軸無し回し』」


 脳天の真上から振り下ろされた戦斧を、アーニスは速度を一切変えずにチグリスの背中側へと回ることで回避した。その際、同時にチグリスの首を掴んでひねりつつ。


 ゴキィッ!


 トッ


 ポリゴンに換わりつつ倒れるチグリスを背に、アーニスは首都へとまた進み始めた。


「インダス」


「なに?兄ちゃん」


「俺、もうちょっとチグリスに優しくするわ」








 ──────────────────────


「それにしても、いいのDeeathか?覇王国の四天王相手に実験だなんて」


 ノスタード王国東部辺境。全長200m、縦にも20mはあろうかというバカデカイ戦車が粉塵を巻き上げつつ走っていた。


「下手に殺したりなんてしたら私たちめでたく国際指名手配犯Deeathよ?」


 そんな巨大戦車の上で双眼鏡を片手にぐちぐちと不平不満を垂れる白衣の少女、バチェラー。


「バチェラー様。そう仰有られましても我が創造主を含むギルド(アトラク・ナクア)の上層部の決定のこと。あなた様も参加なされた会議での決議、今更の不満はどうしようもないことかと」


 そうバチェラーを諫める少女は、何処と無くロロ主宰のプレイヤーイベントにてシュウに使い潰された少女、D3(デーサ)に似た面立ちをしていた。


「それに、仮にもこの星14位の国力を持つ国の四天王。ほぼ軍事力によって大国となった彼の国の上層がこの程度で死ぬ筈が御座いません」


「ふーん」


 少女の言葉を聞き、バチェラーはバタつかせていた足を止め、少女方へ視線を向けた。


αB(アビー)、それは貴女の意見Deeathか?それとも博士(ドクター)の意見Deeathか?」


「無論わたくしめの意見に御座います」


「そうDeeathか。なら私も殺す心配はしないことにするのDeeath」


「然様に御座いま──────


「『弔いの浄焔』」


 アビーの言葉を遮るようにして放たれた穏やかな、されど壮大な炎によって、内外を含め戦車周辺のプレイヤーの生命反応が消え失せた。


「対人殺戮戦車B21ca権限管理者の所在、不明(ロスト)。次席、不明(ロスト)。以下同様に不明(ロスト)。リスポーン迄の遅延を確認。B21ca指揮権を一時的に識別番号αB(アルファビー)へと移行致します」


 アビーの瞳に幾多もの数字の羅列が現れ、流れていく。僅か0.0001秒にして膨大な情報量を把握、処理仕切った彼女は、ナイフでジャグリングを行うアーニスへと視線を向けた。


「唐突に大層なご挨拶を受け、混乱の至りの最中恐縮に御座いますが、あなた様は覇王国四天王アーニス様とお見受け致します。間違いありませんか?」


「『連々総射』」


 挨拶を無視して放たれた無数のナイフ。鋭く研がれ、当たればただではすまないであろうそれを、アビーは瞬き一つせずに全て顔面で受け止めた。


「わたくしは指揮個体識別番号αB。通称してアビーと呼ばれております。以後お見知りおきをば。

 さて、わたくしはあなた様の攻撃を二度程受けさせて戴きましたが、どうも何ら痛痒を感じることが出来かねませんでした。また、B21caに於いても損傷はあまり見受けられません。然らば成る程、運営を名乗る方々が仰有る"プレイヤー殺し"なるものもある程度理解できるというものです。様はプレイヤーに関する"何か"に特化した(ジョブ)構成であると。相違ありませんか?」


 小首を傾げるアビーに、再びアーニスはナイフを投擲する。体の間接や首といった弱い部分を狙ったその投擲も、アビーは一切の関心を向けずに受け切った。


「肯定と判断させて戴きます。では、どうぞ先をお急ぎ下さいませ」


 受け切った後、何故か道を開け、先に進めと言うアビー。理解不能なその行動に、アーニスの投擲が止まる。


「なんで?」


「わたくしには足止めの指示は出されておりませんので。あくまでわたくしの成すべきことは実験の補助と完遂を見届けること。実験主導者が不在である以上、待機こそが最もわたくしめが成すべきことかと判断致します」


「・・・あっそ」


 アビーの言い分に数秒硬直した後、アーニスは再び王都へと進み始めた。






















 アーニスの後ろ姿を眺めつつ、アビーはボソリと呟いた。


「足止め等できなくはないのでしょうが、言ってしまうならば非常にめんどくさいのですよね」



シュウの人形sは基本皆身勝手。シュウに使い潰されることが分かってるから

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