表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/164

送る道化のお迎え道中1

 

「情報はどの程度出揃っているんだ?」


 男の一声で、液晶画面へと顔を向けていた者たちが一斉に振り向く。検証班の者たちだ。


「検証王さんちっす。今分かってるのは攻撃方法と推定の(ジョブ)くらいですね。他はなんとも。

 あー種族は人間系列らしいんですけど、それだってルイニーエみたく変異とか色々ありますし、一概にどうとは」


「画像は?」


「これです」


 検証王と呼ばれた男に向かっていくつかの画面が向けられ、アーニスの移動中の動画や攻撃シーンなどが一斉に映される。


「、、、軽業師か」


「そうですね。我々も同じ見解です。」


 画面の中で飛び跳ね、回転し移動するアーニス。通常であれば走った方が速いであろうその移動は、何故か驚異的な速度で行われていた。

 これを検証班は、芸に特化した(ジョブ)に就いている為だと考えた。

 (ジョブ)に就けばその(ジョブ)が特化したものに補正が付く。

 剣士であれば剣の攻撃が他の(ジョブ)よりも鋭く、攻撃力が高くなったりする。同様にして、回転や物から物へ跳び移る動きに特化した(ジョブ)に就いていれば、走るよりもそうした動きの方が速く疲れにくくなる。


「攻撃は炎か。魔法、いや道化師であれば(マジック)の可能性もあるか?」


「そうですね、道化師であれば可能だと思います。でも、道化師だと───」


「この動きでこの速度を出すには補正が足りない、だろ?」


「分かってるなら言わないで下さいよ」


「可能性として挙げただけだ。それに、併用している可能性だってないわけではない」


「同系列の(ジョブ)をですか?」


「同系列だからこそだろー?お前他の班の発表資料読んでないのか?相乗効果結構乗るって話だったじゃん」


「おいお帰りナス!今検証王さんと話てんだろ!割り込んでくんな!」


「いーじゃん。議論は話題を深めるぜ?」


「そういう問題じゃなくてだな、」


 先ほどまで検証王と話していた男は、突っ掛かってきた別のプレイヤーへと説教を始める。そこに、他のメンバーたちも混じりだし、いつしかその場のほぼ全てのメンバーが言い争いに参加していた。


「良いんですか?止めなくて」


 その光景を微笑を浮かべつつ眺めていた検証王に、参加していなかった一人のプレイヤーが話かける。


「殺伐としているよりは良いじゃないか。それに、あいつらはあいつらで分別がつく。ほうって置けばその内作業に戻る」


「おーし。良いだろう決闘だ。俺の方が正しいって判らせてやる!!」


 検証王がその班のメンバーを擁護する発言をした直後、決闘が宣言された。


「分別、ついてないみたいですけど」


「、、、はぁ。だな。止めてくる」


 検証班は今日も元気に考察と検証を進めている。











 ──────────────────────


「検証班は?」


「まだイベント始まった直後だぞ?そんな直ぐに(ジョブ)だのなんだの割り出せる訳ないだろ」


「マ?検証班も人間だったか」


「たまに人外もいるけどな」


 所変わってノスタード王国の東方国境付近。アーニスを止めるべく集まった幾人かのプレイヤーが会話をしていた。


「つか、鑑定すれば判るくね?」


「だったらお前がしてみろアホ。どうせアイテムかレベル差に阻まれるだけだって」


「兄ちゃんたちさ」


「「どうしたインダス」」


「そろそろアーニスがこの辺りを通るんだから、もうちょっと気を張っててよ」


 国境付近で待機していたチグリスとユーフラテス。二人のプレイヤーは弟にジト目で叱られていた。


「だぁい丈夫だってインダス。お前みたくβのころからこのゲームやってた訳じゃないけど、兄ちゃんたちは追憶イベで強くなったんだぜ?」


「そうだって。ユーフラテスは別にいいけど、もうちょっとこのチグリス兄ちゃんを信じ、っな」


 ガキィィィンッッッ!!!!


 チグリスはしゃべり終わるや否や姿がかき消え、数メートル離れた場所で戦斧によってトランプと競り合っていた。


「四天王さんクラスになるとトランプで斧と打ち合えるん?ヤバない?」


 戦斧を伝って届くアーニスの力強さに若干の冷や汗をかいたその瞬間、チグリスは自身を支えるものを失い前のめりに倒れた。

 倒れなからも考える。一瞬の内にチグリスの視界から消えたアーニス。こいつを止めるにはどうするべきか。


「ユーフラテス!」


「分かってるよバカ野郎!」


 何らかの方法でチグリスのに突如出現したアーニスは、再び走り出そうとし、後方に跳んだ。チグリスを踏みつける形となったが、彼女は気にしない。意識は直前まで居た場所に突き刺さった数本の矢に向けられていた。


「『速射十連』」


 ドドドドドドッッッ!!!!


 ユーフラテスから放たれた十本の矢を、アーニスは飛び回る様にして回避する。内数本がチグリスに刺さっていたが、ユーフラテスは気にしなかった。


「『魔炎球』」


 ユーフラテスの矢に続き、インダスが魔法を放つ。回避するために移動していたアーニスは、いつの間にか王国側から多少の距離を引き離されていた。


「式に参列して貰うのは構わないんですがね、勝手に新婦を連れ去られるってなると困るんですわ。分かってけれます?」


 ユーフラテスはアーニスに向かって再び弓に矢をつがえると、ニヒルな笑みを浮かべて言った。









チグリスユーフラテスの双子に弟のインダス君。きっともう一人弟か妹に黄河くんちゃんがいるに違いない。

二人が活躍できるのは今回だけです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ