動き出す
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーー」
迫り来る激痛と共に脳に流れてこんでくるのは、
『懐かしい、今まで思い出せなかった記憶。』
『コイツとの出会い。』
コイツが何なのか。
精霊術式。
そして....
「ッ...。」
一応は痛みは引いた。が、まだその余韻が残っていて、こめかみを添えていた。しかし、そんなことよりも、驚愕の事実が多過ぎてそれどころじゃない。
「色々聞きたい事があるが、まさか俺がお前と...炎を司る神獣精霊 不死鳥と出会えっていたなんてな」
と、目の前にいる全長3メートルくらいの青色の鳥に言った。
【積もる話しは落ち着いてからだ。もうすぐで時が動き出す。さっき送った精霊術式を使う】
【動き出した瞬間に放ってもらう。無論この状態の我ならば、あんなのすぐ片付くのだが、それだと後が面倒になる。よって、我はその紋章に入る】
【では頼んだぞ火聖】
一方的に話しを切られた...
何をしろって?
時が動いた瞬間に精霊術式を放てと...はぁ!?
「おい?!ちょっt」
またしても最後まで言わせてもらえず...
停止した世界に再び動きがつき始める
動き出した世界では、黒炎のブレスが目前に迫っていた。
(こういうときどうすりゃいいんだっけ?体ボロボロで避けれないんだけど!?)
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい
「あぁーもう!!」
ふとその時、ある術式が脳裏を過ぎった。
俺がそれを口にしようとした瞬間、世界はスローモーションになった...
「炎よ、我に敵を穿つ力を与えよ...」
そこまで口にして、右の掌をブレスの方に向け...
俺の漲る魔力は右手に収束し、バスケットボールサイズの青色の炎の球体と成り、
「迦具土...」
そう呟くことで放たれたのは、自分でも引くレベルの物だった。
その球体からは想像できないほどデカい
それは...蒼炎のレーザービーム...
ただし、大きさは3メートルを超える...
蒼炎の光線は、黒炎のブレスを呑み、それすらも燃やす。その勢いは留まることを知らず、漆黒の竜すらも呑み込み、更にフィールドを覆う精霊術の結果をも貫通し、訓練場も貫き、そのまま空に向かって霧散した...。
あまりにも呆気なく、バハムートの死骸すら残らず、ソレがいた場所には黒の炭の跡しか残っていなかった...。
一部始終を見届けていた僅かに残った生徒と教師すらも、ただ唖然としていた...
そんな注目の少年は久しぶりに殆どの魔力を消費してしまった為に、力尽き倒れた。笑みを浮かべて。少年が倒れる寸前に彼は、見たことない少女と目が合った気がした...。
その後、残っていた生徒と教師が少年に駆け寄った所で、精霊騎士団が到着し、状況確認、調査が開始された。
少年はと言うと、魔力過剰消費による気絶していること以外には大したことないと《精霊騎士団団長》と思われる男に判断され、保健室に運ばれた。全身打撲は勿論、所々骨が折れているはずなのに...。
運ばれる少年を見てその男は微かに微笑んでいた。