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魔法使い、パーティーを探す

 ギルドのお姉さんに先を心配されながらも、僕はパーティーを探すために右往左往していた……。


 これまでの戦績を振り返ってみよう。


 ◆◇◆◇


 パーティー参加申込成績……10戦10敗


 いや地獄だろ。まあ、厳しいとは思っていたよ?でも、まさかここまで辛いとは……。


「あ〜、魔法使いか〜、うちは剣士のパーティーでやってるからさ!貴重な回復役かもしれないけど、君回復魔法は使えないよね?」


 ずっとこの調子だ。メルスティアでは使えたんだよ?でも、こっちの世界、クルータスでは試したこともないからわからない……。


 攻撃役では、ランサーや剣士の方が優遇されているから、必然的に回復を求められる魔法使い。しかし、回復魔法は中級魔法に分類される。この、魔力が希薄な世界では、中級魔法を発動させるのはなかなかに困難だろう……。


「よし、まずは自分の能力を上げることを優先しよう」


 とは言っても、ギルドのお姉さんが言っていた通り、僕のレベルはマックス。ステータスも見てみよう。


 ◆◇◆◇


 メイス=カミアール   Lv.99


 HP……1300


 物理攻撃……150 魔法攻撃……3400    魔力量3200000 ジョブ……魔法使い


 物理防御……300 魔法防御……4620  得意武器……杖


 スキル……魔導師の刻印、魔眼



 どうだろうか。Lv.99でも、得意分野の数値は1000程度で止まるらしいのだが、なんと、魔法系は3000以上を叩き出している。魔力量は、まあおそらく最強だ。しかし、なんと言っても物理系が貧弱……。物理系の数値はLv.30程度の能力らしい。とてもレベルマックスの能力とは思えない。


 ちなみに、この適性武器欄は、自身が得意とする武器を表すようだ。これ以外を装備すると途端に能力値が低下するらしい。


「とりあえず杖を買ったけど、店の店主もあんな驚くことないのに」


 杖ですか?本当に杖でいいんですか?ってしつこく聞かれた。やはり魔法が浸透してないのがよくわかる。




 まずは、ジスカール平原にやって来た僕。ここは無駄に広いので、多少無茶をしても平気だろう……。


「ファイアは使えたんだ、他の魔法は〜」


 手当たり次第、魔法を発動させてみる。最上級魔法の『ホーリー』や『デスグレイブ』なんかは、試すまでもなく無理だとわかる。望みが高いとすれば……、


「ウォーターと、クエイク、あ、ヒールはギリ使えるな……、ってなんだよ、ヒール使えたじゃん!」


 ……、どうやら発動できるのは中級魔法の中でも比較的簡単なものだった。補助魔法なんかは大半が初級に分類されるので大体は発動可能だ。あとは、中級の全属性の攻撃魔法は無事使えることが判明した。ヒールが使えることは、もっと早くに知りたかった。


 魔力が薄い世界でも、発動の仕方を工夫すれば、ある程度は発動できるようになるっぽい。それでもしかし、メルスティアにいた際よりも数百段能力は低下していた。


 とりあえず、あの憎きゴブリンを数百体倒したところで、魔法の使い方もだいぶ慣れたので、今日は帰ることにする……。もう、夕暮れになって来たしな…。と、その時、


「あ、あの!す、すみません!助けていただけませんか!?仲間が大変なんです!」


 背の小さい、青色の髪をした女の子が、僕に声をかけて来た。年齢は僕と同じくらいかな?


「あ、すいません、僕、魔法使いなんですよ〜、多分、お力になれませんよ?」


「い、いえ!それでもいいんです!とにかく助けてください!」

 

 え、それでもいいのか……。でも本当に困ってるっぽいし、僕でいいなら……。


「はい、わかりました!場所はどこですか?」


「あ、ありがとうございます!こ、こっちです!」


 女の子に連れられ、僕はこの子の仲間がいる場所へと向かった……。


「グオオオオオッ〜!」


「こ、ここです!今、シャドーベアに襲われてしまって!」


 今までとは、明らかに格の違う敵が現れていた。どうやら剣士の男の子が1人、ランサー女の子が1人、あ、そしてさっきの女の子も、アサシンだっけ?、戦いに加わったみたいだ。3人でなんとか、でかい熊の攻撃を凌いでいる様だった。しかし、限界は近いだろう……。


「みなさん、下がってください!あとは任せてください!」


魔法の威力を、魔導師の刻印で高めているので、熊の近くにいると危険だろう。あとは、ゴブリンを狩りまくった時を思い出して……、


「まずは魔眼!」


「グガァッ!」


 よし、完全に動きを封じたぞ!あとは……、


「サンダー!からのサンダー!」


 効率よく魔法の威力を高めるには、それぞれの手で同じ魔法を放つと良いと、ゴブリン狩りで学んだ。サンダー1発では厳しいが、2発なら……!


 ドーーーンッ!ジジジッ!バーーーンッ!


「グオッ〜!」


 嘘、まだ足りないか!こうなったら……、


「ウインド!からのウインド!」


 露出した岩肌に向かってどでかい熊をウインドで叩きつける。


「グォォォ〜!グガッ」


 バタリ、ふぅ〜。どうやら倒したみたいだ。結構手強かったな……。


「……、めちゃくちゃ強いんですね!それも魔法使いなんですか!?すげーよ!」


 剣士の男の子が僕に詰め寄ってくる。


「本当にすごいです!シャドーベアを一方的に倒しちゃうなんて驚きました!」


 槍を持ったランサーの女の子も詰め寄ってくる。


「あ、あの!す、凄かったです!か、カッコ良かったです」


 僕を呼びに来てくれた、アサシンの女の子も詰め寄ってくる。


「いえいえ、そんな、かっこいいだなんて……、大したことないですよ!それより怪我はないですか?」


 かっこいいなんて言われて、拍子抜けしちゃった。でも、見たところそれぞれ、多かれ少なかれ傷を負っている様だった。


「今治療しますね、ヒール!からのヒール!」


 両手で魔法を使うなんて慣れないな〜。でも傷が塞がっている様なので、まあ良しとしよう……。


「無事塞がりましたね、良かったです!それじゃあ、僕はこれで」


 この人たちもパーティーを組んでたな〜。邪魔しちゃ悪いし、今日は帰ろう……。明日からもまたパーティー探しか。退屈な日々だ……。


「待ってください!」


 突然ランサーの子が僕を呼び止める。


「まだどこか痛みますか?良かったら見せて……」


「違うんです!助けていただいただけでなく、治療もしていただき本当にありがとうございました!」


 ランサーの子が深く頭を下げる。


「俺もすごく助かりました!ありがとうございます!」


 剣士の男の子も頭を下げ、そして……。


「あ、あの私からも!急に呼び出したのに、駆けつけていただいて、あ、ありがとうございます!」


 アサシンの子からも、結局3人から頭を下げられてしまう僕。


「ちょっと、そんな、頭をあげてください!別に当然のことをしただけです!」


 そういえば、こっちの世界に来てから、初めて感謝された気がする。なんかすごくあったかいな……、この気持ち。


「今、パーティーに所属してるんですか?」


 男の子が僕に問いかける。


「あ、いえ、今日冒険者になったばかりなので、まだパーティーは組んでいないです……」


「え、今日が初日なんですか?それでこんなに強いんですね!もしかして、天才くん?」


「そんなんじゃないですよ、今日だって、めちゃくちゃパーティー参加断られましたし」


「え、どうしてですか?こ、こんなに強いのに……。」


 青色の髪の子が、心底不思議そうに僕に聞いて来た。


「この世界、魔法って珍しいじゃないですか?だから、能力がわからないっぽくて……、あと、魔法を使うこと自体効率が悪いって言うか……」


 魔法1発放つよりも、剣や槍で一撃放つ方が効率がいいだろう。流石に威力は魔法の方が強いが、この世界では魔力消費も激しいので、考えて使わないといけない面も考慮すれば、やはり武器の攻撃の方が単純で明快だ。


「いやいや!さっきのシャドーベアも、俺たちだけだったら絶対勝てなかったですよ!良かったら俺たちのパーティーに入ってくれませんか?」


「ちょっとアンタ何言ってるのよ、この人と私たちじゃ明らかに力不足だわ、さすがに……」


 嘘!?、このチャンスを逃すわけには……!


「え、いいんですか?ぜ、是非お願いします!パーティーに参加させてください!」


 千載一遇のチャンスキターーー!このままパーティーに参加すれば、晴れて僕は冒険者だ……


「本当にいいんですか?私たちじゃ、あなたの足手まといになりますよ?」


「そんなことないですよ!僕だって迷惑をかけちゃうと思いますし、それでも入れてくれるなら、こっちからお願いします!」


「いやいや!俺らが頼みたいくらいですよ、ぜひ入ってください!俺はキアム=ステイス、剣士をやってます!」


「私はミライア=サイリス、ランサーです!よろしくね!」


「あ、あの!ティア=ロイスリーって言います……、アサシンです、よ、よろしくお願いします!」


「僕はメイス=カミアールです、まあ魔法使いです。せっかくパーティーになったんですから、敬語じゃなくて、もっとフランクにいきましょう!」


「そう……ね、じゃあよろしくね、メイス!」


 そう言って、ランサーの子、ミライアと握手を交わす。順に剣士のキアム、そして青髪のティアとも握手をする。


「それじゃあ、メイスも入ったことだし、今日はメイスの歓迎会だ!」


「もう本当、調子いいんだから!お金はどうするのよ?」


「わ、私が出します!こ、こんな時のために、貯金はしていましたから!」


 急にティアがお金を出し始める。こっちの通貨単位は金貨、銀貨、銅貨だ。ティアは、銀貨10枚を持っていた。明らかに、大事そうにとっている銀貨っぽい。必死にタリーを握り締めている様子がとても可愛らしい……、って何を考えているんだ僕は!とりあえず止めないと……、


「え、悪いよ!それに、今日はゆっくり休んだ方がいいよ……!また明日、ギルドで待ち合わせよう」


 いきなり歓迎会なんて開いてもらっては横着すぎる気がするので、ここは遠慮しておく……。


「え〜、そうか〜、それは残念だな〜、ま、明日やればいっか!確かに俺、ちょっと疲れちゃったから、今日は休もうかな!」


 みんなもキアムの意見に賛成らしく、顔色からも疲れがうかがえた。


「それじゃあ、僕が送るよ、王都でいいんだよね?」


「え、いいけど……、どうやって?」


 ミライアが不思議そうにこちらを伺う。


「一応魔法使いだからね、テレポートくらいは使えるよ」


 そう言ってテレポートを発動させる僕。4人を青い光が包み、その次の瞬間には王都に到着していた。


「す、すげぇ〜!本当に魔法が使えるんだな!」


 キアムが感嘆の声を上げる。それにつられてかミライアも、喜びを隠せないかのように言う。


「本当に凄いのね、メイス!一瞬で着いちゃった!」


 ティアに至っては、目をぱちくりさせ、周りを確認している。いまだに信じれない様子だ。


「いやいや、魔法使いなら基本的なことだよ」


 時計を確認する。もう夜の9時を過ぎたあたりだった。


「ごめん、今日泊まる宿を探さないといけないから、ここで帰るね」


 流石に野宿は勘弁したい。今から行っても見つかるかどうか……。


「今から探してもどこも空いてないんじゃない?それなら、私たちの使ってる宿屋に来れば?あそこなら空きがあったはずだよ!」


 あぁ、ミライア様、あなたは神ですね。


「え、いいの!ありがとう、すごく助かるよ!」


 銀貨、銅貨でもいいや、あるかな。道具袋は、魔法使いなので別空間に収納できる。お金は〜、ジャラジャラ、え、金貨10000枚!?嘘!流石に持ち過ぎじゃない?一体どこで……、ガサガサ、一通の手紙が手に掛かる。


『これだけあれば当分お金には困らないよね?テヘペロッ♪』


 カイオスさん!あなたは少しやりすぎですよ。


「宿屋って一泊どれくらいかかる?」


「銅貨1枚で1泊できるけど……、もしかしてないの?」


 違うんだミライア、多分お金はありすぎるんだ……。


「金貨しかないんだけど、どのくらい泊まれる?」


「え!金貨なんか持ってるの!?銅貨10枚で銀貨1枚で、銅貨100枚で金貨1枚だから、100泊できるわ……」


「おいメイス、どこで金貨なんか手に入れたんだよ!」


 キアム、そんなに食いつかないで。よし、ミライアなら……、うわ〜、完全に怪しんでるよ。目が怖いんだけど。


 「いや、はは〜、なんでもないんだ、地道に稼いだお金だよ……、ティアもそう思うよね?」


 ここはティアに頼るしかない、神に連れてこられて、ここに来たなんて言って、怪しいと思われたらせっかくのパーティーメンバーが離れてしまう……。


「そ、そうなの?ぬ、盗んだのかと思った……」


 うん、ティアは勝手に僕を犯罪者にしたいらしい。僕、なんか恨みを買うことしたかな。


「ち、違うよ!ま、魔法使いは珍しかったから、魔法を使って働いてたんだよ!結構仕事ができたっぽくて、凄いもらえたんだよ!あとは、そう、お母さんからの仕送り!お母さん心配性でさ〜、はははっ」


「そうなの?まあでも、メイスがお金を盗むなんてありえないからな〜、ちゃんと稼いだんだろ?」


 ありがとうキアム。僕は君の優しさを忘れないよ。僕は大きく頷く。


「じゃあ、とりあえず宿屋に向かいましょうか」


 3人に案内され、僕はみんなが泊まる宿屋に向かった。金貨で代金を払った僕には、VIPレベルの部屋を用意され、豪華な夕食が提供されたことは言うまでもない。部屋は広過ぎたので、女子2人に使ってもらい、僕とキアムは一緒の部屋で寝て、夕食はみんなで美味しくいただいた。やっぱり豪華な生活は僕には向いてないと実感した。


 こうして僕の激動の異世界生活1日目は幕を閉じたのだった……。


 






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