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第8部

挿絵(By みてみん)

 メハネ執事が帰って来て、これで日常が戻った、と思いきや

パピヨンが言った。

「あたしのお気に入りのぬいぐるみを現世のあなたのボロアパートの部屋に忘れてきたわ。

 取りに行きたいからつきあってよ」

オオヨドハジメはいやいや付き合うことになった。


「マリコはどうする?」


「私はもう現世には二度と戻らないから」


「まあいいや、わかった、じゃあ行ってくるね」

とパピヨンに強制的に連れられて、オオヨドハジメは現世に帰った


「現世とハルモニアは時間の流れが違うから、私の魔法で、戻れる限り出発した時間に近く戻るわ」

ということで、現世に戻った時間は、三人が出発してから1秒後だった。


「自分たち自身が存在していた時間以前には、私の魔法では戻れないわ」


「うん、それでいいんじゃないか? ぬいぐるみ取りに行くだけだろ?」オオヨドハジメは少しめんどくさそうに言った

オオヨドハジメの部屋に帰ってみたが、パピヨンのぬいぐるみは……無かった


「そう言えば、シノムラマリコが訪ねてくる少し前、あなたがコンビニにあたしと二人分のお昼のお弁当を買いに行って私一人だった時、あなたの妹という人が訪ねて来たわ」


「え?」


「13歳位の女の子よ。10分ほど居て、オオヨドハジメならすぐに返ってくるよ、って言ったのに、また出直すわ、とか言って帰っちゃったよ」


「どっちが訪ねて来たんだろう?」


「どっちって?」


「僕の親はそれぞれ再婚した相手との間に、どっちも僕より二つ下の女の子がいるんだ。どっちも相手の連れ子だけど」


「ふうん。あの子帰るときにポケットに何か入れてたんだ。

 あの大きさ、は私のお気に入りのぬいぐるみだったかもしれない……」


「そのとき、パピヨンはその魔女の格好で妹と話したの?」

ーーパピヨンは魔法で、ときどき気に入って月並高校の女子制服を着て鏡で見て喜んでいるーー


「いいえ、丁度、魔法で月並高校の女子制服を着てみて鏡見てた時だったわ」


「どんな会話したの?」


「なんだっけ、面倒臭いから、うんそうだよ、と返事したけど……」

たしかね……といいながらパピヨンは


「お兄ちゃんのクラスの学級委員長ですね? お兄ちゃんがずる休みしたんで様子見に来たんでしょう?て聞かれたんで、うん、そうだよ、って返事しといた」


「げえ!」


「わーーん。わたしのぬいぐるみーーっ!」


取り合えず、父の家を訪ねてみる。

携帯電話の電話帳に登録してあった住所をネット地図に表示させた。

電車で行こうとすると、パピヨンが自分のアンクレットを大きくして「乗ってよ」と言った。


「こっちのほうが馬より楽だね、ファンタジー世界ではこれなぜ使わなかったの?」


「気分の問題!」


上空からすぐに父の家に着いた。

午後3時位だった。

ーー父はあと1時間で警備員に出勤という状況で食事をしていたーーオオヨドハジメを見て


「よお、どうしてる? 元気そうで良かったよ。どうだ、この家に来ないか? 丁度夏休みだなぁ」

ーーそう言えば、今日は夏休み前の一学期の終業式の日だったーー

父に手を引っ張られて、家に入ってみたが、ボロいアパートに二間でダイニングキッチンに小さな風呂とトイレ。

クーラーつけて妹と新しい奥さんがテレビを見ていたが、オオヨドハジメを見て「ああ、こんにちは」と言ったきり、またテレビを見始めた(母娘そろってヤンキーぽい恰好してる、根はやさしい子だそうだけど)

オオヨドハジメの袖口でテントウムシになっているパピヨンに聞いた。

「ぬいぐるみはあった?」


「ないっ!」


オオヨドハジメは父親に「じゃあ、また来るわ」と言って父親の家を後にした。


つぎは母親の家

パピヨンのアンクレットに乗って上空からウェブ地図を見ながら訪ねたので、すぐ着いた。


「あら、ハジメくん、もう夏休みね。うちへ来る? これからハワイの別荘へ行くのよ。いい時に来たわ」

母はとても嬉しそう……妹も出てきて「わーい、お兄ちゃんも一緒に行こうよ。別荘へ。私、アパートへ誘いに行ったのにいなかったんだよね」と手を引っ張る(帝都塚女子中学いってる優秀でおしとやかなお嬢様だぁ)

……犯人はきみかっ!……


パピヨンに聞いた「ぬいぐるみがあるかどうか、家の中探してみて」


「わかった」とパピヨンは母の嫁いでいる大きな豪邸にテントウムシの姿で飛んでいった。


そしてすぐに「女の子の部屋に有ったわ」と帰って来た。


「良かった、じゃあ、帰ろう」と母に「じゃあ、また来るから」と言ったら


「聞いてなかったの? 今日からハワイの別荘に行くのよ。あなたも来なさい!」とオオヨドハジメの手を放してくれない。


「友達との約束があるから!」と強引に母親の手を振り切り、すぐにパピヨンのアンクレットで空に逃げた。

母と妹は魔女の格好をした女の子と共に空中を飛んでいく息子を見て、口をあんぐり……

「なんか悪い夢見てるのね」







その頃、月並高校の校長室では、ちょっとした事件が起きていた

シノムラマリコの義理の父親が4人のヤクザを連れて学校に押しかけていた。


「娘の居場所教えて貰おうか、センセ。娘は月並高校の制服着て姿消したんじゃ!」

マリコの義父は、お客用の椅子に、後ろに4人の若いヤクザを従えて、そっくり返って座っていた。


「学校では親孝行ちゅうもんを教えんのかい? 

 わしはこの組の賭場で、一千万の借金こさえてもうたんじゃ。その借金の片に、わしの娘のマリコをこの組の店で働かせるいう契約したんじゃ。素直にわしの娘出せ!」


校長「しかし、お嬢さんは入学以来、数日しか学校に登校されたことはありませんよ……出せと言われても、どこにおられるかは、当方にはわかりませんよ」

そのとき、運悪く、何かの書類を持って校長室に来たのはオオヨドハジメの担任の教師だった。


マリコの義父が、その教師が娘の担任教師なのに気が付いた。

教師の胸倉捕まえて

「センセー、あんたうちの娘どこに隠したんじゃ? 言わんと、痛い目見るぞ」


「……ひぃ……確かクラスの子供が、シノムラマリコさんが、オオヨドハジメという生徒の下宿へ入って行くのを見たという話を今朝聞きましたよ」


「なんじゃと? それをはよ言わんかい」

マリコの義父は教師を床に投げつけると、4人のヤクザを連れて、クラス名簿に出ているオオヨドハジメのアパート住所に向かった。


オオヨドハジメは、母から逃げるのに、パピヨンをせかして、二人は、そのまま、オオヨドハジメの下宿アパートに帰って来てしまった。


二人はオオヨドハジメの部屋に入って休憩していた。


その時ヤクザを連れたシノムラマリコの義父がオオヨドハジメの部屋にいきなりドアをけ破って侵入した。


「おい、こら! うちのマリコ出さんかい!」


パピヨンが、……ふん……と言った。


マリコの義父と4人のヤクザはゴキブリになってしまった。

5匹のゴキブリは、てんでに、走り回り、開いているドアから外へ飛んで行ってしまった。


……あはははは……魔女パピヨンの笑い声



パピヨンは無事お気に入りのぬいぐるみを取り返した。「やれやれ」

オオヨドハジメとパピヨンはそのまま、またファンタジー世界のハルモニアへ帰って行った。


メハネ執事がお城の玄関で、

「ハジメ王さま、お帰りなさいませ」と満面の笑顔で深々と頭を下げてにこやかに出迎えた


ハルモニアは、今日は、どんな事件が起きるかなあ……



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