95 山あれば谷あり、良い事もあれば・・・・
…‥‥ボルテニックドラゴンも討伐し終え、後はその巣穴にあるであろうお宝探索。
とはいえ、住み着いたのはおそらく最近の事であると予想できるので、そこまで量はないかもしれない。
そう思いながら、山岳の真横に出来上がっていた巣穴に俺たちは入って見たが‥‥‥
「案の定というか、そこまで数は多くなさそうだけど‥‥‥」
「この惨状、ご主人様の妹様がいなくてよかったかもしれまセン」
確かに、ドラゴンは色々なお宝をため込むことがあるだろう。
だがしかし、これは流石に乱暴すぎるというか、粗雑すぎるというか…‥‥
「血まみれの幌馬車だらけですわね‥‥‥」
「臭いがきついでござるな‥‥‥腐臭というか、一部生ものが付いているようでござるよ」
「襲撃して、そのまま持ってきたという感じかのぅ。怨念しかしみついておらんわ」
「グゲェ」
巣穴の中にあったのは、山積みになった血まみれの壊れた馬車ばかり。
肉片などもこびりついており、この惨状は妹には見せられない。
「内部を見ると、それなりに価値の高いものが多いですが…‥‥盗るためだけに襲撃したのでしょウ」
「護衛とかいたんだろうけれども‥こりゃ、全員息絶えているかもな」
人気もないし、肉片や骨が刺さっていたりするし、悲惨過ぎる。
あちこち焦げているのは、あの雷雲での雷などもあったようで、中には燃え尽きていたのか灰になっているものもある。
ああ、あのドラゴンは絶対に退治してよかったのかもしれない。人を大勢襲ったもののようであったから。
この惨状を見る限り、何処かでもう被害報告はされているだろうし、討伐の指名手配がされていたかもしれない。
「しかし、乱雑というか、ぐっちゃぐちゃだな」
「整理整頓が得意ではないようですわね」
全員で一旦、あちこちボロボロすぎる馬車の山を崩し、一台一台丁寧にそろえて見ているが、あのドラゴンは集めるだけを趣味としているようで、整頓する癖もなかったようだ。
要するに、集めるだけ集めつつ、自分の欲望に従って、周りの迷惑を考えないような輩だったのだろう‥‥‥何と言うか、絶命させて良かっただろう。
「乾き具合から察するに、襲撃から3,4日ぐらいか?」
「被害はそれなりに‥‥‥ン?」
っと、幌馬車の状態を確認していたところで、ふとノインが何かを見つけた。
「あ、これはアウトな奴ですネ」
「というと?」
「この詰まれている荷物に禁止薬物や違法取引に値する類のが大量にあるようデス」
「…‥‥違法取引ってことは」
「密輸の類デス。護衛の数も多いのも、おそらくはバレないように大商隊などに偽装した可能性もありマス」
お宝どころか、とんでもない犯罪の証拠であった。
一応、どこの組織だとか貴族だとか、そのあたりのつながりを示すものは見つからない。
ただ一つ言えるとすれば、これはこれで潰れてよかったものなのかもしれない。
「となると、別の事も考えられますわね」
「カトレア、何かあるのか?」
「この馬車、食いちぎられたような跡‥‥‥おそらくあのドラゴンが食べたのでしょうけれども、零れ落ちているのは薬物ですわね」
「つまり、薬中毒状態だった可能性もあるのか…‥‥」
考えて見れば、いくらなんでも喧嘩っ早いと思うし、滅茶苦茶暴れていた。
正常な判断が薬によってできなくなっていたというのであれば、それはそれで納得のいく話だ。
「というよりも、これ全部繋がっているようでござるな。大きな檻があるでござる」
「これに入っていたのかのぅ‥‥‥ふむ、大体見えて来たようじゃな」
色々と証拠になるような物が確認され、大体の全容が見えてきた。
まず、あのボルテニックドラゴンは野生のものであったことは間違いないだろうが、あの檻の中に入れられていた。
どうやって捕縛したのかはともかく、暴れられないように薬でも打たれか、もしくは餌に混ぜられていたか‥‥‥薬中毒状態だったに違いない。
そしてこの密輸馬車のグループはそのドラゴン事利用するために動いていたが、何かが原因で薬が切れ、ドラゴンに禁断症状が起き、暴れに暴れて脱獄し、自分を捕まえた者たちをまとめて蹂躙した。
で、薬中毒状態だったのでそれがある馬車などをかき集め、一旦は何処かで体を休めようとここへきて、あの大きな鳥モンスターを追い出し、この巣穴に籠った。
後はゆっくりと薬物で落ち着くはずであったが、その副作用で興奮状態にもなり、ルビーの接近した気配を感じ取り、種族は違えど似たような種族でもあるから、縄張り争いの意識と薬で判断できなくなっていた頭で怒るようになって、俺達へ攻撃を仕掛けてきた…‥‥という事だろうか。
「ある意味被害者だったのかもしれないな‥‥」
「しかし、どうやら元々人食いでもあったようデス。記録を見つけまシタ」
ひょいっと書類を拾い上げ、ノインが手渡してくる。
少々赤く染まったそれには、あのボルテニックドラゴンについての情報が書かれており、どうも元から人食いだったようで、その性質を利用して良からぬ企みをする人たちが欲し、捕縛したらしい。
何にしても、最初から誰も彼も救いようがなかったという所であろうか…‥‥
「あいにく、資料が燃えてしまい、取引先などは不明デス」
「ろくでもないのは間違いないけど…‥‥どうするべきかなぁ、コレ」
「王城へ報告して、やばいものはここで焼却処分の方が良いじゃろう。押収して出したとしても、何処かでこっそりと持ちだす輩もいないと言い切れぬからのぅ。証拠として必要な物だけを持っていけばいいはずじゃ」
ろくでもない犯罪の証拠の山で、全部を持っていくにしてもつながりのあるかもしれない者たちが処分しに来るかもしれない。
だからこそ、これといえるような証拠だけを持っていき、いらないものは無くしてしまえば良いだろう。
「とりあえず、使えそうな証拠だけを探ってみるか…‥‥皆、薬物などはうっかり吸い込まないように注意しろよ」
「了解デス」
「取らないように注意しますわ」
「この手の薬物はお宝じゃないでござるしな。そもそもなぜこういうのを欲するのかよく分からないでござる」
「人の闇というものじゃろうなぁ…‥‥そう言えば、昔それをスパスパ吸いまくるアウトな奴がいたのぅ」
「グゲェ」
‥‥‥あ、持っていく際にはきちんと袋詰めしないといけないか。リリスの箱に入れてと思っていたけど、あの箱一応彼女の体でもあるし、影響を考えるとその対策とか取ったほうが良さそうだ。
ひとまずは皆で手分けをして、やばいものを捜そうとしていた‥‥‥その時であった。
「ん?こっちは食料品の類でござるな」
「全部氷漬けだったものですネ。溶けてしまい、全部腐敗し…‥‥オヤ?」
「何かあったのか、ノイン、ルビー?」
「ご主人様、まだ固まっているもので、こんなものがありまシタ」
「こんなものって、どんなもの‥‥‥‥なんだ、それ?」
馬車の中から何かを引き抜き、ノインが腕を伸ばして俺達へ良く見えるようにそれを掲げる。
そこにあったのは、蛇酒というべきか、酒瓶に詰められている類。
でも、その中身はただの蛇ではなかった。
‥‥‥うん、見えているからわかっているというか、ツッコミを放棄したくなるというか、何と言うか。
そこには蓋をした瓶に詰められた、モンスターがいた。
おそらく種族は、図鑑の記憶からすると‥‥‥グランドスネークとか、ポイズンヴァイパーかそのあたりだろう。かなりの巨大な蛇のモンスターでありつつ‥‥‥
「生命反応ありマス。酒漬けですが、冬眠状態でもあるようですネ」
「生きているのかよ!?」
その状態でおぼれ死んでいないというか、酒死にしていないというか、驚愕の事実。
何にしても、見つけてしまったものは仕方がないので、この際ついでに出してみることにしたのであった…‥‥
蛇モンスターの蛇酒とか、飲む奴いるのだろうか。
何にしても、まだ生きていそうであればここであったのも何かの縁だし、助けて見るのも悪くないだろう。
まぁ、襲われる可能性もあるのだが…‥‥その時はその時か
…‥‥というか、こんな密輸とかどこの誰がやったんだろうか。ドラゴンとか薬物とか、こんな蛇酒とか、全部が同じ取引先って訳でもないだろうけれども、趣味が悪そうな相手である。




