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82 割とこれはこれで問題もあったらしい

…‥‥森に現れた、虎のような大型の化け物。


 無力化させ、動力源とされていた人を助けたのは良いのだが‥‥‥‥



「‥‥‥これで大丈夫でしょウ。体内に汚染された形跡がありましたが、そちらもすでに除去済みであり、再び発生することは無いはずデス」


 しゅるるるっと色々と出していた器具を収納し、ノインがそう答えた。


「そっか、これで一応大丈夫か」

「ハイ」


 村へ戻り、怪物討伐の成功を伝えておいた、


 一応、先にルビーを向かわせて話しておいたので直ぐに村の警戒態勢も解かれたが、今回の騒動はこれだけで終わってない気がした。


 というのも、何故この人は怪物になっていたのか、そもそも何があったのか、どこの誰なのかという問題が山積みなのだ。


 素っ裸であったのでノインが素早く衣服を作製して着替えさせ、現在はベッドで寝かせているのだが、未だに目を覚ましていない。


「むぅ、精神系統の方に反動が来ておるようじゃな。無理もない、あのような化け物の動力とされていたら、それこそ相当な精神の負荷もあったじゃろうからなぁ」

「アロマセラピー用の香草を焚いてますが、目を覚ますのはまだかかりそうですわね」


 ノインの診察に加え、ゼネ、カトレアのそれぞれの手段も取りつつ、今は彼女が起きるのを待つだけだろう。


 種族を調べたところ、どうも獣人(猫)のようだが…‥‥本当に、何がどうなってあんな怪物になっていたのやら?



「兄ちゃんがまた女の人を連れてきたの‥‥‥」

「いや、違うからな?あの怪物の中身の奴だからな?」


 ジトっとした目で見られたけど、不可抗力だからな?


 まぁ、今回に限って安心できる点とすれば、ノインたちのような召喚獣でもないし、きちんと亜人種族でありつつ立派な人であるということぐらいだろうか‥‥‥













‥‥‥ほーっ、ほーっと森の方でフクロウの声が鳴き、村の灯りは消えていた。


 深夜、誰もが眠る時間であり、化け物騒動の話があったとはいえ、周辺を念のために見回り、一応、現状でわかる事や起きたことを書いた手紙を王城宛に出されており、万階日に備えての話などもできるようにしている。


 ゆえに皆ぐっすりと眠り、静まり返っている中…‥‥その寝ている影の一つが、むくりと体を起こした。



「むんぅ…‥‥っ」


 目を覚まし、少しの間頭が働かなかったが、直ぐに今の自分の状況について把握するために動く。



 ペタペタと自分の体に触ったところで、起きている変化に気が付いた。


「…‥‥も、戻っているのニャ?」


 戻らない、戻れない…‥‥そう思っていた体が、戻っている事実に彼女は驚愕する。


 助かったのかという想いと共に、今ここはどこなのかという疑問が溢れ、周囲の状況をつかもうと心に決める。


 幸い、夜目がきいたのでそっとベッドから降りつつ、一歩を踏み出して足の感覚を味わいつつ、ドアに手をかけた。



「…‥‥どこかの、家の中かニャ?」

「ええ、そうデス。ご主人様の家なのデス」

「ニャッ!?」


 突然聞こえた声に慌てて振り向くと、そこには人影があった。


 見る限り、何処かの侍女とも言えるような服装をしつつ、底知れないような気配に彼女は警戒する。


「な、何者‥‥‥」

「私はただのメイドデス。手当をした貴女の起きた気配に気が付いたので、ここに来たのデス」


 …‥‥寝ていた人の気配に気が付くとか、気が付かないうちに背後に回り込んでいたとか、どう考えてもメイドではない様なその動きに、彼女はツッコミを入れるべきかと一瞬悩む。


 だが、残念ながらツッコミ能力はそこまで高くもなく、入れるのを諦めるのであった。







「ご主人様、起きてくだサイ」

「ん…‥‥んん?」


 ゆさゆさと揺らされ、俺は目を覚ました。


 まだ辺りは暗いが‥‥‥どうやらノインが起こしたらしい。


「どうした‥‥ノイン?まだ眠いんだが‥‥‥」

「報告デス。獣人の方が目を覚ましまシタ」

「そうか‥…‥ん?」


 何事も無いように二度寝しかけたが、その言葉を頭の中で考え、踏みとどまった。


 あの囚われていた人が、目を覚ましたのか?


 そう思うと、情報収集のためにも寝る事を一旦やめ、起床するのであった。







「…‥‥この度は、多大な迷惑をかけて本当に済まなかったニャ。助けてくれたことに感謝するニャ」

「ああ、こちらとしても救出したかったからな。そこまで深く頭を下げなくても良い」


 妹たちを起こさない配慮のために、一旦ノインに別室を作ってもらい、そこに俺達は集まった。


 まだ眠っているカトレア、ルビー、リリスは別室であり、ココには俺とノイン、ついでに夜更かしして起きていたゼネも共に居つつ、目の前にはあの獣人の女性がいた。


「あたしの名はルナティア。フルー森林国の適正学園の生徒にして、職業『弓兵・風』ニャ」

「…‥‥ただの『弓兵』とは違うのか?」


―――――――――――――

『弓兵』

職業として顕現すると、弓関係の武器を自由に扱いやすくなる。

ただそれだけにはとどまらず、弓兵として必要な能力の命中率や視力、弓を構えて放つ筋力などがアップし、何かとオールマイティに利用しやすい職業でもある。

国の兵士の一員となったり、狩人になったりもするのだが、その命中率の高さや視力、腕力を生かしてのギャンブラーや連絡要員などの道を選ぶ者もいる。

――――――――――――――


「そう、あたしの場合は放つもの‥‥‥弓に限らず、何か手から離れさせるものに風の力を纏わせてしまうのニャ」


‥‥‥どうやら職業の中でも、俺の異界の召喚士のように珍しい類らしい。


 というか、おそらくその部分があの怪物の攻撃に行かされていた可能性もあるな‥‥‥斬撃飛んでいたし、風の力を纏わせてとかを考えると理論的にはちょっと合っているだろう。



 とにもかくにも、かくかくしかじかと彼女の詳しい話しを聞いてみると、どうやら怪物化したのはそもそも何者かに襲撃されたことがきっかけらしい。



 適正学園は他国にも存在し、彼女も実は俺と同じく今年入学したばかりであり、毎日を楽しく過ごせていたそうである。


 フルー森林国はエルフなどの亜人も多いけれども人と変わらずに過ごし、皆それぞれ精進していたらしいが、そんなある日に異変が起きた。




「始めは、生徒が行方不明になった話が出てきたところだったのニャ」


 入学式も終わり、皆の生活も落ち着いてきたころ、生徒たちが行方不明になっていく事件が起きたらしい。


 何者かの誘拐が考えられ、学園の警備態勢を整えつつ、調査も進めていたそうなのだがそれでも生徒たちの誘拐はとどまらず、一時的に学園を閉鎖し、解明できるまで家に帰されることになっていたそうだ。


 だがしかし、その閉鎖した段階で…‥‥すでに遅かったようだ。


 学園からいったん去って、各々が家に帰ろうと寮で準備をしていたところで、突如として襲撃されたらしい。


 何者かは分からない、いや、そもそも者なのかもわからない様な、不気味な怪物たちが大勢学園へ押し寄せ、学園にいた者たちをすべて襲ったらしい。


 殺すことはせずに気絶させて担ぎあげていき、ルナティアも逃げようとしたが結局捕獲され、気絶させられた。


 そして、次に目が覚めた時には…‥‥どこか、薄暗い地下牢のような場所に閉じ込められていたそうだ。



「周囲からは、他の同級生たちの声がしたのニャ。そして一人一人が出されて…‥‥」


 捕縛された状態で運ばれ、入ったのは殺風景な部屋。


 大きな机に拘束具が設置されただけで、その周囲には何者かが立っていたらしい。


 不気味な半分白、半分黒の笑顔と怒りを混ぜたような仮面をつけており、ルナティアをそこに固定した。


 暴れたけどどうしようもなく、そのまま仮面のものが何か注射器を持って来て、彼女の首筋に投与して‥‥‥



「‥‥‥その後は、気が付いたらあの怪物になっていたニャ。意識はあれども自由は聞かず、もう本当にどうしようもないレベルで暴れるしかなかったのニャ…‥‥」


 そう言い、耳をぺたんと垂れてうなだれるルナティア。


「‥‥‥なんか、辛い記憶を思い出させたようでごめんな」

「良いのニャ。どうも助けてもらえたみたいだし、それまでに迷惑をかけてしまったこちらもゴメンなのニャ」


 互いに謝り合いつつも、今の情報から大体わかる事はある。


 どの程度の規模かはまだわからないけど、かなり大きそうな組織が動いているのは間違いなさそうだ。


 そっちの学園での行方不明騒ぎもそいつらが連れ去っていっただろうし‥‥‥


「‥‥‥最後に一気に連れ去るために来たのはちょっと引っかかるな。根こそぎ攫うために、まとめてなのは分かるけど、タイミングが良すぎるような」

「内通者がいた可能性がありますネ」


 一人一人攫いつつ、最後に攫えなくなるのを分かってのタイミング良いまとめて誘拐。


 学園閉鎖などは話に挙がるかもしれないけど、そのタイミングを都合よくとらえることができるのだろうか?



「あの、ちょっと気になる事もあるのじゃが」


 っと、ココでゼネが発言してきた。


「のぅ、お主も含めて生徒たちも全員攫われたんじゃろ?」

「そうだニャ」

「となると、その者たちもまとめて怪物化している可能性もあるのじゃが…‥‥」

「「「…‥‥」」」

 

 その指摘に、俺たちは嫌な予感を覚える。


 言われてみれば、彼女だけ攫われたわけじゃないし、同じように怪物化させられた者たちがいてもおかしくないのだ。


 あの怪物をより多く増やしていても不思議ではない。


「‥‥‥もしかして、結構不味い案件に首を突っ込んじゃったか?」

「もしかしてどころか、相当やばい代物ですネ」


…‥‥暴れ具合も凄かったが、この周辺にはどうも彼女以外の者はいない。


 化け物化した後にどこかへ放置されたのか、それともまだその場所にいるのか、あるいは新たな化け物を生み出すために利用されているか‥‥‥考えるだけでも非常にやばい案件である。


 俺達だけで手に負えるものでもないし…‥‥これはもう、国に報告しなければいけないだろう。


「ノイン、ゼネ。まだ起きていない面子も含めて、明日には村を出るぞ。王城の方へ‥‥‥すぐに連絡が付くかもわからないけど、王子たちの方へ知らせて、そこから国の方へ報告しに向かうぞ」

「了解デス」

「わかったのじゃ」


「で、ルナティアのほうもできれば説明のために来て欲しいけれども…‥‥体調がすぐれないなら、まだこの家にいて良いがどうする?」

「あたしも一緒に行くのニャ。同級生たち皆を救いたいからニャ!」




 ゆったり平穏に過ごせると思った、夏季休暇。


 だがしかし、どうも俺たちは非常に厄介なことに巻き込まれてしまったのであった…‥‥



「‥‥‥ところで、一つ良いニャ?」

「なんだ?」

「話の中で言い忘れていたけど、あたし、その拘束された時に衣服も脱がされていたのニャ。でも、なんで今、着ているのニャ?」

「助けた際に何も来て着てなかったし、ノインに着替えさせ‥‥‥」

「という事は、あたしの裸を見たのニャ?」

「‥‥‥‥すまん」


…‥‥いや本当に、アレは偶然である。助けた際にまさか何も身に着けていないとは思わなかったんだもん。


 あ、となると他に怪物が出てきた時に、そちらも衣服がない可能性があるのか?‥‥‥服を多く用意してもらう必要性がありそうだ…‥‥



攫われた生徒数=怪物数の可能性もある。

深刻性もあり、国へっさと報告しに行きたい。

ああ、何で休みにこんなことが起きるのやら…‥‥



‥‥‥あと、裸を見てしまったのは本当に不可抗力だからね?

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