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67 そこは普通、ビームじゃないかな?

「ゲザァァァァァァァ!!」


 後頭部にあたる口から大きな咆哮をあげるモンスター、ゲイザー。



 眼から多くのビームではなく水流を発生させ、周囲を己の触手と共に薙ぎ払い、触れた生物へ巻き付き、口の中へ運ぼうとする。


 だが、そうやすやすと事が運ぶわけじゃない。


「ぬぐおっせぃ!!この程度でふっ飛ばせるかぁぁぁ!!」

「もっとだ!!もっと強い一撃よ来い!!」

「生ぬるいぞぉぉぉぉぉ!!」


‥‥‥幸か不幸か、この臨海合宿の場では多くの学科の生徒たちが集まっており、既に戦闘可能な生徒たちは応戦を始めていた。


 タンクマン学科の者たちはファランクスと呼ばれる陣形を取り、従来であれば槍も構えるのだが、彼らの場合は己の肉体そのものを盾にして、守りを固めていく。


 自ら激突しているようにしか見えないが、軽くバックステップを踏んで衝撃を吸収したり、しっかりと踏ん張って触手・水流が奥へ行かないようにと、うまい守りを見せていく。ただの変態集団ではなかったか。



ザシュザシュザシュ!!

「斬れ斬れ斬れ!!奴の攻撃手段は単調だ!」

「この触手を斬りまくれ!!再生しようが、攻撃手段を減らせるぞ!!」


 タンクマン学科の間を抜け、騎士学科・魔法使い学科、その他、物などを扱う学科などが共同で伸びてくる触手に対して刃物や魔法の刃を飛ばし、ゲイザーの攻撃を減らしていく。


 だが、相手は流石にかなり大きなモンスターであり、再生能力も持つようで、末端部位ともいえる触手を切り落としまくっている程度では、本体には何のダメージがない。





 だからこそ、ここで遠距離攻撃…‥‥それも、強烈な奴をぶち込む必要があるのだ。


 宙を飛ぶノインに抱え込まれ、その柔らかさにドキドキしながらも、彼女達に指示を俺は飛ばす。


「ルビー!!最大一点集中火炎放射!」

「了解でござるよ!!」


 キィィィンっと音がした後に、ルビーの口から放たれるのは、彼女が得意とする炎のブレス。


 それも、一点集中特化した、強烈な熱線と化した攻撃であり…‥‥


「ゲザァァァアァァ!!」

ジュドォォォォン!!



‥‥‥ちょっとはダメージをと思ったが、生憎あの単眼に見える複眼野郎には、死角はないと言いたいのか、ひとつに見えながらも多くある単眼の一つから解き放たれる水流で相殺される。


 熱線VS水流…‥‥火力では上回っているはずだが、量では相手の方が上のようで、相殺されてしまう。


 いや、普通は火炎放射の方が負けやすいが…‥‥互角にしている時点で、ルビーの能力の高さがうかがい知れるだろう。



「まぁ、予想できていたけど…‥‥カトレアは?」

「大丈夫ですわ。すでに準備完了!」


 木の根を砂浜に張り、海水が苦手らしいがそれでもものともしない植物支配で、水中の水草を利用した攻撃を開始する。


 ブクブクと、ゲイザーの足元(?)の海面が泡立ち始める。


「光合成、急速展開…‥‥エネルギー、来ますわ」


 海底を辿って根を張り、海藻と接続し、光合成を半強制的に引き起こす。


 ゲイザーの目玉ボディのせいで影があり、光合成に支障は出ているが、本体のカトレアの方も大きな木を周囲に生やし、そちらからも行い、光合成でエネルギーを集め始める。


「太陽の恵みを利用した、植物ならではの遠距離攻撃ですわ!!必殺『ソーラービーム』!!」



 いうが早いが、彼女の木の根がノインの大砲のように変形し、そこから緑がかった白色な光線が発射される。


 光合成で得たエネルギーを一気に攻撃へ転換し、さらに‥‥‥



「発生した気体のおかげで、こちらの爆発力もアップでござる!!」


 光合成によって得られる副産物…‥‥火の勢いを増す酸素濃度が、ゲイザー周辺で高まっており、ルビーが続けて熱線を発射し、その威力を増した。



「ゲザゲザァァァァァア!!」


 っと、ここで驚くべきことに、それぞれから迫りくる光線・熱線に対してか、一本しか打てないと思っていた水流を、ゲイザーは目玉からそれぞれに対応した水流を同時に発射した。


 しかも、一本ずつの対応ではなく、数十本分である。


「何っ!?」


 一本でも互角であり、火力を増した熱線と、強大な光線に対して複数の水流を当てるゲイザー。


 それぞれ火力は高いはずなのに、相殺…‥‥いや、打ち負けてしまった。



ずどおおぉぉぉぉん!!

「うっそぉでござるよ!?」

「きゃぁぁあ!?」


「っと、危ないデス」


 ドンッという音と共に、俺を持っていた手はそのままで、もう片方の腕をノインは発射した。


 ついでにもう一発、今度は髪のアホ毛部分が飛ばされる。



がしぃ!!


 飛んでいった片腕は、カトレアをその勢いのまま根っこ事引っこ抜き、水流から離れさせる。


ズッバァァアン!!


 そして飛んでいったアホ毛は、巨大化して水流そのものをぶった切り、強制的な軌道変更を行って、ルビーの飛行軌道からそらした。


「‥‥‥アホ毛すげぇ」

「アホ毛ではありまセン。最近ちょっとバージョンアップした、高感度レーダーデス」

「いや、戦闘力がおかしいだろ」


 普通の髪の毛、そんな風に飛ばせないというか、レーダーとか言うやつにもならない。



 何にしても、どうも相手も多種多様な攻撃…‥‥いや、触手と水流という単純な物でありつつ、組み合わせることによって変化を多く見せているようだ。


「眼総数、およそ1000個。一つ一つから水流が発射できるようデス」

「一つ目にしか見えないのに、多くの複眼って‥‥‥‥」


 一つの目から、ひとつの水流というだけではなく、威力、距離、本数なども調整して色々とパターンを変えられるようだ。


「外部からの攻撃手段は、少々難航しマス。真後ろの口部分であれば死角にはなるでしょうが、そこからも攻撃可能でしょウ」


 モンスターの中には、当然口から光線とかブレスとかを発射する類もおり、あのゲイザーもその類。


 眼からだけではなく、後頭部の口からも、何かを射出できる可能性がある。


「実質、360度全てにおいて死角なしか‥‥‥‥ん?」



 どうしたものかと悩んでいると‥‥‥ふと、ゲイザーの動きが変わった。


「ゲザァァァァァァァ!!」

「っ!?ノイン、緊急回避!!」

「了解デス!!」


 その指示と共に、更にぎゅっと俺を強くノインは抱きしめ、足の方から出ていたジェット部分の噴射を強め、素早く上空へ身を動かす。


 するとすぐ後に、先ほどまでいた場所にゲイザーの触手が突撃してきた。



「ゲザァァッァアッァァァァァ!!」

「なんか狙ってきた!?」

「不味いですね、ご主人様を叩きに来たのでしょウ」

「何でだよ!?」

「私たちのご主人様であると、見抜いたからでしょウ」


 浜辺にいたタンクマンや騎士たちの方へ向けていた触手を引っ込め、ゲイザーはこちらに触手を勢いよく伸ばし始める。


 どうも先ほどの攻撃で、一旦退けるのに成功したとはいえ、ルビーやカトレアの攻撃がシャレにならないものであると見た上で、彼女達に指示を出していた俺を討ち取ったほうが早いと判断したようだ。


 でっかい目玉の化け物なのに、結構頭いい…‥‥のだろうか?


 


ズドドドドドドド!!

ドシュウウウウン!!ドシュウウウウン!!


 大量の触手をこちらへ向け、更に撃ち落としたほうが早いと思ったのか、多くの複眼から一斉に放水を開始し始める。


 その攻撃を見て、ノインが全力で回避に取り組むが、いかんせん分が悪い。


「ルビー!!ご主人様を持ってくだサイ!!貴女の方が私より機動力がありマス!!」

「わかったでござる!!」


 ノインの声に対してルビーが答え、その翼を羽ばたかせてこちらに迫る。


 だが、その事も理解しているのか、ゲイザーの攻撃は彼女にも及ぶ。



「ぬぅ!!この程度ならば避けられるでござるが、中々隙が‥‥‥」

「ぐぅっ!!結構きついというか、空中を旋回しまくる遠心力とか、柔らかいものとか…‥‥」


 色々ときついというか、何と言うか。馬車酔いどころか空中酔いしそうでもあるし、水着ゆえにじかにあたりやすいそれもあって、精神的にも結構来るものがある。


「ああもウ!!しつこいデス!!」


 回避に専念していても、やはりままならないところがあるせいか、珍しくノインがいら立ったような声を上げる。


 アホ毛を戻って来た片腕で再び持ち、ゲイザーに狙いを定める。


「一気に触手を落として、隙を作りマス!!『スピンヘアカッター』!!」


 投げられたアホ毛は鋭い切れ味を発揮し、届かんとしていた触手を次々と切り捨てていく。


 しかも、ただ投げたようにしか見えないのに、何故かその軌道は複雑化しており、次々に迫りくる触手をズバズバと千切りに変えていく。


「意外とスゴいなアレ!?」

「とはいえ長く持ちまセン!!急いでご主人様をルビーの方へ渡、」






…‥‥その瞬間であった。


 切り捨てられた触手の合間をかいくぐり、放たれたゲイザーの水流が到達した。


 ビッシャァァアァン!!


「「ごばあああああああっ!?」」


 そろって水に巻き込まれ、俺を持っていた彼女の手が外れ、一瞬空中で離ればなれになる。


 すぐにノインが取り戻そうと手を伸ばしてきたが…‥‥ゲイザーの方が、早かった。



しゅるるるるるるるるるる!!ぐびしぃ!!

「ぐえっ!?」

「ご主人様!?」


 触手が俺の胴体へ巻き付き、一気に手繰り寄せられる。


 ルビーやノインが素早く動き、なんとか奪取しようとするが‥‥‥



「ゲザアアアアアアアアアアア!!」


 ぐるんと、目玉の位置と口の位置を動かしたゲイザーの咆哮が鳴り響き、辺り一帯を振動させる。


 その咆哮はただの大声ではなく、衝撃波を伴い、空中にいた彼女達をふっ飛ばした。


「ござるぅぅぅ!?」

「きゃああああああア!?」


「ノイン!ルビー!!」


「マスター!!今わたくしが!!」

「儂の方も、すぐに動くのじゃ!!」


 ふっ飛ばされたノインとルビーに変わり、砂浜からすごい勢いで蔓を伸ばすカトレアと、魔法で似たような物を創り出し、こちらを助けようとするゼネ。


 だが、彼女達の助けが届くよりも早く…‥‥


「あ」


――――――がっぷん!!




…‥‥次の瞬間、一気に放り込まれるがごとく、ゲイザーの口の中に、俺は投げ捨てられるのであった‥‥‥‥

 

‥‥‥捕まって、食べられて。

海に来たのに、なんでこうなったんだろうか。

ああ、彼女達の悲しむ顔が…‥‥泣かせたくないんだけどなぁ…‥‥‥



…‥‥あと、なんか後が怖い。ゲイザー、もしかして、ヤバイスイッチ、彼女達に入れてないよね?

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