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65 ようやくというか、多くの苦難があったけれども


―――海、それは広がる大海原であり、青空が眩しい常夏の世界。


 川や池、風呂場の水の量に対して、はるかに凌駕する圧倒的な存在。


 

 白い砂浜に流れ着いた流木や貝殻、ちょこっと歩き回るカニにヤドカリを添え、ヴィステルダム王国の適正学園の生徒たちは、ようやく臨海合宿を行うための場所へ到着していた。


 ある程度の勉学もさせられ、学科ごとのものもあるのだが、それでも大半は遊ぶことが許された時間。



 青い空、白い砂浜、先が見えない水平線とくれば、後は皆はその空間で遊ぶのみである。


 そしてついでに、今回の合宿に限っては、期待を向ける者たちが大勢いた。


 それもそうだろう。今年度には、美女たちが大勢いるのだから。


 例え、誰かの召喚獣であり、彼自身にしかついて行かないと分かっていたとしても、眼福なる光景は誰もが見たいもの。


 どのような水着を着るのか、今か今かと期待を膨らませる者が多い中…‥‥ディーもまた、心の中で、期待を少々抱いていた。



「‥‥‥まぁ、うん俺だって男の子だし、期待をしてしまうんだよね」

「流石に召喚獣とは言え、お前のところは綺麗ぞろいだからな」


 簡単な海パンに着替え、海へ入るための入念な準備運動をし終えたところで、同じく着替え終わった野郎の一人、バルンが話しかけてくる。


 奴は騎士学科ではあるが、合宿初日だけは確実に遊べるそうで、海を楽しみにしていたのである。


‥‥‥聞いた話だと、騎士学科は翌日の合宿行軍が一番ひどいというからね。


「それもそうだけどね、やっぱり気になるというか‥‥‥彼女達の場合、まず、水着を選べたのかなってところが気になるんだよな」


 買いに行ったことは分かっているのだが、何を選んだのかはまだ秘密にされている。


 水着にも色々種類があるだろうし、どの様なものを選んだのかは分からないが‥‥‥一部、制限がかかってしまう点を考えると、ちょっと限られそうなのだ。


 ノインの場合はメイドゴーレムだけに、メイド服の方にこだわりがあるし、カトレアの場合植物でもあるから海水への対策とか耐性が気になる。


 ルビーだとあの大きな尻尾や翼が邪魔になる可能性もあるし、ゼネの場合はアンデッドでもあるので、海水だと水死体になりかねないのか、という不安もあるのだ。


 何にしても、今はまず、女性陣のほうで着替えをしている模様。


 女子専用更衣室の方で着替えているようで、男性陣の方では覗こうとする者がいたりするのだが‥‥‥



「成敗!!」

ぼぉぉぉぉぉうう!!

「ぎゃああああああああ!!」


「‥‥あ、今の炎はルビーかな?」

「思いっきり直撃というか、丸焦げだな」


 女子更衣室の周辺には、丸焦げになる野郎共がそれなりに‥‥‥一部は違うやつに攻撃されているようで、爆裂ボンバーアフロと化していたり、全身に蔓が巻き付きまくっていたり、黒い靄に侵されてあぶくを噴いて痙攣していたり‥‥‥まぁ、自業自得であろう。


 個人的にも、いやな気分にはなるが、このやられようを見るとむしろ同情ものである。一部が恍惚の表情で逝ってるのは止めて欲しいが‥‥‥まさか、それ目当てか?あと、まだ懲りずに自ら動く光景を見るのは、ちょっとしたカオスなんだが。


 


「なんというか、すごい死屍累々だねぇ」

「あ、グラディ(副生徒会長)ゼノバース(生徒会長)と‥‥エルディム(第3王子)‥‥ん?」



‥‥‥この合宿、道中で救助された第3王子(エルディム)と、第1王女ミウも参加するらしく、彼等もそれぞれの学科ごとにつきながらも、こうしてちょっと集まったが‥‥‥


「‥‥‥彼、どうしたんだ、アレ」

「ああ、あれか?ここは一応、適性学園の生徒たちが合宿する場として、貸し切っている浜辺だが…‥」

「それなりに、近隣住民たちも利用していてね、そのうちの子供たちの水着に見とれて‥」


 何だろう、もう何が起きたのか理解したような気がする。


 これ以上聞かなくても良い。うん、多分保護者とかがいて、フルボッコにされたんだろうな‥‥‥。



 あれでも第3王子らしいが、学園にいる間は生徒扱いとして平等にということで、特に敬われるようなことはない。


 えっさほいさっと海でも出番がそれなりにあった医師学科の人達に搬送されていく様子を、俺たちは見るしかないのであった。良い笑顔で倒れているし、アレはアレで犠牲者たちと同類なのかもしれない。


「ま、こういう開放的な場だからこそ、解放的な気分になるのも悪くはないが」

「弟ながら、アレはひどいんだよね‥‥‥あれさえなければ、まだいい方なんだよね」

「あー‥王族も、苦労が多いんだなぁ」


 苦笑いしつつ、その苦労を理解してしまう。


 ついでにミウ(第1王女)の方もどうやらノインたちと着替えているようで、姿を見せなかったが‥‥‥どうやら今、女性陣の方で着替えが終わったらしい。



「兄様‥‥‥わたしは今日、ちょっと現実を見ましたわ」

「‥‥‥何があった、妹よ」


 フリルが付いた、少々可愛らしいワンピースの水着を着て、最初に現れたのはミウ。


 だが、その様子は何処か沈んでおり、何かを気にしている様子。


「‥‥‥えっと、ディーさんでしたっけ、彼女達の召喚士って」

「ああ、そうだが」

「同性の身としては、あれ見たら自信なくしますわよ!!何てものを召喚しているんですかぁぁぁぁ!!」


‥‥‥理不尽な、叫びをあげ、砂浜へダッシュしてその場を去る王女。








 そのすぐ後に、ノインたちが着替え終え、水着姿を見せてくれたのが‥‥‥うん、理由、明確に分かってしまった。


「んー…メイドとしての矜持上、やはり半分だけメイド服ですと、少し落ち着きまセン」


 メイドゴーレム故か、メイド服の部分を脱ぐのには少々抵抗がありつつ、海では向かないことを理解して用意したらしい水着。


 動くと普段はメイド服で覆われているものが、黒いビキニタイプの水着で曝け出され、ぐぐっと体を伸ばすとその勢いで揺れ動く。


 長いメイド服のスカートが、今だけは膝上まで短くされており、ちょっとパレオに近いタイプの水着を着ており、ゴーレムには見えない、人間らしく見える肌を魅せるノイン。ゴーレムなのかと疑いたいが、関節部にちょっと線みたいなものが入っている。



「わたくしの場合は、海水が少々苦手ですし、こうやって覆うのも必要でしたわね」


 こちらもノインのサイズに負けない物を持ちつつ、足と木の根の部分は防水ようの布で覆い、褐色の肌に映える白いビキニに身を包むカトレア。下着に見えなくもないエロスというか、妖艶の魅力を惹きたて過ぎているような気がする。



「拙者は翼と尻尾があるでござるからなぁ‥‥‥できればもうちょっと、選びたかったでござる」


 競泳用の水着というような物を着つつ、普段はさらしとかで締め上げているけど、それなりのものを持ち、背中と臀部と腰の中間部分は肌を曝け出して尻尾と翼を出して、そう言葉にする、赤い水着を着たルビー。ばさばさっと翼を羽ばたかせ、砂が舞い上がる。



「儂の場合は、厳選されたからのぅ…‥‥まぁ、こういうのも悪くないのじゃ」


 男装の令嬢であったはずが、こちらは青白いパレオのような水着を着用し、少々他の者たちよりも控えめながらも、華奢なその体によく似合うゼネ。手持ちの杖も海仕様に切り替えたのか、水着の色と同じ青白い杖となり、先の方にあるのもヒトデに似せた黄色い何かになっている。



‥‥‥色とりどりというか、方向性の違う美女たちの光景がそこに広がっていたのであった。


 ああ、うん。あれなら確かにミウが自信を無くして逃げるのも無理ないかも。綺麗すぎるというか、同性なら自信を無くすのも無理はない。一部キャーッと騒いでいるが…‥‥心が強いのだろう。


 いつもの彼女達でさえかなりの美女なのに、水着に着替えて色気も余計に追加され、ちょっと直視しづらいというか‥‥‥あ、他の生徒たちの内、赤い花を咲かせて倒れていく人が。


 歩く災害と化してないかな、アレ?いや、災害というには綺麗すぎるというか…‥‥


 砂浜に赤い花を多く咲きほこらせながらも、いよいよ俺たちは海を楽しみ始めるのであった。










…‥‥ディーたちが海を楽しもうと、意気揚々としているその中で、ソレは動いていた。


 沖の方にいたが、多くの獲物がいると感じたソレは、陸地へ向けて泳ぎ出す。


 その速度は素早く、徐々にディーたちのいる砂浜へ‥‥‥‥

というか、あれって召喚獣だよね?それらしく見えないというか、その部分を消せば水着美女集団にしか見えない。

レベルが高いというか、何と言うか、普段隠しているものを曝け出すというのは、かなりの暴力になるのだろうか…‥‥


‥‥‥あと、どこが、とは言わないけど、こういう場面でサイズ見るけど…‥カトレア、ノイン、ルビー、ゼネの順なのか。さらしとかのぶんを考え、ちょっとは変わるかなぁっと思っていたけど、案外そのままなのか。意外というか、何と言うか‥‥‥

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