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64 はた目から見ればコメディ、当事者たちからはホラー

「待ってくださいませお姉さまぁぁぁぁはすはすはうふなはうすはう!!」

「色々とおかしいことになっておるのじゃが!?」


‥‥‥月も消え失せ、朝日が昇る早朝。


 神聖国よりやや離れた平原にて、彼女達は全速力で疾走していた。


 いや、正確には片方は走っておらず、仲間の手を借りて空を進んでいるのだが…‥


「‥‥‥ゼネ殿の妹、気のせいか空を駆け抜けていないでござるか?」

「気のせいじゃないのじゃ!!」


 ディーに命じられ、ゼネの逃走を手伝うために、彼女の手を持って空を羽ばたくルビーの言葉に、ゼネはそう答える。


 機動力もあり、かなりの飛行速度をルビーは自負しているのだが…‥‥後方から迫りくる、空を駆け抜ける少女に恐怖を抱いていた。


「ふんすぅ!!お姉さまのためなら例え火の中水の中森の中、土の中雲の中どこへでも突き進むことができるのですわぁぁぁ!!」

「妹ながら、なんか人間やめている発言しているような気がするんじゃけど!!というかお主、先ず相当な歳になるはずじゃよね!?」


 空を駆け抜けるゼネの妹に対してそう問いかける。


 そう、既に川の上を走っていたり、空中を駆け抜けている時点で色々とおかしい所はあれども、まず、その部分がおかしいのである。


 


 ゼネの没年はかなり昔の話であり、その妹だとしてもかなりの高齢になっているはず。


 ただの人間が、見た目をほとんど変えないで長い年月を過ごせるだろうか?いや、不可能なはずだ。


 それなのになぜか、当時の最後の姿からちょっとは成長していると思いつつも、ほとんど老化していないその体に、ゼネはツッコミを入れた。


「うふふふふふ!!これもお姉さまへ愛を誓ったが故のなせる業なのですわ!!いえ、もっと正確に言うのであれば、同志たちが創り上げた物のおかげでもあるのですわぁぁぁぁ!!」

「なんじゃと!?」

「そう、お姉さまはあの屑共の手によって命を奪われ、その後に全てを粛正した後に、お姉さまの聖なる遺体が無くなっていたことから、何処かへ運ばれた可能性、もしくはどこかでアンデッド化して生きている可能性をあの時、あの処刑現場で考え出したの!!だからこそ、アンデッド化しているのであれば、長い年月さえかければ再び巡り合う機会もあると思い、色々やって来たのですわぁぁ!!」

「その色々が気になるんじゃが!!というか近っ!?ルビー、もうすぐ追いつかれてしまうのじゃ!!」

「わかっているでござるけど、あっちがあっちで早すぎるでござる!人間やめていると言っても過言でないでござるよ!!」


 気が付けば、あと一歩というところまで妹が迫ってきたことに、ゼネは顔を青ざめさせる。


 いや、昔の大事な血縁者でもあり、死後にこうして再会できたのを嬉しく思わないわけでもないが…‥‥その実態を知っている身としては、それよりも恐怖しかないのである。


「ふへふんすふえっへへへ!!お姉様の元まであとちょっと!!捕らえて地上に降りて、久しぶりの姉妹仲良く過ごしましょうぉぉぉ!!」

「仲良く過ごせた覚えがまずないんじゃけど!?お主、絶対にまず儂の衣服を脱がせにかかって、拘束しようとしておったよな!?」

「ええ!!そうでもしないと逃げますからね!!その度に素早く脱走されましたけれども、今のお姉様がアンデッドの何かの種族であろうとも、当時よりも腕力はそうないと思えるのですわ!!ええ、ええ、ええ!!死後の初体験の世界に共に逝きましょう!!」

「いくという意味が、なんか違うような気がするのじゃぁぁぁあ!!」

「拙者、置いて逃げて良いでござるか?」


 姉妹仲が良すぎ(一方的)なことに、ルビーはこの手を放して置いてきぼりに(生贄)にした方が良いのではないかと、内心思い始める。


 だがしかし、そうなる前に…‥‥彼女達を光が包み込んだ。


「お姉様!?なんなのその光は!!」

「お、主殿の召喚のようでござる!」

「良し逃亡成功じゃぁぁぁぁ!!」



 ゼネの妹が驚愕している間に、瞬時に彼女達はその場から消え失せる。


 空から降りて、妹はその姉が消えた光景にしばし呆然としつつ‥‥‥すぐに気持ちを切り替える。



「‥‥‥ええ、ええ、ええ。そういう事ですね、姉様はアンデッドモンスター…‥‥誰かの手がついている状態なのね、そうなのね」


 何が起きたのか、すぐに理解を示し、頭の中で素早く推論を構築していく。


「あの感じ、おそらく召喚士による召喚の‥‥‥となれば、姉様と契約した人が呼び寄せましたね」


 愛のなせる業なのか、直ぐにその回答へ、彼女はたどり着いてしまった。


「ならば、その人の元へ向かえば、確実に姉さまはいるわね。姉様は元人間で、召喚士が最初に呼びだす召喚獣という訳でもなさそうでしたし、何処かで契約を結んだのは間違いないはず。であれば‥‥‥その契約を譲ってもらえれば‥‥‥いえ、駄目ね。私の職業『神官』だし、召喚士でないから無理なはず」


 ならばどうすべきかと考えに考え…‥‥彼女は一つの結論を導き出した。


「ならば!!その召喚士を狙って契約を消してもらうか、もしくは存在を消せば、お姉様は無事フリーのモンスターになるはず!!とすれば、討伐せずに捕縛すれば、確実にわたしのものにできるはず!!」


 ぐっとこぶしを握り締め、導き出した結論に彼女は意気込みをふんすふんすと洩らしまくる。


「これも確実に、神が私たち姉妹へ与えた試練!!如何にして姉様を自由にして、わたしの方へ戻すのか、いえ、戻すのではなく、手に入れるべきか‥‥‥愛が試される時ですわあぁぁぁぁぁ!!


 そう叫び、彼女は素早く動き出す。


 そうと決まれば、できるだけ早く行動に移し、まだ残っている(・・・・・・・)同志たちを呼び寄せ、目的‥‥‥ゼネを確実に手にいれるために、協力し合うべきだと、理解しているからだ。


「準備に時間はかかるかもしれませんが、長い目で待ってくださぁぁぁい!!」


‥‥‥愛は暴走超特急、爆裂猪突猛進、進撃の凶愛。


 彼女はそう叫びながらも、自身の行動指針を確実に定め、駆け抜け始めるのであった‥‥‥‥













「‥‥‥御前様、御前様!!本気で怖かったのじゃぁぁぁ!!」

「拙者も巻き添えにされたけど、あれは怖かったでござるよぉぉぉぉ!!」

「よしよし、今は取りあえず、大丈夫になったはずだから安心しろよ、二人とも」


 明け方、時間的に丁度いいかと思い、逃亡していたルビーとゼネの二人を召喚すると、召喚されるや否や、彼女達は俺に抱き着いてきた。


 よっぽど恐怖に襲われていたのか、普段は冷静なゼネや、明るいルビーの二人は、怯えたようにぎゅうっと抱き着き、泣きついてくる。


 ちょっと珍しい光景だなぁっと思いつつも…‥‥少々、ヤバイ。


「ところで二人とも‥‥‥抱き着くのは良いけど…‥俺の骨、限界…‥」

ごきっつ!!

「あ!?」

「しまったのじゃ!?」


…‥‥お前ら二人、一応人外だからね?見た目美女なのに、力が強すぎるんだよ‥‥‥特にルビー‥‥‥


 ごえっふっと血反吐を吐きながら、俺はそうツッコミを心から入れ、その場に倒れるのであった。


「‥‥‥二人とも、ご主人様に危害を与えてどうするんですかネェ?」

「ひっ!?の、ノイン‥‥‥」

「いや、その、これは不幸な事故でのぅ‥‥‥」

「わたくしも見てましたわ。…‥‥マスターに抱き着くのはいいけれども、骨を折るのは‥‥‥ねぇ」

「ええ、珍しく、気が合いましたネ」

「「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」」


 意識を失う前に、何やら新たな恐怖に襲われる二人の声が聞こえたような気がした。


 まぁ、俺には何もできないが…‥‥少々ズレた感想を述べるならば、ノインとカトレアが、仲良くしたのは良い事なの‥‥‥だろうか?





 数分後、素早い治療によって意識が戻り、骨もすぐにくっついた。


 ひびが入った程度であり、特別な薬草をしみこませたシップを張れば、10分程度で完治するらしい。


 その事に関心を覚えながらも…‥‥


「「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…‥」」


「‥‥‥ノイン、カトレア。あの二人に何をやった?いつものござるとかじゃとか、特徴的な言葉すら忘れたように、体育すわりで震えているんだけど」

「少々、ご主人様に変わってお仕置きを致しただけデス」

「ま、こういうしばきも楽しいものですわ」

「…‥‥本当に何をやったんだ、お前ら」


 本日は、この後馬車に乗って海を目指し、昼頃には到着する予定。


 その時までに、復活していると良いのだが‥‥‥‥何だろうなぁ、この前途多難満載感。

一時退場したかに思えるけど、これ再登場確定である。

何にしても、その時まで平和に過ごしたいが…‥‥どうなんだろうか?

ま、今はそのことを忘れ、海へ思いをはせないとね。



…‥‥ようやくというか、水着回へ。朝っぱらからホラーとは言え、きちんと楽しまないとね。

まぁ、水着案練っていたけど‥‥‥一名、衣服に関してこだわっているので、そこの折衷案を考え中。

fg何とやらに、ちょうどよさげなものがあったので、その衣服を応用できればいいか‥‥‥どう書くのかが、割と大変だったりする。

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