62 それは悪寒でしかわからない
「…‥‥あの土煙って、エルディムか?」
「おおぅ、仕掛けたからどのぐらいなのかはわかっているのじゃが‥‥‥まともにどっぷりかかったのぅ」
「弟ながら、ちょっと引くなぁ」
「凄いかかり具合に、情報を提供してイメージをつかませたとは言え、アレはひどいな‥‥‥」
「それさえなければ、まとも‥かしら?」
ディーたちは各々でつぶやくが、その光景を見て抱いた思いは一つ。
人というのは危機的状況に陥った時に、火事場の馬鹿力というのがあり、今回のアレもその類なのだろうが…‥‥
「うぉおおおおおおおおおおおおお!!」
「ゼネ、ひとまず目視距離に入ったから幻術解除。カトレア、木の根で拘束」
「了解じゃ」
「了解ですわ」
‥‥‥流石に、それは引くなぁ。グラディたちが辛らつにする理由が、物凄く理解できてしまった。
とにもかくにも、それから馬車を進め、ようやく俺たちは神聖国内へ入った。
この国を通過して海へと向かうのだが、いったんこの国で一泊宿泊するらしい。
各学科の生徒たちが勝手に迷ったりすることもあるし、人数確認、体調管理などの面から考えて、海は翌日の昼前には到着予定とするようなのだ。
学科違いのために、後王族保護の関係で、生徒会長たちとは別れ、俺たちは召喚士学科用の宿に入った。
召喚士の場合、召喚獣たちがそれなりにいるので、召喚獣たちも伴に寝泊まりできる部屋があてがわれるのだが…‥‥ここで一つ、問題が起きてしまった。
「え?全員入れられない?」
「申し訳ございません、お客様。流石にそこまで人に近い方々を同室に押し込めるのは、少々見た目的に問題があると‥‥‥」
‥‥‥どうやら、ノインたちがほとんど人に近い容姿をしていることが、原因のようだ。
通常の召喚獣であれば、獣とかそう言う見た目の方が多いので、共に寝泊まりするのは問題ないように見えるのだが、ノインたちだと各々が方向性の違う美女ゆえに…‥何と言うか、その手のいかがわしい感じに見えてしまい、宿屋のイメージ的にやめて欲しいのだとか。
「…‥‥というよりも、ココの主人が血の涙で絶対同室にはさせないぞと。あの方、モテない歴=年齢なので、お客様の環境が羨ましいそうなのです」
「ただの私怨かよ!!」
何にしても、できれば別室になってほしいようで、その為の部屋も速攻で用意されたらしい。
「同室も良かったけど‥‥‥ま、たまには別室で寝るのも良いか。というか、寮とあまり変わらないからね」
「それもそうですネ」
寮の部屋を拡張されている現在、各々別で寝ているからなぁ‥‥‥たまに膝枕されているが。
しかも、よく見ると死屍累々になっている時もあるが‥‥‥何をしているんだろうか、彼女達は。
「それでも、一日程度なら文句もないですわね」
「そうでござるな」
「儂としても、この判断‥‥‥ん?」
皆納得している中で、ふと、ゼネが身を震わせた。
「どうした、ゼネ?」
「いや、なんか今すっごい悪寒があったような気がしたのじゃが‥‥‥気のせいかのぅ?」
なんとなく気になりはするが、特に今は気にしなくても良さそうではある。
とにもかくにも、今は各々に割り当てられた部屋へ、彼女達は移動するのであった。
「‥‥‥にしてものぅ、やっぱり気になるのじゃ」
「悪寒がか?」
「なんというか、こう、昔味わったかのような…‥‥」
悪寒と言っても色々あると思うけど、彼女は何を感じたのだろうか?
元聖女というから、この国関係の事かもしれないが‥‥‥流石に結構年月も経ているはずなんだよなぁ。
ちょっと考えられることもあるが‥‥‥
‥‥‥気にしない方針で行きたい。できれば、本当に穏やかに過ごしたい。




